2020年12月26日

NHK文化センター『はやぶさ2 最強ミッションの真実』出版記念特別講座

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 無事に地球帰還を果たした「はやぶさ2」の津田雄一プロジェクトマネージャーの講座。
 私がこうした企画に参加するのはたいてい科学館のイベントですが、今回はNHK文化センターの企画ということで、会場もビルの一角のNHK文化センター京都教室。この企画を知ったのもSNSの広告で、はやぶさ2の帰還後、開催2週間前の時点でも空きが残っていたので思い切って申し込んでみました。新型コロナの感染が拡大している状況下、場合によっては中止などもありということで、二の足を踏んだ方もいらしたかもしれません(私もそう)。フタを開けてみれば満席御礼でしたけれども。

 科学館のイベントならたいてい顔見知りが何人かはいるものですが、今回は見渡しても誰一人知人がいません。年齢構成は年配の方が多めで、中学生以下のお子さんは一人だけ。男女比は男性が少し多め。

 はやぶさ2の帰還に先立って津田PMは『はやぶさ2 最強ミッションの真実』という本を出されたのですが、この版元がNHK出版ということで、この企画となったのでした。津田さん曰く「本を出すのははやぶさ2が帰ってきたあとにしてほしかったのですけど、出版社の方がどうしてもうんといってくれなかった(苦笑)」とのこと。地球にたどり着けるかどうかも危ぶまれた初号機と違って、はやぶさ2の帰還は確実と出版社が自信を持っていたからこその日程だったのでしょう。

 津田さんの本は予め読んでいましたので、スライドのあちこちに仕掛けてある小ネタにクスクス笑いながらお話をお聞きしました。宇宙研の先生方は真面目なのにどこかお茶目な印象がありますが、その茶目っ気の部分が活きると面白いミッションになるのだと思います。

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2020年12月15日

スターリンク衛星の「光害」

「むりかぶし望遠鏡でスターリンク衛星の黒い塗装の効果を実証」(2020.12.8 石垣島天文台)

20201215sl1.png 国立天文台からリリースのあったスターリンク衛星の観測、石垣島天文台のニュースには「ダークサット」の模式図も出ています(右図:コピーライトマーク︎SpaceX)。黒くした部分はおそらくフェーズドアレイアンテナで面積は少ないのですが、それでも一定の効果はある。とはいえ光度は1等ほど暗くなる程度で「効果はあるけどまだ不十分」というところ。

20201215jaxa.jpg 上記によると無対策のスターリンク衛星は肉眼に感じやすい緑の波長で6.6等。この光度の移動天体を肉眼で見るのは難しいけれど、写真なら余裕で捕えてしまうのは先日のはやぶさ2のカプセル再突入の写真の通り(右写真:コピーライトマークJAXA)。写り込んだのは無対策のスターリンク衛星ですが、ダークサットは1等ほど暗いといえども、まだ簡単に写る明るさです。

「『はやぶさ2』再突入カプセル火球撮影にスペースXのスターリンク衛星が映り込み」(2020.12.14 秋山文野)

 スターリンク衛星の高度550kmは国際宇宙ステーション(ISS)より少し上ですが、太陽光の当たり方はおよそ似たようなものです。
 地表近くが影で衛星の通る上空だけ日が当たる朝夕の薄明の時間帯には見えて、衛星が地球の影に入る深夜は見えなくなります。ただ夏至の前後は上空に太陽光が差すので深夜でも見えてしまいます。
 先日のはやぶさ2のカプセル再突入は日本時間で2:30頃。ウーメラの経度は日本とほぼ同じなので深夜帯といってよい時間ですが、あちらは夏至間近なので、上空のスターリンク衛星が見えてしまったことになります。

 人工衛星は既に私たちの生活と不可分の存在です。例えば天気予報、特に台風情報などは気象衛星があればこそ精度の高い進路予測ができますし、人間の命を未然に救うことでは宇宙開発最大級の成果でしょう。衛星放送やGPSなどの衛星測位も、お茶の間や自動車やスマホに入り、無意識にサービスを受けています。

 大規模衛星コンステレーションによるインターネット網の提供も、事業が確立すれば地球上のほとんどの場所でネット接続が可能になる利便は大きいもの。

 既に人工天体が宇宙を飛び交うのが当たり前の時代。
 ISSの通過を眺めるのは多くの人々の楽しみの一つですし、地球近傍を通過するはやぶさ2の撮影に少なくない天文ファンが挑んだのは記憶に新しいところです。

 天文ファンの間で人工天体は観測テーマの一つである一方、イリジウム衛星が太陽光を反射するイリジウムフレアや大型化した静止衛星が写真に写り込むこと(天体写真名所のM42が日本からは静止衛星軌道と重なる位置にある)が問題になってきました。
 イリジウムフレアは正確な予報が出ることで観測対象の一つとなり、また衛星形状が改良されたことで現在はフレア自体が起こらなくなりました。
 静止衛星はコンポジットとσクリップという撮影技法と画像処理の進展で消すことが出来るようになり、これは他の人工天体にも応用できて、現在は問題視されることは少なくなっています。

 スターリンク衛星はとにかく数が多いのが問題で、2020年現在の計画総数約42,000基、実現すれば可視範囲の空に常時600基の衛星が飛び交います。
 眼視観望では、6等台半ばという光度なら肉眼で夜空を見る限りは大きな影響はなさそうです。望遠鏡や双眼鏡の視野に飛び込んでくるのも珍しいことではなくなりそう。
 天体写真のうち、星雲や星団を望遠で狙う撮影はσクリップで対応ですが、画質を考えて撮影枚数を増やすことになるかもしれません。手間は増えますが対応自体は不可能ではない。
 大きな影響を受けるのは星景写真。景色とともに星空を映すには薄明の時間帯を狙うことが多いので、これまで以上に必然的に衛星が写り込みます。何らかの形で撮影方法を工夫していくしかなさそうです。

 おそらく深刻なのは一発ものの天文現象で、ここぞというときの一枚ものに写り込まれると対処のしようがありません。前述のはやぶさ2のカプセル再突入の写真も、カプセルの軌跡とスターリンク衛星の軌跡がほぼ平行だったから違和感を感じにくいのですが、交差して写ったら邪魔と思う人が増えたかもしれません。受け手の感性次第なので、どこまでOKという線は引けませんが、心情としてはそもそも狙った対象以外は写り込んでほしくないところ。

 星空は人類共有の財産ですが、宇宙空間もまた人類共有の財産で、それだけに人工天体をどこまで許容するかは天文ファンだけの問題ではなく、人類全体の利便性とバーターにならざるをえません。
 現実的には大規模衛星コンステレーションをやめろという話ではなく、衛星を改良して反射光量を下げたり、個々の衛星の性能を上げて全体数を減らすような形で落とし所を探っていくことになると思います。

 天文学のコミュニティが衛星運営者との協議の場を持っているのは大切なことで、実際に国立天文台がスターリンク衛星の観測を行い、結果を公表しているのは、今後の事態の改善のためにも心強いです。
 星空は見上げればそこにある宇宙への最初の窓。天文ファンとして協力できることがあれば一緒に取り組んでいきたいです。

参考)「美しい星空と高速衛星インターネット通信の共存は可能か?」(国立天文台ニュース No.322 2020.5.1)
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2020年12月11日

今後の日本の宇宙科学

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 内閣府が定める宇宙基本計画及び工程表の改訂案より。今後10年の間にどんな衛星をいつ打ち上げるかの一覧です。主に科学衛星関連をピックアップ。
 衛星の枠としては、10年間で3機のペースの戦略的中型計画(300億円程度)と2年間に1機の公募型小型計画(100〜150億円程度)の2種類があります。以下、年度ごとに見ていきます。数が足りないのは諸般の事情です。
《戦略的中型計画》
○MMX(2022予定)火星衛星探査計画
○LiteBIRD(2028予定)宇宙マイクロ波背景放射偏光観測衛星
《公募型小型計画》
○SLIM(2022予定)小型月着陸実証機
○DESTINY+(2022予定)新宇宙技術探査実証機
○Solar-C_EUVST(2027予定)太陽観測衛星
○小型JASMINE(2028予定)赤外線位置天文観測衛星

【2021年度】
※H3ロケット運用開始(2023年度まではH-IIAと並行運用)

【2022年度】
X線分光撮像衛星(XRISM)
小型月着陸実証機(SLIM)
 XRISMは2016年に運用事故で喪失した「ひとみ(ASTRO-H)」の代替機。6年も間が空くかと思うのですが、2000年に打ち上げ失敗したASTRO-Eの代替機も5年かかっています。
 SLIMは日本初の月着陸機。元をたどれば「かぐや」(2007-2009)の後継機計画に盛り込まれた月着陸機計画にさかのぼります。かぐやの検討段階でも着陸機の構想はあったので20年越しのプロジェクトといえます。公募型小型計画(2年に1機)の1つ。
 XRISMとSLIMはH-IIAで同時打ち上げ。

【2023年度】
※イプシロンS(H3対応/能力向上版)ロケット運用開始、H-2Aロケット運用終了
月極域探査機
 月極域探査機はインドとの国際協力で、インドが着陸機、JAXAがローバの開発を担当。工程表に載っているのにプロジェクトのサイトが見当たらず詳細不明。H3ロケットで打ち上げ。

【2024年度】
火星衛星探査計画(MMX)
新宇宙技術探査実証機(DESTINY+)
 火星衛星探査計画(MMX)は火星の衛星フォボスからのサンプルリターンを実施。はやぶさプロジェクトを実質的に引き継ぐ計画。H3ロケットで打ち上げ、2029年に地球帰還。戦略的中型計画(10年間で3機)のうちの1つ。
 新宇宙技術探査実証(DESTINY+)は小型探査機でイオンエンジンを長期間運転して地球を離脱、最終的にふたご座流星群の母天体・小惑星フェアトンのフライバイ観測を実施。イプシロンで打ち上げ、フェアトン到着までは4年ほどかかる見込み。公募型小型計画(2年に1機)の1つ。

【2025年度】

【2026年度】

【2027年度】
高感度太陽紫外線分光観測衛星(Solar-C_EUVST)
 太陽観測衛星ひので(SOLAR-B)の後継。国立天文台中心のプロジェクト。公募型小型計画(2年に1機)の1つ。

【2028年度】
宇宙マイクロ波背景放射偏光観測衛星(LiteBIRD)
赤外線位置天文観測衛星(小型JASMINE)
 CLiteBIRDは宇宙マイクロ波背景放射の偏光を精密観測することにより、原始重力波を探索し、代表的なインフレーション理論を検証する衛星。戦略的中型計画(10年間で3基)のうちの1つ。
 小型JASMINEは銀河中心方向の星の分布と運動を測定するもので、いわば宇宙の地図づくりを担う位置天文学衛星。国立天文台中心のプロジェクト。公募型小型計画(2年に1機)の1つ。

【2029年度】

【2030年度以降】


 となります。以下は分野ごとに見ていきます。

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2020年12月06日

はやぶさ2、カプセル地球帰還

 その一日の覚え書き。

12月5日(土)
○13:30 明石市立天文科学館星の友の会の例会
20201205reikai.jpg 休憩時間(14時半〜)にはやぶさ2の帰還カプセル分離。JAXAのネット中継を手元のタブレット端末に映します。14:30カプセル分離、14:35に管制室で分離を確認して拍手が起こるのですが、この場面は見ていません。
 井上さんがアメリカのインターネット天文台ではやぶさ2の撮像に挑戦していて、ちょうど画像が上がったというのでこちらを一緒に見ていたのです。インターネット天文台は望遠鏡を遠隔操作して観測を行うサービスで、これを利用してカプセル分離の瞬間を撮るのはさすがの発想。分離のための姿勢変更で明るさが変化する様子も捉えていて、探査機の光学観測として貴重な資料です。
https://twitter.com/INOUE_Takeshi_/status/1335104030016589824
 写真はさっそく例会で報告する井上さん。

○18:05 自宅発、八塔寺へ向かう
 自宅で帰還のネット中継を見てもよいのですが、せっかくなので地球に接近するはやぶさ2の撮影を狙おうと出動。他の星仲間も撮影に挑んでいる岡山県備前市八塔寺へ向かいます。
 第二神明で事故渋滞があり、下道に降りて迂回、21時前に現着。八塔寺望ヶ丘では観測所を持つ方々が既に撮影に成功しているとのこと。

20201205hattoouji01.jpg
 手持ちの鏡筒はいつものミニボーグ60ED。はやぶさ2の撮影は20cm以上の鏡筒推奨と言われていたのですが、ダメもとで狙います。2015年の地球スイングバイでは望遠レンズでの撮影に成功した方がいるので、今回も予想より明るくなればチャンスがあるかもしれません。最少口径記録狙いです。
 →結果を先に書くと、写っていませんでした。流石に難しかった。
 後から知りましたが最少口径の観測記録は石川県の満天星での10cm屈折。すばらしい。

 土曜の夜とはいえ22時前に月がのぼってくるので、星見の人は少なく観測者は7組。最近の天体写真は撮像画像をPCのモニタにリアルタイムで映し出していくので、はやぶさ2の姿をほぼ生で見ることができます。

20201205hattouji.jpg
 八塔寺は携帯が入るので、この間に各地の光学観測成功の報も確認。最近はアマチュアでも20〜30cmクラスの望遠鏡を使う人が少なくないので、どんどん報告が上がります。はやぶさ初号機の時はすばる望遠鏡での撮像しかなかったことを考えると、探査機の軌道条件の違いはあるとはいえ、隔世の感。
 岡山の京都大学せいめい望遠鏡では分離したカプセルの撮影にも成功。10万km以上離れた直径40cmの中華鍋並の物体を撮れるとはすごいの一言。

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2020年12月01日

はやぶさの時代

 はやぶさ2がいよいよ地球に戻ってきます。
 はやぶさ初号機は壊れていない部分が少ないくらいの満身創痍で帰ってきましたが、はやぶさ2は健全そのもので、カプセルを地球へ落とした後は小惑星2つを追加で探査する拡張ミッションの計画が進められています。

 はやぶさ初号機は「工学技術実証機」で小惑星からサンプルを持ち帰る技術を確立することが目的でした。壮絶なダメ出しのおかげではやぶさ2は堅牢な探査機に仕上がり、イトカワ以上に厳しい環境のリュウグウでの探査が成功したのは初号機で鍛え上げられた運用チームの経験が継承されたことが大きいでしょう。

はやぶさ はやぶさ2
打ち上げ 成功 成功
イオンエンジン連続運転 成功 成功
地球スイングバイ 成功 成功
往路のできごと リアクションホイール2基故障(全3基)
太陽フレアによる太陽電池出力低下
(トラブルなし)
自律航法による小惑星とのランデブー 成功 成功
小惑星の科学観測 成功 成功
ローバー投下 失敗 成功(4機とも着陸または軌道投入成功)
タッチダウン 第1回 不時着
第2回 弾丸発射せず
第1回 成功
第2回 成功
クレーター生成実験 (計画なし) 成功
帰路のできごと 燃料漏洩→化学スラスタ全損
通信途絶→復旧
イオンエンジン故障→クロス運転で運転継続
(トラブルなし)
地球帰還 成功(本体は喪失) 12/6予定(本体は拡張ミッション運用へ)
サンプル回収 成功(不時着時に舞い上がったチリを採取) 早ければ12月半ばに判明

 この状態で帰ってきた初号機も改めてすごいのですが、何事もなく帰ってきたはやぶさ2は本当にすごい。

 初号機の打ち上げから17年、帰還から10年。はやぶさ2の打ち上げから6年。
 初号機の打ち上げの頃はネットの掲示板でやりとりしていたのが、イトカワ探査の頃にはブログになり、帰還の頃にはSNSに変わりつつありました。はやぶさ2は終始SNSですが、動画配信など行き交う情報の幅は格段に広まりました。一方で少ない情報に飢えながら、公開資料を読み解いた初号機当時の熱量が懐かしいようにも思えます。

 なにはともあれあと5日。最後の軌道変更(TCM-4)も終わり、小惑星往還サンプルリターンミッションとしてはカプセルの切り離しと回収を残すのみ。願わくば最後まで無事の帰還を。
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2020年06月13日

はやぶさ帰還10年

 2010年6月13日に「はやぶさ」が帰還して10年が経ちました。
 10周年とはいえ今さら昔を懐かしんでもなあ、くらいのつもりでいたのですが、前の晩にたまたま「HAYABUSA - BACK TO THE EARTH -」の無料オンライン配信を見てしまい、これは改めてドームで見たい→あっ、大阪市立科学館の学芸員スペシャルで上映してるんだっけ、と朝から大阪へ出かけてしまいました。

 その流れで、夜は「はやぶさメンバーによるリレートーク(夜の部)」の配信を見たのですが、これが面白い。語り尽くされたと思った事柄なのに、今になっても新しい話が出てくる。単に面白エピソードというのではなく、「こんな事があったけど、かれこれこういう理由があって、こういう対処をした(あるいはしなかった)」と理を通して語られるのがなるほど理学者・工学者。思い出話ではなくて次に活かすための話にしているのがさすがです。

 10年というのは長い月日で、はやぶさ帰還当時に小学校高学年だった子は既に社会人か大学生になっています。高校生だと記憶が微妙になってきて、中学生以下の世代はまず直接は知らないはず。

 SNSを見ていても、帰還10年は天文・宇宙に興味を持つ知人の間でこそ盛り上がりましたが、それ以外の知人の間では話題にもなりません。世間というのはそういうものです。
 いつまでもみんなが知っていると思うなよ、てやつですね。

 さて現在は「はやぶさ」の直系の後継機である「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの探査を終え、2020年12月の地球帰還へ向けて航行中です。

 そのさらに先としては、

火星衛星探査計画(MMX)……火星の衛星フォボスとダイモスの探査・サンプルリターン(2024年打上)
DESTINY+……技術試験と小惑星フェアトン(ふたご座流星群の母天体)のフライバイ探査(2024年打上)
・OKEANOS……ソーラーセイルを利用したトロヤ群小惑星探査(検討中)

あたりが現在準備中、あるいは検討されているところ。

 当時言われた「太陽系大航海時代」を現実のものにする技術は既に手中に収めつつあります。あとは新たな船を次々と送り出す心意気(言い換えるとお金をそこに突っ込む合意)だけです。最初にイトカワの姿を見たときも、リュウグウの姿を見たときも、未知なる星の姿にただただワクワクしました。私は未踏の地を踏みしめる興奮をまだまだ楽しみたいです。宇宙は人類にとってじゅうぶんに広すぎるんですから。
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2020年06月01日

クルードラゴン宇宙船

 NASA-TVの中継でクルードラゴンの、タッチパネル主体のあまりにあっさりした船内に驚いた一人です。
 SF映画というよりも、簡素すぎて低予算でセットにお金をかけられなかったSF映画のようです。頭の中の未来より現実が先に進んでしまったのでしょう。

 これまで有人で飛行した宇宙船、今回のクルードラゴンを含めてまだ9種類しかありません。

○旧ソ連/ロシア
・ボストーク(1961〜1963)
・ボスホート(1964〜1965)
・ソユーズ(1967〜運用中)

○アメリカ
・マーキュリー(1961〜1963)
・ジェミニ(1965〜1966)
・アポロ(1968〜1975)
・スペースシャトル(1981〜2011)
・クルードラゴン(2020〜運用中)

○中国
・神舟(2003〜運用中)

 21世紀に入ってから中国の神舟が加わりましたが、これはソユーズを元に開発されたもので、新規の設計としてはスペースシャトルからクルードラゴンまで39年の開きがあったことになります。それは新しくもなるというものです。
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2020年05月21日

H-2Bロケット9号機打ち上げ、神戸から観測

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 神戸から撮影したH-2Bロケット9号機。
 右下の淡路島の稜線から昇ってくるオレンジ色の光跡がH-2Bです。肉眼でもオレンジ色の尾を引いて昇る様子がはっきり分かりました。うっすら天の川が見えるほどの透明度で条件にも恵まれました。

2020年5月21日2時32分22秒〜(神戸市垂水区) NikonD5500+AF-P NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6→20mm/F3.8、ISO800 露出10秒×5枚比較明合成。

 生の打ち上げを見るのも初めてなら、遠方からロケットがどのような見え方をするのかも分からなかったので、最初に見つけたときはすぐにそれと分かりませんでした。
 リチウムとナトリウムの炎色反応の中間のような鮮やかな赤に近いオレンジ色の光点がゆっくり昇ってきて、噴射炎なのか噴煙が照らされているのか、後ろに尾を引いています。神戸から種子島まで直線距離で600km、ロケットは南東へ向かって飛んでいくので距離は離れる一方のはず。鮮やかな色もそうですし、形を持った姿で見えるとは思っていませんでした。

 思わず声を上げてしまいましたが、周りに人がいなくてよかった。
 見えていた時間は短く……といっても測っていないので分からないのですが、1分少々だったはず。
 個体ロケットブースターの燃焼終了に伴って暗くなり、一瞬だけ明るくなったのですが、その後すぐに暗くなって、以降は見えることはありませんでした。

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2020年05月17日

神戸航空衛星センターのパラボラアンテナ

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 国土交通省神戸航空衛星センターのパラボラアンテナを見学してきました。
 一般には気象衛星として知られている「ひまわり6号」「ひまわり7号」は、正式には「運輸多目的衛星」と呼ばれていました。気象観測の他に、飛行機の通信中継や正確に飛行機の位置を知るためのGPSの補強を行う信号を出していて、この航空関係の管制を神戸で行っていたのです。
 しかしながら「ひまわり6号(MTSAT-1R)」は2015年末に運用終了、そして「ひまわり7号(MTSAT-2)」も2020年3月で運用終了となり、このパラボラアンテナも役目を終えることとなりました。
 かつては3基あったパラボラも「ひまわり6号」の退役に伴って1基が既に撤去されています。残った2基も近々解体されるということで、見納めに行ったのでした。

 「ひまわり6号・7号」の航空関係のお仕事は準天頂衛星「みちびき」に引き継がれ、茨城県の常陸太田で衛星の管制が行われます。神戸では西日本一帯の飛行機の管制業務を担っています。

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 アンテナの直径は13mで、関西にあるものでは最大。遠くからでも見えていて、実は市営地下鉄からでもちらりと見ることが出来ます。

 施設については前回の訪問時(2016年)に詳しく書いたのでこちらを参照ください。
国土交通省大阪航空局神戸航空衛星センター(2016.4.10)

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 近くに寄ると既に撤去されたMTSAT-1Rのアンテナの台座が見えます。往時は真ん中にもう一台のアンテナがありました。

 パラボラの駆動部がやたらとシンプル。
 例えば電波望遠鏡の野辺山の45m鏡はあちこちの天体の観測を行うため、水平は360度、上下方向も鏡に触れるほどの横倒しから天頂までバリバリ動きます。でも静止衛星との通信なら、基本は空の同じ場所を向いていれば済むので、最小限の調整機能だけ持たせているわけです(ジャッキで仰角の調整をする構造)。

 実は関西は大型パラボラアンテナの過疎地で、神戸のアンテナが撤去されると、10mクラスのパラボラは和歌山大学まで行かねばお目にかかれません。
 20年ほどの間でしたが、まずはおつかれさまでした。
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2019年09月01日

中和神社(岡山県真庭市)

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 中和神社は岡山県真庭市、鳥取県との県境もそう遠くない山あいにあります。祭神は久那度神で牛馬の守護神。
20190901tsuyama-chuka-ningyo077.jpg もともとは村の名を関した神社で、この地は平成の大合併前は「中和村」でした。読み方は「ちゅうか」。この中和も明治の町村合併の際に生まれた地名で、神社は旧下和村にあたる「下和」地区にあります。
 旧中和村内には「初和」という大字もありますが、「和」が付く地名が並びながらも、読み方は初和=はつわ、中和=ちゅうか、下和=したお、と三者三様。どうしてこうなった。

 中和神社は小惑星探査機「はやぶさ」に縁のある神社として宇宙ファンに知られています。
 満身創痍で地球へ向かっていたはやぶさは、2009年11月、地球帰還まであと7ヶ月というところで当初の想定期間を超えて動き続けたイオンエンジンが停止します。原因は噴射したガスを電気的に中和するために電子を噴射する「中和器」の劣化。
 この時は生き残った中和器とイオン源を組み合わせる運用で一台分のエンジンの出力を得て、地球帰還への加速を再開できたのですが、いずれにせよ綱渡りの運用が続きます。

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 そこでプロジェクトマネージャーの川口淳一郎教授が参拝したのが「中和」つながりの「中和神社」。勝手ながら神頼みには縁のなさそうな方という印象を持っていたので、話を聞いたときには驚きましたが、「人事を尽くして天命を待つ」を地で行くのだなと思ったものです。

 それからはや10年。

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 社殿は中和小学校の一角にあり、鳥居と拝殿の間が学校の校庭になっている面白い空間。昔からの集落の中心の場所だったのでしょう。
 拝殿は瀟洒な造りで、石造りの鳥居といい、手水舎といい、よく手入れがなされていて、周囲に馴染んだ風景ながら、凛とした雰囲気が漂っています。

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 とにかく目を引くのは拝殿の後ろに立つ大きな杉。遠目にも目立つので、車を運転していても「あそこが中和神社か」と分かるほどでした。もしかすると、この杉をご神木として祀ったのが神社の起源の一つかもしれません。

 現在は後継機の「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの探査を続けていて、今冬にも地球へ向けて出発します。帰路もイオンエンジンを噴射しながらの旅路となるので、道中安全と航行の無事をお祈りしました。
 2020年冬、オーストラリア・ウーメラの空にカプセルが舞い降りるまで1年半を切っています。

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