2025年10月19日

X線天文衛星XRISM 第1回国際会議 一般講演会

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 X線天文衛星XRISM第1回国際会議の一般講演会「XRISMの挑戦」に参加しました。
 
 冒頭の概要と最後の京都と今の科学のお話は一般向けで、研究の紹介は一般向けの天文雑誌や科学雑誌を読んでる人くらいが対象なお話。
 「XRISM」は運用事故で喪失したX線天文衛星「ひとみ(ASTRO-H)」の代替として打ち上げられた衛星で、2016年の「ひとみ」喪失から2023年の「XRISM」打ち上げまで7年半の月日を要しました。間にCOVID-19のパンデミックを挟む苦しい期間でした。

 「XRISM」の顔と言えるのはResolveと名付けられたX線分光装置で、いわばX線のスペクトルを取る観測装置。カギを握るのはマイクロカロリーメータという装置で「宇宙一の低温」という273.1℃(0.05K)まで検出器を冷やします。飛び込んできたX線の光子が発するわずかなエネルギー量を正確に検出し、高分解のスペクトルを描き出します。とにかくこれがこれまでのX線天文衛星のスペクトルと桁違いの分解能を誇り、壇上でお話しされる先生方がデータのグラフを紹介しながら微笑みがあふれているのが印象的。

 実はセンサーを保護するベベリウムの膜が外れていなくて、一部の波長が観測できないトラブルが起きているのですが(X線は多くの物体を透過してしまうので観測そのものは可能)、それでも素晴らしいデータが取れているそうです。
 設計寿命は3年想定ですが、これは十分にクリアできる見通しで、2030年頃までの運用を計画しているそう。マイクロカロリーメータを冷やす冷凍機に液体ヘリウムを使っているので、次第に蒸発していくはずのヘリウムの残量が気になるところですが、「液体ヘリウムなしでも十分に冷やせる性能を持っている」「液体ヘリウムはある間は余裕を持って運転」「液体ヘリウムが尽きたら全力を出す(意訳)」ということで、こちらは心配ないようです。

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 可視光や赤外線望遠鏡は賑やかな写真が出ますが、XRISMは観測結果として出てくるのがスペクトルのグラフなので、一般向けの広報では少し不利な面はあるかもしれません。
 でも銀河団やらブラックホールやら、この日の話だけでもワクワクする観測成果がたくさん出てきているので、これからの成果も楽しみです。面白い講演会でした。

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2023年12月29日

ソユーズMS-20

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 東京ミッドタウン日比谷で展示されているソユーズ宇宙船を見てきました。
 66Sミッションで宇宙飛行参加者として前澤友作氏と平野陽三氏の日本人2人が搭乗した宇宙船。飛行期間は2021年12月8日〜20日。実際に使われたソユーズの帰還カプセルが日本で展示されるのは初めてだとか。
# JAXA筑波宇宙センターにあったのは原寸大のモックアップでした。

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 大気圏突入時に高熱にさらされた表面の焦げっぷりが生々しい。
 内装はモックアップに差し替えられていますが、これはやむなしというところ。よくこの中に3人も押し込むものです。

 ロシアのウクライナ侵攻で、おそらく今後、ソユーズに日本人が搭乗する機会は限りなく少ないと思います。JAXAの宇宙飛行士が乗ることは無いでしょうし、多額の費用をロシアの航空宇宙産業に支払う宇宙旅行として利用するのも難しそうです。
 長年にわたった国際宇宙ステーションでの国際協力が、大きな曲がり角にある時期での展示でした。
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2023年12月01日

中国宇宙ステーション「天宮」

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 仕事帰りに中国宇宙ステーション「天宮」(Chinese Space Station)のパス(上空通過)。
 中国宇宙ステーションは現状、中国の単独プロジェクト。独力でやってるのは技術と経済の裏付けあってこそで、有人宇宙開発では米ロに続く3番手の地位を確固たるものにしています。

 「天宮」のコアモジュールは2021年に上がっているので、これまでも見る機会は少なからずあったのですが、今回はじめて見ました。国際宇宙ステーションほど明るくならないし、これまであえて見る気にはなりませんでした。

 考えてみれば旧ソ連の「ミール」は当時は唯一の宇宙ステーションでしたし、国際宇宙ステーションは日本も参加しています。そして両方とも日本人が滞在した/している実績があります。

 「競争から協調へ」というのは以前に特別展「紙の宇宙博」をやったときの最終章のテーマでしたが、ロシアのウクライナ侵攻で、同国との国際プロジェクトはISS以外全面停止状態。
 中国は宇宙でも存在感を発揮しつつありますが、国家体制もあって協力関係を組むのは難しいですし、限定されたものになるでしょう。アメリカの宇宙開発も民間のSpaceXが話題の中心で、わずかの間に宇宙開発を巡る景色は様変わりしてしまった感はあります。
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2021年10月09日

はやぶさ2帰還カプセル展 at 尼崎

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 2020年12月に地球に戻った小惑星探査機はやぶさ2の帰還カプセル。
 2021年3月12〜16日にJAXA宇宙科学研究所のお膝元である相模原市立博物館で初公開され、3月27日〜4月11日に上野の国立科学博物館で展示。9月以降は一般公募した会場での巡回展が始まり、10月9〜12日の尼崎市での展示が関西初公開となりました。

 会場は阪神尼崎駅から南へ徒歩5分ほどの、尼崎信用金庫「尼信会館」。実は2011年9月にはやぶさ初号機の帰還カプセル展も開催しています。

 事前予約制で15分ずつにグループ分けして展示室へ誘導する方式で、屋外の待機場所も十分なスペースがあり、待ち時間もQRコードで展示解説のサイトへのリンクを紹介して頂いたり、至る所に配慮を感じます。

 展示室の前室には、はやぶさ2のミッションを紹介するパネルが壁3面ほどを使って並べられています。それぞれの壁をいっぱいに使った大きさで迫力十分、気分も盛り上がります。
 ミッションの流れは概ね頭に入っていますし、パネルは後からウェブサイトで確認できますから、15分の見学時間を目いっぱい活かすべく、メインの展示室へ進みます。

 こちらも壁面いっぱいに解説パネルや大伸ばしした写真が並び、部屋の中央に帰還カプセルのパーツと関連模型が並んでいます。手前から順に、

・1/8 はやぶさ2模型
・インスツルメントモジュール(実物)
・搭載電子機器部(実物)
・パラシュート(実物)
・背面ヒートシールド(実物)
・前面ヒートシールド(レプリカ)
・1/4500 小惑星リュウグウ模型

が並び、部屋の奥まで進んで展示物を囲むようにU字型に往復して戻ってくる見学路です。展示ケースまでの距離は1.5mほど。意外と間近な距離で見学できます。ちなみに会場内は撮影禁止で、これはどの展示会場でも共通。

 「インスツルメントモジュール」カプセルの内部骨格というべき部分で、リュウグウのサンプルを入れるサンプラコンテナと電子機器を収める縦長の弁当箱のような区画が中央にあり、外側のおわん型の部分にはパラシュート等が収められています。カプセルの位置を知らせるビーコン(電波信号)を発信するアンテナもここに付いているはず(ですがよく分からなかった)。
 ヒートシールドに守られた部分なので新品同様にきれいですが、中央部分の天辺は大気圏再突入時に外気に触れるため真っ黒に焦げていて、探査機本体とカプセル内の電子機器をつないでいたアンビリカルケーブルのカプセル側の断片が残っています。 

 「搭載電子機器部」はカプセルの頭脳に当たる部分。電源が入るのは大気圏再突入の直前で、再突入後にヒートシールドを分離し、パラシュートを開き、カプセルの位置を知らせるビーコンを発する動作を司ります。また初号機のカプセルから追加された機能として、再突入時の温度や加速度を記録するセンサーも搭載しています。中央が円筒状にくりぬかれているのはサンプルコンテナのスペース。

 「パラシュート」は大気圏内でカプセルを減速して安全に着陸させるためのもの。福島県田村市の藤倉航装の製品。布地はポリエステルで宇宙空間に6年滞在しても無事に開傘して役目を果たしました。はやぶさ2のカプセルに使われたのは白の生地ですが、同材質の色違いのサンプルを持っています。
 
 「背面ヒートシールド」はカプセルの外殻で、大気圏再突入時に後ろ側になるお鍋の蓋のようなパーツ。黒く焼け焦げていますが、表面に貼られていた金色のカプトンテープが一部残っています。溶け具合が初号機のカプセルより生々しい印象を受けました。
 内側には「見つけたら連絡してね」ということで、JAXA相模原キャンパスの住所と連絡先を書いた紙片が2ヶ所貼り付けられています。初号機の時は関係者の名前を書き込んだ紙も貼りこんであったのですが、はやぶさ2ではなかった模様。
 パラシュートを収めた鞘のような袋は背面ヒートシールドに結び付けられていて、分離されると同時にパラシュートが引き出されて開くことになります。

 カプセルの展示のうち「前面ヒートシールド」だけが実物ではなく、レプリカの展示です。大気圏再突入時に正面になるお鍋の底のようなパーツで、厚く塗られた樹脂が蒸発しながら、カプセル内部を高温から守る役割を持っています。樹脂の部分は真っ黒に焼けこげ、非常に脆い状態になっているため、相模原と科博のみ実物が展示され、その後の巡回展ではレプリカが回ることになっています。
 本物は今ごろ宇宙科学研究所でいろいろ調査が行われているかもしれません。

 はやぶさ2の帰還は遠征先で見守ったのですが、こうして実物を改めて見学して、ようやく一区切りついたような気がしました。
# 2022年1月には明石市立天文科学館での展示が予定されていますから、もう一山あることになります。

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2020年12月26日

NHK文化センター『はやぶさ2 最強ミッションの真実』出版記念特別講座

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 無事に地球帰還を果たした「はやぶさ2」の津田雄一プロジェクトマネージャーの講座。
 私がこうした企画に参加するのはたいてい科学館のイベントですが、今回はNHK文化センターの企画ということで、会場もビルの一角のNHK文化センター京都教室。この企画を知ったのもSNSの広告で、はやぶさ2の帰還後、開催2週間前の時点でも空きが残っていたので思い切って申し込んでみました。新型コロナの感染が拡大している状況下、場合によっては中止などもありということで、二の足を踏んだ方もいらしたかもしれません(私もそう)。フタを開けてみれば満席御礼でしたけれども。

 科学館のイベントならたいてい顔見知りが何人かはいるものですが、今回は見渡しても誰一人知人がいません。年齢構成は年配の方が多めで、中学生以下のお子さんは一人だけ。男女比は男性が少し多め。

 はやぶさ2の帰還に先立って津田PMは『はやぶさ2 最強ミッションの真実』という本を出されたのですが、この版元がNHK出版ということで、この企画となったのでした。津田さん曰く「本を出すのははやぶさ2が帰ってきたあとにしてほしかったのですけど、出版社の方がどうしてもうんといってくれなかった(苦笑)」とのこと。地球にたどり着けるかどうかも危ぶまれた初号機と違って、はやぶさ2の帰還は確実と出版社が自信を持っていたからこその日程だったのでしょう。

 津田さんの本は予め読んでいましたので、スライドのあちこちに仕掛けてある小ネタにクスクス笑いながらお話をお聞きしました。宇宙研の先生方は真面目なのにどこかお茶目な印象がありますが、その茶目っ気の部分が活きると面白いミッションになるのだと思います。

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2020年12月15日

スターリンク衛星の「光害」

「むりかぶし望遠鏡でスターリンク衛星の黒い塗装の効果を実証」(2020.12.8 石垣島天文台)

20201215sl1.png 国立天文台からリリースのあったスターリンク衛星の観測、石垣島天文台のニュースには「ダークサット」の模式図も出ています(右図:コピーライトマーク︎SpaceX)。黒くした部分はおそらくフェーズドアレイアンテナで面積は少ないのですが、それでも一定の効果はある。とはいえ光度は1等ほど暗くなる程度で「効果はあるけどまだ不十分」というところ。

20201215jaxa.jpg 上記によると無対策のスターリンク衛星は肉眼に感じやすい緑の波長で6.6等。この光度の移動天体を肉眼で見るのは難しいけれど、写真なら余裕で捕えてしまうのは先日のはやぶさ2のカプセル再突入の写真の通り(右写真:コピーライトマークJAXA)。写り込んだのは無対策のスターリンク衛星ですが、ダークサットは1等ほど暗いといえども、まだ簡単に写る明るさです。

「『はやぶさ2』再突入カプセル火球撮影にスペースXのスターリンク衛星が映り込み」(2020.12.14 秋山文野)

 スターリンク衛星の高度550kmは国際宇宙ステーション(ISS)より少し上ですが、太陽光の当たり方はおよそ似たようなものです。
 地表近くが影で衛星の通る上空だけ日が当たる朝夕の薄明の時間帯には見えて、衛星が地球の影に入る深夜は見えなくなります。ただ夏至の前後は上空に太陽光が差すので深夜でも見えてしまいます。
 先日のはやぶさ2のカプセル再突入は日本時間で2:30頃。ウーメラの経度は日本とほぼ同じなので深夜帯といってよい時間ですが、あちらは夏至間近なので、上空のスターリンク衛星が見えてしまったことになります。

 人工衛星は既に私たちの生活と不可分の存在です。例えば天気予報、特に台風情報などは気象衛星があればこそ精度の高い進路予測ができますし、人間の命を未然に救うことでは宇宙開発最大級の成果でしょう。衛星放送やGPSなどの衛星測位も、お茶の間や自動車やスマホに入り、無意識にサービスを受けています。

 大規模衛星コンステレーションによるインターネット網の提供も、事業が確立すれば地球上のほとんどの場所でネット接続が可能になる利便は大きいもの。

 既に人工天体が宇宙を飛び交うのが当たり前の時代。
 ISSの通過を眺めるのは多くの人々の楽しみの一つですし、地球近傍を通過するはやぶさ2の撮影に少なくない天文ファンが挑んだのは記憶に新しいところです。

 天文ファンの間で人工天体は観測テーマの一つである一方、イリジウム衛星が太陽光を反射するイリジウムフレアや大型化した静止衛星が写真に写り込むこと(天体写真名所のM42が日本からは静止衛星軌道と重なる位置にある)が問題になってきました。
 イリジウムフレアは正確な予報が出ることで観測対象の一つとなり、また衛星形状が改良されたことで現在はフレア自体が起こらなくなりました。
 静止衛星はコンポジットとσクリップという撮影技法と画像処理の進展で消すことが出来るようになり、これは他の人工天体にも応用できて、現在は問題視されることは少なくなっています。

 スターリンク衛星はとにかく数が多いのが問題で、2020年現在の計画総数約42,000基、実現すれば可視範囲の空に常時600基の衛星が飛び交います。
 眼視観望では、6等台半ばという光度なら肉眼で夜空を見る限りは大きな影響はなさそうです。望遠鏡や双眼鏡の視野に飛び込んでくるのも珍しいことではなくなりそう。
 天体写真のうち、星雲や星団を望遠で狙う撮影はσクリップで対応ですが、画質を考えて撮影枚数を増やすことになるかもしれません。手間は増えますが対応自体は不可能ではない。
 大きな影響を受けるのは星景写真。景色とともに星空を映すには薄明の時間帯を狙うことが多いので、これまで以上に必然的に衛星が写り込みます。何らかの形で撮影方法を工夫していくしかなさそうです。

 おそらく深刻なのは一発ものの天文現象で、ここぞというときの一枚ものに写り込まれると対処のしようがありません。前述のはやぶさ2のカプセル再突入の写真も、カプセルの軌跡とスターリンク衛星の軌跡がほぼ平行だったから違和感を感じにくいのですが、交差して写ったら邪魔と思う人が増えたかもしれません。受け手の感性次第なので、どこまでOKという線は引けませんが、心情としてはそもそも狙った対象以外は写り込んでほしくないところ。

 星空は人類共有の財産ですが、宇宙空間もまた人類共有の財産で、それだけに人工天体をどこまで許容するかは天文ファンだけの問題ではなく、人類全体の利便性とバーターにならざるをえません。
 現実的には大規模衛星コンステレーションをやめろという話ではなく、衛星を改良して反射光量を下げたり、個々の衛星の性能を上げて全体数を減らすような形で落とし所を探っていくことになると思います。

 天文学のコミュニティが衛星運営者との協議の場を持っているのは大切なことで、実際に国立天文台がスターリンク衛星の観測を行い、結果を公表しているのは、今後の事態の改善のためにも心強いです。
 星空は見上げればそこにある宇宙への最初の窓。天文ファンとして協力できることがあれば一緒に取り組んでいきたいです。

参考)「美しい星空と高速衛星インターネット通信の共存は可能か?」(国立天文台ニュース No.322 2020.5.1)
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2020年12月11日

今後の日本の宇宙科学

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 内閣府が定める宇宙基本計画及び工程表の改訂案より。今後10年の間にどんな衛星をいつ打ち上げるかの一覧です。主に科学衛星関連をピックアップ。
 衛星の枠としては、10年間で3機のペースの戦略的中型計画(300億円程度)と2年間に1機の公募型小型計画(100〜150億円程度)の2種類があります。以下、年度ごとに見ていきます。数が足りないのは諸般の事情です。
《戦略的中型計画》
○MMX(2022予定)火星衛星探査計画
○LiteBIRD(2028予定)宇宙マイクロ波背景放射偏光観測衛星
《公募型小型計画》
○SLIM(2022予定)小型月着陸実証機
○DESTINY+(2022予定)新宇宙技術探査実証機
○Solar-C_EUVST(2027予定)太陽観測衛星
○小型JASMINE(2028予定)赤外線位置天文観測衛星

【2021年度】
※H3ロケット運用開始(2023年度まではH-IIAと並行運用)

【2022年度】
X線分光撮像衛星(XRISM)
小型月着陸実証機(SLIM)
 XRISMは2016年に運用事故で喪失した「ひとみ(ASTRO-H)」の代替機。6年も間が空くかと思うのですが、2000年に打ち上げ失敗したASTRO-Eの代替機も5年かかっています。
 SLIMは日本初の月着陸機。元をたどれば「かぐや」(2007-2009)の後継機計画に盛り込まれた月着陸機計画にさかのぼります。かぐやの検討段階でも着陸機の構想はあったので20年越しのプロジェクトといえます。公募型小型計画(2年に1機)の1つ。
 XRISMとSLIMはH-IIAで同時打ち上げ。

【2023年度】
※イプシロンS(H3対応/能力向上版)ロケット運用開始、H-2Aロケット運用終了
月極域探査機
 月極域探査機はインドとの国際協力で、インドが着陸機、JAXAがローバの開発を担当。工程表に載っているのにプロジェクトのサイトが見当たらず詳細不明。H3ロケットで打ち上げ。

【2024年度】
火星衛星探査計画(MMX)
新宇宙技術探査実証機(DESTINY+)
 火星衛星探査計画(MMX)は火星の衛星フォボスからのサンプルリターンを実施。はやぶさプロジェクトを実質的に引き継ぐ計画。H3ロケットで打ち上げ、2029年に地球帰還。戦略的中型計画(10年間で3機)のうちの1つ。
 新宇宙技術探査実証(DESTINY+)は小型探査機でイオンエンジンを長期間運転して地球を離脱、最終的にふたご座流星群の母天体・小惑星フェアトンのフライバイ観測を実施。イプシロンで打ち上げ、フェアトン到着までは4年ほどかかる見込み。公募型小型計画(2年に1機)の1つ。

【2025年度】

【2026年度】

【2027年度】
高感度太陽紫外線分光観測衛星(Solar-C_EUVST)
 太陽観測衛星ひので(SOLAR-B)の後継。国立天文台中心のプロジェクト。公募型小型計画(2年に1機)の1つ。

【2028年度】
宇宙マイクロ波背景放射偏光観測衛星(LiteBIRD)
赤外線位置天文観測衛星(小型JASMINE)
 CLiteBIRDは宇宙マイクロ波背景放射の偏光を精密観測することにより、原始重力波を探索し、代表的なインフレーション理論を検証する衛星。戦略的中型計画(10年間で3基)のうちの1つ。
 小型JASMINEは銀河中心方向の星の分布と運動を測定するもので、いわば宇宙の地図づくりを担う位置天文学衛星。国立天文台中心のプロジェクト。公募型小型計画(2年に1機)の1つ。

【2029年度】

【2030年度以降】


 となります。以下は分野ごとに見ていきます。

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2020年12月06日

はやぶさ2、カプセル地球帰還

 その一日の覚え書き。

12月5日(土)
○13:30 明石市立天文科学館星の友の会の例会
20201205reikai.jpg 休憩時間(14時半〜)にはやぶさ2の帰還カプセル分離。JAXAのネット中継を手元のタブレット端末に映します。14:30カプセル分離、14:35に管制室で分離を確認して拍手が起こるのですが、この場面は見ていません。
 井上さんがアメリカのインターネット天文台ではやぶさ2の撮像に挑戦していて、ちょうど画像が上がったというのでこちらを一緒に見ていたのです。インターネット天文台は望遠鏡を遠隔操作して観測を行うサービスで、これを利用してカプセル分離の瞬間を撮るのはさすがの発想。分離のための姿勢変更で明るさが変化する様子も捉えていて、探査機の光学観測として貴重な資料です。
https://twitter.com/INOUE_Takeshi_/status/1335104030016589824
 写真はさっそく例会で報告する井上さん。

○18:05 自宅発、八塔寺へ向かう
 自宅で帰還のネット中継を見てもよいのですが、せっかくなので地球に接近するはやぶさ2の撮影を狙おうと出動。他の星仲間も撮影に挑んでいる岡山県備前市八塔寺へ向かいます。
 第二神明で事故渋滞があり、下道に降りて迂回、21時前に現着。八塔寺望ヶ丘では観測所を持つ方々が既に撮影に成功しているとのこと。

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 手持ちの鏡筒はいつものミニボーグ60ED。はやぶさ2の撮影は20cm以上の鏡筒推奨と言われていたのですが、ダメもとで狙います。2015年の地球スイングバイでは望遠レンズでの撮影に成功した方がいるので、今回も予想より明るくなればチャンスがあるかもしれません。最少口径記録狙いです。
 →結果を先に書くと、写っていませんでした。流石に難しかった。
 後から知りましたが最少口径の観測記録は石川県の満天星での10cm屈折。すばらしい。

 土曜の夜とはいえ22時前に月がのぼってくるので、星見の人は少なく観測者は7組。最近の天体写真は撮像画像をPCのモニタにリアルタイムで映し出していくので、はやぶさ2の姿をほぼ生で見ることができます。

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 八塔寺は携帯が入るので、この間に各地の光学観測成功の報も確認。最近はアマチュアでも20〜30cmクラスの望遠鏡を使う人が少なくないので、どんどん報告が上がります。はやぶさ初号機の時はすばる望遠鏡での撮像しかなかったことを考えると、探査機の軌道条件の違いはあるとはいえ、隔世の感。
 岡山の京都大学せいめい望遠鏡では分離したカプセルの撮影にも成功。10万km以上離れた直径40cmの中華鍋並の物体を撮れるとはすごいの一言。

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2020年12月01日

はやぶさの時代

 はやぶさ2がいよいよ地球に戻ってきます。
 はやぶさ初号機は壊れていない部分が少ないくらいの満身創痍で帰ってきましたが、はやぶさ2は健全そのもので、カプセルを地球へ落とした後は小惑星2つを追加で探査する拡張ミッションの計画が進められています。

 はやぶさ初号機は「工学技術実証機」で小惑星からサンプルを持ち帰る技術を確立することが目的でした。壮絶なダメ出しのおかげではやぶさ2は堅牢な探査機に仕上がり、イトカワ以上に厳しい環境のリュウグウでの探査が成功したのは初号機で鍛え上げられた運用チームの経験が継承されたことが大きいでしょう。

はやぶさ はやぶさ2
打ち上げ 成功 成功
イオンエンジン連続運転 成功 成功
地球スイングバイ 成功 成功
往路のできごと リアクションホイール2基故障(全3基)
太陽フレアによる太陽電池出力低下
(トラブルなし)
自律航法による小惑星とのランデブー 成功 成功
小惑星の科学観測 成功 成功
ローバー投下 失敗 成功(4機とも着陸または軌道投入成功)
タッチダウン 第1回 不時着
第2回 弾丸発射せず
第1回 成功
第2回 成功
クレーター生成実験 (計画なし) 成功
帰路のできごと 燃料漏洩→化学スラスタ全損
通信途絶→復旧
イオンエンジン故障→クロス運転で運転継続
(トラブルなし)
地球帰還 成功(本体は喪失) 12/6予定(本体は拡張ミッション運用へ)
サンプル回収 成功(不時着時に舞い上がったチリを採取) 早ければ12月半ばに判明

 この状態で帰ってきた初号機も改めてすごいのですが、何事もなく帰ってきたはやぶさ2は本当にすごい。

 初号機の打ち上げから17年、帰還から10年。はやぶさ2の打ち上げから6年。
 初号機の打ち上げの頃はネットの掲示板でやりとりしていたのが、イトカワ探査の頃にはブログになり、帰還の頃にはSNSに変わりつつありました。はやぶさ2は終始SNSですが、動画配信など行き交う情報の幅は格段に広まりました。一方で少ない情報に飢えながら、公開資料を読み解いた初号機当時の熱量が懐かしいようにも思えます。

 なにはともあれあと5日。最後の軌道変更(TCM-4)も終わり、小惑星往還サンプルリターンミッションとしてはカプセルの切り離しと回収を残すのみ。願わくば最後まで無事の帰還を。
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2020年06月13日

はやぶさ帰還10年

 2010年6月13日に「はやぶさ」が帰還して10年が経ちました。
 10周年とはいえ今さら昔を懐かしんでもなあ、くらいのつもりでいたのですが、前の晩にたまたま「HAYABUSA - BACK TO THE EARTH -」の無料オンライン配信を見てしまい、これは改めてドームで見たい→あっ、大阪市立科学館の学芸員スペシャルで上映してるんだっけ、と朝から大阪へ出かけてしまいました。

 その流れで、夜は「はやぶさメンバーによるリレートーク(夜の部)」の配信を見たのですが、これが面白い。語り尽くされたと思った事柄なのに、今になっても新しい話が出てくる。単に面白エピソードというのではなく、「こんな事があったけど、かれこれこういう理由があって、こういう対処をした(あるいはしなかった)」と理を通して語られるのがなるほど理学者・工学者。思い出話ではなくて次に活かすための話にしているのがさすがです。

 10年というのは長い月日で、はやぶさ帰還当時に小学校高学年だった子は既に社会人か大学生になっています。高校生だと記憶が微妙になってきて、中学生以下の世代はまず直接は知らないはず。

 SNSを見ていても、帰還10年は天文・宇宙に興味を持つ知人の間でこそ盛り上がりましたが、それ以外の知人の間では話題にもなりません。世間というのはそういうものです。
 いつまでもみんなが知っていると思うなよ、てやつですね。

 さて現在は「はやぶさ」の直系の後継機である「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの探査を終え、2020年12月の地球帰還へ向けて航行中です。

 そのさらに先としては、

火星衛星探査計画(MMX)……火星の衛星フォボスとダイモスの探査・サンプルリターン(2024年打上)
DESTINY+……技術試験と小惑星フェアトン(ふたご座流星群の母天体)のフライバイ探査(2024年打上)
・OKEANOS……ソーラーセイルを利用したトロヤ群小惑星探査(検討中)

あたりが現在準備中、あるいは検討されているところ。

 当時言われた「太陽系大航海時代」を現実のものにする技術は既に手中に収めつつあります。あとは新たな船を次々と送り出す心意気(言い換えるとお金をそこに突っ込む合意)だけです。最初にイトカワの姿を見たときも、リュウグウの姿を見たときも、未知なる星の姿にただただワクワクしました。私は未踏の地を踏みしめる興奮をまだまだ楽しみたいです。宇宙は人類にとってじゅうぶんに広すぎるんですから。
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