2020年06月13日

はやぶさ帰還10年

 2010年6月13日に「はやぶさ」が帰還して10年が経ちました。
 10周年とはいえ今さら昔を懐かしんでもなあ、くらいのつもりでいたのですが、前の晩にたまたま「HAYABUSA - BACK TO THE EARTH -」の無料オンライン配信を見てしまい、これは改めてドームで見たい→あっ、大阪市立科学館の学芸員スペシャルで上映してるんだっけ、と朝から大阪へ出かけてしまいました。

 その流れで、夜は「はやぶさメンバーによるリレートーク(夜の部)」の配信を見たのですが、これが面白い。語り尽くされたと思った事柄なのに、今になっても新しい話が出てくる。単に面白エピソードというのではなく、「こんな事があったけど、かれこれこういう理由があって、こういう対処をした(あるいはしなかった)」と理を通して語られるのがなるほど理学者・工学者。思い出話ではなくて次に活かすための話にしているのがさすがです。

 10年というのは長い月日で、はやぶさ帰還当時に小学校高学年だった子は既に社会人か大学生になっています。高校生だと記憶が微妙になってきて、中学生以下の世代はまず直接は知らないはず。

 SNSを見ていても、帰還10年は天文・宇宙に興味を持つ知人の間でこそ盛り上がりましたが、それ以外の知人の間では話題にもなりません。世間というのはそういうものです。
 いつまでもみんなが知っていると思うなよ、てやつですね。

 さて現在は「はやぶさ」の直系の後継機である「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの探査を終え、2020年12月の地球帰還へ向けて航行中です。

 そのさらに先としては、

火星衛星探査計画(MMX)……火星の衛星フォボスとダイモスの探査・サンプルリターン(2024年打上)
DESTINY+……技術試験と小惑星フェアトン(ふたご座流星群の母天体)のフライバイ探査(2024年打上)
・OKEANOS……ソーラーセイルを利用したトロヤ群小惑星探査(検討中)

あたりが現在準備中、あるいは検討されているところ。

 当時言われた「太陽系大航海時代」を現実のものにする技術は既に手中に収めつつあります。あとは新たな船を次々と送り出す心意気(言い換えるとお金をそこに突っ込む合意)だけです。最初にイトカワの姿を見たときも、リュウグウの姿を見たときも、未知なる星の姿にただただワクワクしました。私は未踏の地を踏みしめる興奮をまだまだ楽しみたいです。宇宙は人類にとってじゅうぶんに広すぎるんですから。
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2020年06月01日

クルードラゴン宇宙船

 NASA-TVの中継でクルードラゴンの、タッチパネル主体のあまりにあっさりした船内に驚いた一人です。
 SF映画というよりも、簡素すぎて低予算でセットにお金をかけられなかったSF映画のようです。頭の中の未来より現実が先に進んでしまったのでしょう。

 これまで有人で飛行した宇宙船、今回のクルードラゴンを含めてまだ9種類しかありません。

○旧ソ連/ロシア
・ボストーク(1961〜1963)
・ボスホート(1964〜1965)
・ソユーズ(1967〜運用中)

○アメリカ
・マーキュリー(1961〜1963)
・ジェミニ(1965〜1966)
・アポロ(1968〜1975)
・スペースシャトル(1981〜2011)
・クルードラゴン(2020〜運用中)

○中国
・神舟(2003〜運用中)

 21世紀に入ってから中国の神舟が加わりましたが、これはソユーズを元に開発されたもので、新規の設計としてはスペースシャトルからクルードラゴンまで39年の開きがあったことになります。それは新しくもなるというものです。
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2020年05月21日

H-2Bロケット9号機打ち上げ、神戸から観測

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 神戸から撮影したH-2Bロケット9号機。
 右下の淡路島の稜線から昇ってくるオレンジ色の光跡がH-2Bです。肉眼でもオレンジ色の尾を引いて昇る様子がはっきり分かりました。うっすら天の川が見えるほどの透明度で条件にも恵まれました。

2020年5月21日2時32分22秒〜(神戸市垂水区) NikonD5500+AF-P NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6→20mm/F3.8、ISO800 露出10秒×5枚比較明合成。

 生の打ち上げを見るのも初めてなら、遠方からロケットがどのような見え方をするのかも分からなかったので、最初に見つけたときはすぐにそれと分かりませんでした。
 リチウムとナトリウムの炎色反応の中間のような鮮やかな赤に近いオレンジ色の光点がゆっくり昇ってきて、噴射炎なのか噴煙が照らされているのか、後ろに尾を引いています。神戸から種子島まで直線距離で600km、ロケットは南東へ向かって飛んでいくので距離は離れる一方のはず。鮮やかな色もそうですし、形を持った姿で見えるとは思っていませんでした。

 思わず声を上げてしまいましたが、周りに人がいなくてよかった。
 見えていた時間は短く……といっても測っていないので分からないのですが、1分少々だったはず。
 個体ロケットブースターの燃焼終了に伴って暗くなり、一瞬だけ明るくなったのですが、その後すぐに暗くなって、以降は見えることはありませんでした。

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2020年05月17日

神戸航空衛星センターのパラボラアンテナ

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 国土交通省神戸航空衛星センターのパラボラアンテナを見学してきました。
 一般には気象衛星として知られている「ひまわり6号」「ひまわり7号」は、正式には「運輸多目的衛星」と呼ばれていました。気象観測の他に、飛行機の通信中継や正確に飛行機の位置を知るためのGPSの補強を行う信号を出していて、この航空関係の管制を神戸で行っていたのです。
 しかしながら「ひまわり6号(MTSAT-1R)」は2015年末に運用終了、そして「ひまわり7号(MTSAT-2)」も2020年3月で運用終了となり、このパラボラアンテナも役目を終えることとなりました。
 かつては3基あったパラボラも「ひまわり6号」の退役に伴って1基が既に撤去されています。残った2基も近々解体されるということで、見納めに行ったのでした。

 「ひまわり6号・7号」の航空関係のお仕事は準天頂衛星「みちびき」に引き継がれ、茨城県の常陸太田で衛星の管制が行われます。神戸では西日本一帯の飛行機の管制業務を担っています。

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 アンテナの直径は13mで、関西にあるものでは最大。遠くからでも見えていて、実は市営地下鉄からでもちらりと見ることが出来ます。

 施設については前回の訪問時(2016年)に詳しく書いたのでこちらを参照ください。
国土交通省大阪航空局神戸航空衛星センター(2016.4.10)

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 近くに寄ると既に撤去されたMTSAT-1Rのアンテナの台座が見えます。往時は真ん中にもう一台のアンテナがありました。

 パラボラの駆動部がやたらとシンプル。
 例えば電波望遠鏡の野辺山の45m鏡はあちこちの天体の観測を行うため、水平は360度、上下方向も鏡に触れるほどの横倒しから天頂までバリバリ動きます。でも静止衛星との通信なら、基本は空の同じ場所を向いていれば済むので、最小限の調整機能だけ持たせているわけです(ジャッキで仰角の調整をする構造)。

 実は関西は大型パラボラアンテナの過疎地で、神戸のアンテナが撤去されると、10mクラスのパラボラは和歌山大学まで行かねばお目にかかれません。
 20年ほどの間でしたが、まずはおつかれさまでした。
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2019年09月01日

中和神社(岡山県真庭市)

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 中和神社は岡山県真庭市、鳥取県との県境もそう遠くない山あいにあります。祭神は久那度神で牛馬の守護神。
20190901tsuyama-chuka-ningyo077.jpg もともとは村の名を関した神社で、この地は平成の大合併前は「中和村」でした。読み方は「ちゅうか」。この中和も明治の町村合併の際に生まれた地名で、神社は旧下和村にあたる「下和」地区にあります。
 旧中和村内には「初和」という大字もありますが、「和」が付く地名が並びながらも、読み方は初和=はつわ、中和=ちゅうか、下和=したお、と三者三様。どうしてこうなった。

 中和神社は小惑星探査機「はやぶさ」に縁のある神社として宇宙ファンに知られています。
 満身創痍で地球へ向かっていたはやぶさは、2009年11月、地球帰還まであと7ヶ月というところで当初の想定期間を超えて動き続けたイオンエンジンが停止します。原因は噴射したガスを電気的に中和するために電子を噴射する「中和器」の劣化。
 この時は生き残った中和器とイオン源を組み合わせる運用で一台分のエンジンの出力を得て、地球帰還への加速を再開できたのですが、いずれにせよ綱渡りの運用が続きます。

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 そこでプロジェクトマネージャーの川口淳一郎教授が参拝したのが「中和」つながりの「中和神社」。勝手ながら神頼みには縁のなさそうな方という印象を持っていたので、話を聞いたときには驚きましたが、「人事を尽くして天命を待つ」を地で行くのだなと思ったものです。

 それからはや10年。

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 社殿は中和小学校の一角にあり、鳥居と拝殿の間が学校の校庭になっている面白い空間。昔からの集落の中心の場所だったのでしょう。
 拝殿は瀟洒な造りで、石造りの鳥居といい、手水舎といい、よく手入れがなされていて、周囲に馴染んだ風景ながら、凛とした雰囲気が漂っています。

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 とにかく目を引くのは拝殿の後ろに立つ大きな杉。遠目にも目立つので、車を運転していても「あそこが中和神社か」と分かるほどでした。もしかすると、この杉をご神木として祀ったのが神社の起源の一つかもしれません。

 現在は後継機の「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの探査を続けていて、今冬にも地球へ向けて出発します。帰路もイオンエンジンを噴射しながらの旅路となるので、道中安全と航行の無事をお祈りしました。
 2020年冬、オーストラリア・ウーメラの空にカプセルが舞い降りるまで1年半を切っています。

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2019年07月11日

はやぶさは二度舞い降りた

 小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウへの二度目のサンプル採取に挑み、成功しました。
 おめでとうございます!
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2018年06月27日

はやぶさ2、小惑星リュウグウに到着

 小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに到着しました。
 到着といっても着陸したわけではなく、リュウグウの上空20kmの地点。まずはここから探査が始まります。

トラブルまみれの先代「はやぶさ」
 大成功した先代の「はやぶさ」ですが、実際は幾多のトラブルを抱えていました。
 目的地の小惑星イトカワに着くまでに、
・太陽電池が太陽フレアの影響で劣化。発電量が低下し、イオンエンジンの出力も落ち、小惑星到着が遅れる。
・探査機の姿勢を制御するリアクションホイールが3つのうち1つ故障。化学スラスタを併用しての姿勢制御を強いられる。

 イトカワに着いてからも、
・リアクションホイールがもう一つ故障。
・ローバー「ミネルバ」の小惑星到達に失敗。
・最初のタッチダウンは「不時着」。
・二度目のタッチダウン時にサンプラーの弾丸発射失敗→採取サンプルが少量にとどまる。
・二度目のタッチダウン後に化学スラスタ全損、燃料漏洩→姿勢制御しきれず通信途絶。

 帰還運用時に
・イオンエンジン劣化で停止→クロス運転で乗り切って地球帰還。

 ということで、満身創痍としか言いようのない状態で、よくぞ小惑星のサンプルを拾って帰ってきたものです。

探査の本番「はやぶさ2」
 小惑星探査機とよばれる「はやぶさ」ですが、もともとは工学実験衛星として打ち上げられました。小惑星へ行って帰ってくる技術の取得が目的であり、失敗もまた貴重な経験値であったと言えます。

 「はやぶさ2」は今度こそ正真正銘、小惑星を探査する目的で作られた小惑星探査機です。
 「はやぶさ」で出来たことは当たり前に成し遂げて、科学的成果を上げねばなりません。
# たった一度出来ただけのことを「当たり前」にするのは実は大変なのですが……

 とにかく「はやぶさ2」は、これまでのところ大きなトラブルもなく目的地に到着しました。
 先代のトラブルのうち太陽フレアは避けられるものではありませんが、リアクションホイールは故障の原因も突き止められ、今回は数も増やして搭載され、無事に動作しています。
 無事に目的地に着いたことで、まずは第1段階のクリアです。

 すでにリュウグウの写真は何枚も公開されていますが、またしても面白い形をしています。ちまたではスター・ウォーズに登場する宇宙要塞「デス・スター」とも、機動戦士ガンダムに登場する宇宙要塞「ソロモン」とも言われています。
 人類未踏の地に足を踏み入れるワクワク感は、すでに始まっています。

 願わくば先代以上に充実した探査を。
 個人的には先代のなし得なかったローバーの降下成功と、サンプル採取が「大漁」となりますよう。
 もちろんインパクタの成功も楽しみです。

 熱い熱い探査の季節が幕を開けました。
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2018年06月03日

金井宣茂宇宙飛行士帰還

 6月3日、半年弱の国際宇宙ステーションの長期滞在を終えた金井宇宙飛行士が帰還しました。
 新快速の電車の中でスマホでネット中継を見ていました。少しくすんだ空に大きく広がる紅白縞のパラシュート。着地の瞬間は丘の向こうでしたが、ほどなく中継でも着地成功の一報。少し時間を開けて帰還カプセルから助け出される金井さんの映像も届きました。

 写真は2009年の野口さん以降の、日本人宇宙飛行士登場中のISSです。
 若田さんの日本人最初の長期滞在だけは写真がないのですが、この時はまだ一眼デジカメを持っていなくて、ISSの写真も気が向いたときにコンデジで撮る程度でした。野口さん・山崎さんのフライトもコンデジの写真です。

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2018年06月01日

各国の月・惑星探査状況(2018年版)

水星 金星 火星 小惑星 彗星 木星 土星 天王星 海王星 冥王星
フライバイ
(通過)





衝突
突入体


周回軌道
近傍探査




軟着陸

衛星タイタン※1
ローバー
(探査車)

サンプルリターン ※2
有人探査

※1 ESAのタイタン着陸機「ホイヘンス」は、NASA/ESAの土星探査機「カッシーニ」の相乗り。
※2 NASAの彗星探査機「スターダスト」は彗星の尾からサンプルを採取。

 ここで各国の月・惑星探査状況をまとめてみました。以前、JAXAの川口淳一郎教授の講演会でこのような表を見せていただいたことがあるのですが、改めて作り直してみました。ソースはWikipediaの宇宙探査機の一覧です。

 表をシンプルにするために、(1)国際協力プロジェクトは打ち上げ国で表示(NASA/ESAの「カッシーニ」は米国など)、(2)ヨーロッパ各国はひとまとめにESA、(3)衝突は制御落下も含む、(4)意図しない結果も含む(火星軌道投入を目指したのぞみのフライバイなど)、で作成しています。

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2017年01月15日

ファルコン9 30号機 & SS-520 4号機

 スペースX社の衛星打ち上げロケット、ファルコン9の30号機がヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げられました。2016年9月にケープカナベラルの射点で試験中に爆発事故を起こしてから4ヶ月目の打ち上げ再開。遠い昔の出来事のようですが、4ヶ月しか経っていないことにびっくり。打ち上げは成功し、第1段の洋上での台船を用いた回収も成功しました。
 今回はロケットに搭載したオンボードカメラで着船までの中継に成功。実はファルコン9の第1段の着船をライブで見たのは初めてで、これは興奮しました。

 JAXAの観測ロケットSS-520を用いた超小型衛星打ち上げ実験は残念ながら失敗。
 2段ロケットのSS-520のペイロード(荷物)に軌道投入のための第3段と超小型衛星を搭載して衛星軌道に投入する予定でしたが、第1段の飛翔時にロケットからの通信が途絶え、第2段以降の飛行を中止しました。
# ロケットの状態が把握できないまま飛ばすのは安全上許されないため。

 これについてはsorae.jpの大貫さんの記事が分かりやすいです。
JAXA超小型ロケット「SS-520」、衛星軌道投入に失敗【解説あり】(sorae.jp)
posted by ふくだ at 23:45| Comment(0) | 宇宙開発/宇宙科学