2019年09月01日

中和神社(岡山県真庭市)

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 中和神社は岡山県真庭市、鳥取県との県境もそう遠くない山あいにあります。祭神は久那度神で牛馬の守護神。
20190901tsuyama-chuka-ningyo077.jpg もともとは村の名を関した神社で、この地は平成の大合併前は「中和村」でした。読み方は「ちゅうか」。この中和も明治の町村合併の際に生まれた地名で、神社は旧下和村にあたる「下和」地区にあります。
 旧中和村内には「初和」という大字もありますが、「和」が付く地名が並びながらも、読み方は初和=はつわ、中和=ちゅうか、下和=したお、と三者三様。どうしてこうなった。

 中和神社は小惑星探査機「はやぶさ」に縁のある神社として宇宙ファンに知られています。
 満身創痍で地球へ向かっていたはやぶさは、2009年11月、地球帰還まであと7ヶ月というところで当初の想定期間を超えて動き続けたイオンエンジンが停止します。原因は噴射したガスを電気的に中和するために電子を噴射する「中和器」の劣化。
 この時は生き残った中和器とイオン源を組み合わせる運用で一台分のエンジンの出力を得て、地球帰還への加速を再開できたのですが、いずれにせよ綱渡りの運用が続きます。

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 そこでプロジェクトマネージャーの川口淳一郎教授が参拝したのが「中和」つながりの「中和神社」。勝手ながら神頼みには縁のなさそうな方という印象を持っていたので、話を聞いたときには驚きましたが、「人事を尽くして天命を待つ」を地で行くのだなと思ったものです。

 それからはや10年。

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 社殿は中和小学校の一角にあり、鳥居と拝殿の間が学校の校庭になっている面白い空間。昔からの集落の中心の場所だったのでしょう。
 拝殿は瀟洒な造りで、石造りの鳥居といい、手水舎といい、よく手入れがなされていて、周囲に馴染んだ風景ながら、凛とした雰囲気が漂っています。

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 とにかく目を引くのは拝殿の後ろに立つ大きな杉。遠目にも目立つので、車を運転していても「あそこが中和神社か」と分かるほどでした。もしかすると、この杉をご神木として祀ったのが神社の起源の一つかもしれません。

 現在は後継機の「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの探査を続けていて、今冬にも地球へ向けて出発します。帰路もイオンエンジンを噴射しながらの旅路となるので、道中安全と航行の無事をお祈りしました。
 2020年冬、オーストラリア・ウーメラの空にカプセルが舞い降りるまで1年半を切っています。

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2019年07月11日

はやぶさは二度舞い降りた

 小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウへの二度目のサンプル採取に挑み、成功しました。
 おめでとうございます!
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2018年06月27日

はやぶさ2、小惑星リュウグウに到着

 小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに到着しました。
 到着といっても着陸したわけではなく、リュウグウの上空20kmの地点。まずはここから探査が始まります。

トラブルまみれの先代「はやぶさ」
 大成功した先代の「はやぶさ」ですが、実際は幾多のトラブルを抱えていました。
 目的地の小惑星イトカワに着くまでに、
・太陽電池が太陽フレアの影響で劣化。発電量が低下し、イオンエンジンの出力も落ち、小惑星到着が遅れる。
・探査機の姿勢を制御するリアクションホイールが3つのうち1つ故障。化学スラスタを併用しての姿勢制御を強いられる。

 イトカワに着いてからも、
・リアクションホイールがもう一つ故障。
・ローバー「ミネルバ」の小惑星到達に失敗。
・最初のタッチダウンは「不時着」。
・二度目のタッチダウン時にサンプラーの弾丸発射失敗→採取サンプルが少量にとどまる。
・二度目のタッチダウン後に化学スラスタ全損、燃料漏洩→姿勢制御しきれず通信途絶。

 帰還運用時に
・イオンエンジン劣化で停止→クロス運転で乗り切って地球帰還。

 ということで、満身創痍としか言いようのない状態で、よくぞ小惑星のサンプルを拾って帰ってきたものです。

探査の本番「はやぶさ2」
 小惑星探査機とよばれる「はやぶさ」ですが、もともとは工学実験衛星として打ち上げられました。小惑星へ行って帰ってくる技術の取得が目的であり、失敗もまた貴重な経験値であったと言えます。

 「はやぶさ2」は今度こそ正真正銘、小惑星を探査する目的で作られた小惑星探査機です。
 「はやぶさ」で出来たことは当たり前に成し遂げて、科学的成果を上げねばなりません。
# たった一度出来ただけのことを「当たり前」にするのは実は大変なのですが……

 とにかく「はやぶさ2」は、これまでのところ大きなトラブルもなく目的地に到着しました。
 先代のトラブルのうち太陽フレアは避けられるものではありませんが、リアクションホイールは故障の原因も突き止められ、今回は数も増やして搭載され、無事に動作しています。
 無事に目的地に着いたことで、まずは第1段階のクリアです。

 すでにリュウグウの写真は何枚も公開されていますが、またしても面白い形をしています。ちまたではスター・ウォーズに登場する宇宙要塞「デス・スター」とも、機動戦士ガンダムに登場する宇宙要塞「ソロモン」とも言われています。
 人類未踏の地に足を踏み入れるワクワク感は、すでに始まっています。

 願わくば先代以上に充実した探査を。
 個人的には先代のなし得なかったローバーの降下成功と、サンプル採取が「大漁」となりますよう。
 もちろんインパクタの成功も楽しみです。

 熱い熱い探査の季節が幕を開けました。
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2018年06月03日

金井宣茂宇宙飛行士帰還

 6月3日、半年弱の国際宇宙ステーションの長期滞在を終えた金井宇宙飛行士が帰還しました。
 新快速の電車の中でスマホでネット中継を見ていました。少しくすんだ空に大きく広がる紅白縞のパラシュート。着地の瞬間は丘の向こうでしたが、ほどなく中継でも着地成功の一報。少し時間を開けて帰還カプセルから助け出される金井さんの映像も届きました。

 写真は2009年の野口さん以降の、日本人宇宙飛行士登場中のISSです。
 若田さんの日本人最初の長期滞在だけは写真がないのですが、この時はまだ一眼デジカメを持っていなくて、ISSの写真も気が向いたときにコンデジで撮る程度でした。野口さん・山崎さんのフライトもコンデジの写真です。

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2018年06月01日

各国の月・惑星探査状況(2018年版)

水星 金星 火星 小惑星 彗星 木星 土星 天王星 海王星 冥王星
フライバイ
(通過)





衝突
突入体


周回軌道
近傍探査




軟着陸

衛星タイタン※1
ローバー
(探査車)

サンプルリターン ※2
有人探査

※1 ESAのタイタン着陸機「ホイヘンス」は、NASA/ESAの土星探査機「カッシーニ」の相乗り。
※2 NASAの彗星探査機「スターダスト」は彗星の尾からサンプルを採取。

 ここで各国の月・惑星探査状況をまとめてみました。以前、JAXAの川口淳一郎教授の講演会でこのような表を見せていただいたことがあるのですが、改めて作り直してみました。ソースはWikipediaの宇宙探査機の一覧です。

 表をシンプルにするために、(1)国際協力プロジェクトは打ち上げ国で表示(NASA/ESAの「カッシーニ」は米国など)、(2)ヨーロッパ各国はひとまとめにESA、(3)衝突は制御落下も含む、(4)意図しない結果も含む(火星軌道投入を目指したのぞみのフライバイなど)、で作成しています。

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2017年01月15日

ファルコン9 30号機 & SS-520 4号機

 スペースX社の衛星打ち上げロケット、ファルコン9の30号機がヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げられました。2016年9月にケープカナベラルの射点で試験中に爆発事故を起こしてから4ヶ月目の打ち上げ再開。遠い昔の出来事のようですが、4ヶ月しか経っていないことにびっくり。打ち上げは成功し、第1段の洋上での台船を用いた回収も成功しました。
 今回はロケットに搭載したオンボードカメラで着船までの中継に成功。実はファルコン9の第1段の着船をライブで見たのは初めてで、これは興奮しました。

 JAXAの観測ロケットSS-520を用いた超小型衛星打ち上げ実験は残念ながら失敗。
 2段ロケットのSS-520のペイロード(荷物)に軌道投入のための第3段と超小型衛星を搭載して衛星軌道に投入する予定でしたが、第1段の飛翔時にロケットからの通信が途絶え、第2段以降の飛行を中止しました。
# ロケットの状態が把握できないまま飛ばすのは安全上許されないため。

 これについてはsorae.jpの大貫さんの記事が分かりやすいです。
JAXA超小型ロケット「SS-520」、衛星軌道投入に失敗【解説あり】(sorae.jp)
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2016年07月07日

大西卓哉宇宙飛行士、宇宙へ

 JAXAの大西卓哉宇宙飛行士が国際宇宙ステーションへむけて旅立ちました。

 大西さんが搭乗したのはロシアのソユーズMS宇宙船。ソユーズ宇宙船の最新バージョンの初号機です。
 ソユーズ宇宙船は1967年に1号機が打ち上げられ(49年前!)、改良を加えながら現在に至るまで使用されています。
# ロケットは1957年のスプートニク1号以来、基本設計が同じものだったりします(もちろん随時改良)。

・ソユーズ(1967〜1981) 1〜50号 有人月飛行を目指して開発するも、地球周回軌道で運用。
・ソユーズT(1979〜1986)1〜15号 長期ミッション対応用に太陽電池大型化など。
・ソユーズTM(1986〜2002)1〜34号 ミールおよび国際宇宙ステーション(ISS)との往還を目的としたソユーズ。
・ソユーズTMA(2002〜2011)1〜22号 ISSとの往還用に設計変更。搭乗員の体格基準緩和。
・ソユーズTMA-M(2010〜2016)1〜20号 内部搭載機器をデジタル化。ペイロード増強。
・ソユーズMS(2016)1号〜 ドッキング装置や通信システムなどを改良。

 単純計算で142機ですが、中には無人テスト飛行もあり、初期には通し番号以外のテスト飛行もあったりします。
 1967年のソユーズ1号と1971年のソユーズ11号で人命喪失に繋がる事故を起こしていますが、その後はまずます安定した運用が行われ、事故はあっても切り抜け、信頼性の高い宇宙船と評価されています。

 と個人的な興味で宇宙船の話ばかり書いてしまいましたが、大西さんのミッションはこちらです。

大西卓哉宇宙飛行士>長期滞在概要(JAXA)
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2016年04月10日

国土交通省大阪航空局神戸航空衛星センター

 神戸市西区にある国土交通省大阪航空局神戸航空衛星センターのパラボラアンテナを見学してきました。
 神戸航空衛星センターは運輸多目的衛星「ひまわり6号(MTSAT-1R)」「ひまわり7号(MTSAT-2)」の運用に使われてきた施設です。

 「ひまわり」といえば気象衛星を思い浮かべますが、6号と7号は気象観測機器と航空管制機器を相乗りさせた衛星で(それゆえ気象衛星ではなく運輸多目的衛星)、神戸航空衛星センターでは航空管制ミッションの運用を行っています。
# 気象観測ミッションの地上局は埼玉県の鳩山町にあります。

 神戸航空衛星センターは1999年4月に発足しましたが、最初の仕事相手となるはずだった運輸多目的衛星1号(MTSAT-1)が同年11月に打ち上げ失敗。代替機の運輸多目的衛星新1号(MTSAT-1)、愛称「ひまわり6号」が2005年に打ち上げられるまで、ひたすら訓練の日々だったそうです。

 最寄り駅は神戸市営地下鉄の西神南駅。休日日中は30分に1本ほど、付近を通るバスがありますが、歩いても20〜30分ほど。
 近所にある施設なのに今まで行ったことがなかったのは、手軽というには微妙な距離感ゆえ。今回は明石の星の友の会の宇宙機ファン・@kittenblue0706さんと「関西には珍しい宇宙関連施設なので行ってみましょうか」と、何かの話のついでに思い立った次第。

 駅に着いたところで市バスがいたのですが、目的地を確認する間もなく出発されてしまいます。運転士さんに「パラボラアンテナ行きますか」と聞くわけにもいかず、付近の名のある施設を尋ねればよかったんですけれども、そこまでの下調べもなく。
 仕方がないので住宅地の中をえんえん歩きます。程よい季節でよかった。

 いぶきの森公園から室谷新池(室谷ダム)越しにパラボラアンテナを見ることが出来ます。
# いぶきの森はヴィッセル神戸の練習場でも知られていますが、公園の反対側の端なので注意!

 池の外周を回ると神戸航空衛星センターの敷地外周を回る道路(歩行者のみ通行可)に出ることができ、3機のパラボラアンテナを近くで見ることができます。
 施設の性格上、周囲には柵が張り巡らされ、監視カメラが柵沿いに何台も設置されていますが、こちらは周りから眺めるだけですから。

 3基のパラボラアンテナのうち、いちばん東側のものが、Sバンド(2〜4GHz)用。
 このアンテナだけ副鏡ステーが4本で、他の2基は副鏡ステーが3本と、正面から見てもつくりの違いに気づきます。
 裏面に回ると駆動系がとくに小ぶりなことに驚きます。通信相手が静止衛星なので大きな動きをする必要がないためです。拡大写真を見るとジャッキでEL軸(仰角方向)を動かす構造なのが分かります。

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2016年02月21日

日本の人工衛星のシリーズ名(前編)

 先日打ち上げられたX線天文衛星は、「ASTRO-H」の英語略称で呼ばれてきましたが、打ち上げ後に「ひとみ」という愛称がつけられました。似た目的の衛星では共通の英語略称が使われてシリーズ化しています。今回はその紹介。原則として、2機以上打ち上げが行われたものと、シリーズ化を想定していたと思われるものを掲載しています。

ASTROシリーズ(天文衛星)

英語略称 愛称 目的 質量 打ち上げ日 ロケット
ASTRO-A ひのとり 太陽観測衛星 188kg 1981.2.21 M-3S
ASTRO-B てんま X線天文衛星 216kg 1983.2.20 M-3S
ASTRO-C ぎんが X線天文衛星 420kg 1987.2.5 M-3SII
ASTRO-D あすか X線天文衛星 420kg 1993.2.20 M-3SII
ASTRO-E [打上失敗] X線天文衛星 1600kg 2000.2.10 M-V
ASTRO-EII すざく X線天文衛星 1700kg 2005.7.10 M-V
ASTRO-F あかり 赤外線天文衛星 952kg 2006.2.22 M-V
ASTRO-G [計画中止] 電波天文衛星 1.2t
ASTRO-H ひとみ X線天文衛星 2.7t 2016.2.17 H-IIA

 「Astronomy Satelite」。直訳するとそのまま天文衛星。再打ち上げした「E」の重複を除くと、AからHの8機のうち、実に5機がX線観測衛星で、太陽観測衛星の「ASTRO-A『ひのとり』」もX線観測が主目的です。X線は大気に遮られて地上に届かないため、天体からのX線を観測するには宇宙空間に出る必要があり、このための衛星が古くから日本の得意分野でした。ロケットが大きくなるのに合わせて、衛星も大型化しているのが分かります。次に計画されている天文衛星は「ASTRO-F『あかり』」の後継となる赤外線望遠鏡「SPICA」で2027-28年度にHIIIロケットでの打ち上げという、先の長い計画です。

CORSA(X線天文衛星)

英語略称 愛称 目的 質量 打ち上げ日 ロケット
CORSA [打上失敗] X線天文衛星 96kg 1976.2.4 M-3C
CORSA-b はくちょう X線天文衛星 96kg 1979.2.21 M-3C

 「Cosmic Radiation Satelite」で、直訳すると「宇宙線衛星」となります。失敗して代替機を上げましたが、この頃の衛星は1機ごとに名前をつけていたので、シリーズとするにはちょっと微妙。

 世界初のX線天文衛星はNASAが1970年に上げた「ウフル」で、日本の小田稔が開発した「すだれコリメーター」を搭載して成果を上げました。その後、日本は独自のX線観測衛星を開発・運用するようになり、「CORSA」を経て「ASTRO」シリーズに繋がっていきます。

SOLARシリーズ(太陽観測衛星)

英語略称 愛称 目的 質量 打ち上げ日 ロケット
SOLAR-A ようこう 太陽観測衛星 390kg 1991.8.30 M-3SII
SOLAR-B ひので 太陽観測衛星 900kg 2006.9.23 M-V

 「Solar Physics Satelite」直訳すると「太陽物理学衛星」となります。太陽観測衛星としては「ASTRO-A『ひのとり』」がありますが、後継機は新しいシリーズになりました。「ようこう」は10年間に渡って観測を続けたご長寿衛星。現在運用中の「すざく」も2016年で運用10年目を迎えます。後継の「SOLAR-C」「SOLAR-D」ミッションの検討も始まっています。

LUNARシリーズ(月探査機)

英語略称 愛称 目的 質量 打ち上げ日 ロケット
LUNAR-A [計画中止] 月探査機 540kg M-V

 日本初の月探査ミッションとなる予定だった計画。衛星本体は完成したのですが、計画の主要部である月面に撃ちこむ地震計の開発に手間取り、中止のやむなきに至りました。日本の月探査はその後、2007年に「SELENE『かぐや』」が打ち上げられています。「A」があるなら「B」以降も計画するつもりだったと思うのですが、現在のところ後継機はありません。

PLANETシリーズ(惑星探査機)

英語略称 愛称 目的 質量 打ち上げ日 ロケット
PLANET-A すいせい ハレー彗星探査機 140kg 1985.8.19 M-3SII
PLANET-B のぞみ 火星探査機 540kg 1998.7.4 M-V
PLANET-C あかつき 金星探査機 518kg 2010.5.21 H-IIA

 地球圏の外に出る惑星探査機は「PLANET」の名称です。「PLANET-B『のぞみ』」は数々のトラブルの末に火星周回軌道投入を断念、「PLANET-C『あかつき』」も当初の予定での金星周回軌道投入に失敗し、5年後の再挑戦でようやく成功するなど、惑星探査という新しい地平に乗り込む産みの苦しみを味わっています。

 「はやぶさ2」もここに入りそうですが、計画段階から「HAYABUSA2」で、そのまま愛称も「はやぶさ2」になりました。他に欧州と合同の水星探査機ベピ・コロンボ計画(2016年度に欧州のアリアン5ロケットで打ち上げ予定)がありますが、PLANETシリーズには入っていません。そしてその次の計画は……どうするのでしょう。

EXOSシリーズ

英語略称 愛称 目的 質量 打ち上げ日 ロケット
EXOS-A きょっこう オーロラ観測衛星 126kg 1978.2.4 M-3H
EXOS-B じきけん 磁気圏観測衛星 90kg 1978.9.16 M-3H
EXOS-C おおぞら 中層大気観測衛星 207kg 1984.2.14 M-3S
EXOS-D あけぼの 磁気圏観測衛星 295kg 1989.2.22 M-3SII

 「Exospheric Satelite」。"exosphere"は「外気圏」で大気圏の最も外側の高度800〜約10,000kmの層。一般的には宇宙空間に当たる領域です。宇宙と地球の影響が相互にせめぎあう領域で、その観測を行う衛星のシリーズです。「EXOS-D『あけぼの』」は26年間も運用を続けた日本屈指のご長寿衛星。磁気圏観測衛星では1992年にNASAと共同開発・運用している「ジオテイル」(1992年に米のデルタIIロケットで打ち上げ)が現在も稼働中で、次のジオスペース探査衛星「ERG」が2016年打ち上げ(イプシロンロケット使用)を目指して開発中。「EXOS」の名称はもう使わないかもしれません。

MS-Fシリーズ(科学衛星)

英語略称 愛称 目的 質量 打ち上げ日 ロケット
MS-F1 [打上失敗] 科学衛星 66kg 1970.9.25 M-4S
MS-F2 しんせい 科学衛星 66kg 1971.9.28 M-4S

 MS-Fは「Mu Satellite -F(Flight model)」で、ミューロケットで打ち上げる衛星の意。日本初の人工衛星「おおすみ」の成功の次に、新型ロケット「M-4S」で打ち上げられたのが科学衛星「MS-F1」ですが、ロケット側が失敗。このあとミューロケットの新型には試験衛星の「MS-T」シリーズが積まれることになります。「MS-T1『たんせい』」の成功を受けて、改めて「MS-F2『しんせい』」が打ち上げられました。この後の科学衛星はそれぞれに名称が付けられたため、「MS-F」シリーズは実質1機で打ち止めとなります。

MS-Tシリーズ(試験衛星)

英語略称 愛称 目的 質量 打ち上げ日 ロケット
MS-T1 たんせい 試験衛星 63kg 1971.2.16 M-4S
MS-T2 たんせい2号 試験衛星 56kg 1974.2.16 M-3C
MS-T3 たんせい3号 試験衛星 129kg 1977.2.19 M-3H
MS-T4 たんせい4号 試験衛星 185kg 1980.2.17 M-3S
MS-T5 さきがけ ハレー彗星探査試験機 138kg 1985.1.8 M-3SII

 MS-Tは「Mu Satellite -T(Test model)」で、ミューロケットで打ち上げる試験衛星の意。ミューロケットの新型機が開発される度に、性能試験を兼ねて打ち上げられたもの。1号機が失敗したM-4Sの2号機と、M-3CからM-3SIIまでの1号機に積まれたのは全てMS-Tです。中でも「MS-T5『さきがけ』」は「PLANET-A『すいせい』」と姉妹機で、日本初の人工惑星となり、ともにハレー彗星探査で成果を上げました。

MUSESシリーズ(工学実験衛星)

英語略称 愛称 目的 質量 打ち上げ日 ロケット
MUSES-A ひてん 工学実験衛星 197kg 1990.1.24 M-3SII
MUSES-B はるか 電波天文観測衛星 830kg 1997.2.12 M-V
MUSES-C はやぶさ 小惑星探査機 510kg 2003.5.9 M-V

 MUSESは「Mu Space Engineering Satellite」で、ミューロケットで打ち上げる宇宙工学衛星の意で知恵の女神のミューゼスをかけています。「MUSES-A『ひてん』」ではスイングバイ飛行技術を獲得し、その後の惑星探査機の運用に活かされています。「MUSES-B『はるか』」は宇宙電波望遠鏡で、地上の電波望遠鏡と協調して巨大な干渉計を構築、高分解能の天体観測を行いました。この成果を活かすのが「ASTRO-G」でしたが、電波望遠鏡の鏡面精度が確保できずに中止となりました。「MUSES-C『はやぶさ』」はトラブルを乗り越えて小惑星からのサンプルリターンを成功させましたが、実は試験衛星の位置付けで、現在進行中の「HAYABUSA2『はやぶさ2』」こそが本番の小惑星探査機です。

 表には上げていませんが、ソーラーセイル実験衛星「IKAROS」はもともと「MUSES-D」として計画されていました。「ASTRO-G」との競争で道を譲ったのですが、「PLANET-C『あかつき』」の副衛星として急遽、計画を組み直されて、大成功を収めました。衛星万事塞翁が馬。M-Vが廃止された後、後継ロケットは「イプシロン」となったので、「ミュー」を冠した「MS-T」も「MUSES」も使わない名前になるかと思います。

SPRINTシリーズ(小型科学衛星)

英語略称 愛称 目的 質量 打ち上げ日 ロケット
SPRINT-A ひさき 惑星分光観測衛星 335kg 2013.9.14 イプシロン
SPRINT-B/ERG [計画中] ジオスペース探査衛星 350kg イプシロン

 SPRINTは「Small scientific satellite Platform for Rapid Investigation and Test」で、直訳すると、迅速な調査・試験のための小型科学衛星プラットフォーム(基盤)となります。ロケットの性能向上とともに衛星も大型化して多くの観測機器を積めるようになったのですが、反面、開発に時間がかかり、打ち上げ頻度が減り、失敗を避けるためにも最新の技術を投入しにくくなってきました。以前に比べると小型の観測機器でも成果を上げることが可能になってきたため、小型の衛星構体を用いて、低コストで高頻度に目的を絞ったミッションの衛星を打ち上げていくものです。

 イプシロンロケットの1号機で打ち上げられた「SPRINT-A『ひさき』」が最初で、現在はジオスペース探査衛星「SPRINT-B/ERG」の準備が進んでいます。最近は公式パンフレットでも「SPRINT-B」が消えて「ERG」の名称が表に出ているので、このシリーズ名もどうなることやら。

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2016年02月17日

ASTRO-H「ひとみ」打ち上げ成功

 まずは無事の打ち上げ、おめでとうございます。
 夕方の打ち上げで、遠くは関東でも上昇するH-IIAの姿を見ることができたようです(今回に関しては、東日本のほうが日没が早いぶん背景の空が暗くなって有利)。また一周した時に恐らく第二段からの残存燃料の排出と思われるガス雲も観測されています。

 私は両方見逃しました(打ち上げは仕事中、一周時は電車の中)。残念ですが仕方ありません。

 夜に見たNHKのニュースでは、SRB-A分離時にSRB-Aの形まで分かる鮮明さ。JAXAのYouTube動画ではフェアリングの分離まで見えています。これは素晴らしい好条件。

 「ひとみ」と名付けられたASTRO-H衛星も太陽電池パドルの展開までは成功した旨、発表されています。人工衛星は電気がないと動かないので、まずは第一関門突破。このあと順次、観測機器を立ち上げて試験して、本観測に入っていきます。むしろ本番はこれからです。

 歴代のX線天文衛星は、「はくちょう」「てんま」「ぎんが」「あすか」「すざく」と、空にちなんだもの、特に鳥に関わる名前が多かったので、「ひとみ」という愛称は意外でした。
 実は東大中須賀研究室で開発した超小型人工衛星PRISMに「ひとみ」の愛称が使われていて、わざわざ被る名前を持ってきたか、という感じ。先方の了解は得ているそうですが、そこまでして名付けるからには相当な思い入れをお持ちなでしょう。
 最近は大学で開発した超小型人工衛星もどんどん上がっているので、このように使いやすい名前が重なるケースも珍しくなくなるのかもしれません。それだけ宇宙空間の利用が身近になりつつあるということかも。
# 仙台市天文台の1.3m望遠鏡の愛称も「ひとみ」だそうです。
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