2019年04月25日

「大徳寺龍光院 国宝 曜変天目と破草鞋」展(MIHO MUSEUM)

 MIHO MUSEUMは滋賀県甲賀市信楽町にある博物館です。
 今回は京都・大徳寺龍光院に伝えられた茶道具や文物、什物を公開する特別展とのことで足を伸ばしました。

 龍光院は黒田長政が父の黒田如水(官兵衛)の菩提を弔うために建立した塔頭。堺の茶人・津田宗及の子の江月宗玩が二代目となった縁もあり、桃山時代を象徴するような文物を多く所蔵しています。

 特別展のタイトルにもなっている国宝曜変天目。国宝の曜変天目茶碗は国内に3点ありますが、2点は美術館の収蔵品で、常時ではありませんが見学できる機会は比較的多くあります。残る一つの大徳寺龍光院の所蔵品は、2017年に京都国立博物館の国宝展、その前は2000年に東京国立博物館で公開されて以来という頻度。

 写真だと地味にも見える龍光院の曜変天目、覗き込んだら蒼く煌めく分子雲から垣間見る銀河団のよう。色合いが繊細なので、じっくり見るほど淡い色が見えてきます。
 できれば短距離にピントの合う双眼鏡や単眼鏡を持っていくのがおすすめ。黒地に浮かぶ淡い色合いをより楽しめます。
 平日とあって待機列がない時間帯もあり、存分に拝見いたしました。

 曜変天目茶碗の次の部屋にある油滴天目茶碗(重文)もすばらしいものでした。椀の内と外に一面に銀の斑紋が広がり、さながら球状星団の中心部を取り出したようです。

 私は工芸品ばかり目が行くのですが、展示全体は書画から日記まで万遍なく、龍光院の全てを紹介しようと言わんばかりの構成でした。展示の最後は今日の龍光院ということで、観光を謝絶している塔頭ながら世間とのつながりと断っているわけでなく、お寺の行事など市井の人々とともにある姿も紹介されていました。

 そんな中で座禅の看板を見たので、参加してみようと思いました。
 座禅は敷居が高い印象があるのですが、基本はシンプル。呼吸を整え、「心は浮かぶものを拒まず、消えていくものを追わず、自然体で」とのこと。正直なところ日常の雑多なことばかり心に浮かんできます。
 講師の龍光院の小堀月浦和尚は他人を思いやる心を培ってもらいたいということを仰られていましたが、なかなかそこまでも思いがいたらぬのが正直なところ。けれども心を鎮め、自己と向き合う時間を持つことは、時代や宗教を超えて、人がいかに生きるかという課題へ向き合うことに通じるのだと思います。

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2019年04月17日

藤田美術館展(奈良国立博物館)

 奈良国立博物館の藤田美術館展へ行ってきました。お目当ては曜変天目茶碗です。

 お椀の中は星間分子雲がきらめいているというか、銀河の淵を覗き込んでいるというか、ただただ引き込まれそうになり、事象の地平面の縁から舞い戻ってきた気分です。

 窯の中の化学反応の偶然と必然が折り重なってできた模様なので、双眼鏡で拡大して見ても揺らめく光彩の鮮やかさは増すばかり。

 外側は淡くしか光を当てていないので、外周の窯変はおぼろげに存在が分かる程度。でも椀の内側には直上から光が当てられ、繊細で鮮やかな模様をしっかり味わうことが出来ます。

 平日とあってか混雑はさほどでもなく、入館待ちなし。曜変天目茶碗は特別に展示室を仕立ててあり、部屋の中央にガラスケースに納めて四方から見ることができます。ケースはロープで囲われ、その中の最前列で見るための待機列があるのですが、それも長くて5分ほど。つまりは余裕でじっくり堪能できました。

 ロープの囲いの後方からなら待機列に並ばなくても見られるのですが、茶碗の内側を見るには最前列から見るほかありません。とはいえ空いていたので6回並び直して見てきました。

 曜変天目ばかりに注目が集まっている感ですが、他の出展物も密度が濃く、なんだかんだと2時間ほど見ていました。さくっと見るなら1時間から1時間半くらいで十分だと思います。

 思いの他に時間を費やしてしまったので、このあとは東大寺だけ回って戒壇堂の四天王像を参拝して帰ってきました。
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2018年11月08日

宝塚市立手塚治虫記念館

 2018年11月3日は漫画家・手塚治虫の90回目の誕生日だったそうです。
 というのをたまたまラジオで聞いて、久しぶりに手塚治虫記念館を訪問しました。

 手塚治虫は1989年に60歳で亡くなっています。
 私自身が子どもだった当時はさほど感じなかったことですが、60歳といえば還暦ではありますが、多くの人が元気に過ごしていますし、働いている方も多い年代。早くに亡くなられたのだなあと改めて思います。

 手塚作品で読んだのは「火の鳥」「ブッダ」「アドルフに告ぐ」「きりひと讃歌」「陽だまりの樹」あたりで、アニメではカラー版の「鉄腕アトム」くらい。子ども時代の私にとっては少し難しい漫画を書く巨匠という印象で、小学生の頃は藤子不二雄のアニメ・漫画で育ちました。
 手塚治虫のアニメだとカラー版の「鉄腕アトム」。「地上最大のロボット」のエピソードは強く印象に残っていまつ。漫画の方は高校生になってからで、上記の作品は主に市の公民館の図書室にあるのを読みました。学習まんがを別にすれば、図書室に置かれる漫画の位置づけになっていたのですね。

 記念館はそれほど大きな建物ではなく、1階が手塚治虫の生い立ちを追う常設展、2階が企画展用のスペースになっています。訪問時はフランスで手塚治虫を紹介した展示の里帰り展的な特別展をやっていて、海外視点での手塚治虫の紹介が、ちょうど「手塚治虫概論」というべき展示構成になっていて、彼が取り組んだテーマや作風の変遷を追うのに絶好の内容になっていました。
 「OSAMU TEZUKA MANGA NO KAMISAMA」というタイトルですが、「漫画の神様」をそのままキリスト教文化圏で使うわけにも行かないようで、「漫画の守護聖人というべきだろうか」というイントロダクションの解説が文化的な差異を感じてみたり。展示のキャプションはフランスで書かれたものを日本に逆輸入したものですが、こちらは全く違和感がないのが面白かったです。

 2階の一角に手塚作品読み放題のコーナーがあって、時間をいくらでも吸い取られるので極めて危険です。次の目的地に向かうのに予定の電車に乗り遅れました(現着は間に合いましたけど)。
 ここで一日過ごしても良いかもしれません。

 なお手塚治虫記念館は2019年1〜3月は休館とのこと。空調機器の更新及び展示内容のリニューアルとのことですが、確かに展示内容は多くが開館当初のままのようで、そろそろ手を入れてもよい時期なのかもしれません。逆に現在の展示を見るなら年内がチャンスということになります。
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2018年10月30日

第70回正倉院展(2018年度)

 奈良の秋の風物詩、正倉院展。2年ぶりに見に行きました。

 午後から見学のゆっくりコース。
 今回の目玉は螺鈿細工鮮やかな「玳瑁螺鈿八角箱(たいまいらでんはっかくのはこ)」。あとは「平螺鈿背八角鏡(へいらでんはいのはっかくきょう)」「犀角如意(さいかくのにょい)」が出色でした。私が工作好きなこともあり、どうしても工芸品に興味を惹かれてしまいます。

 布製品では「錦紫綾紅臈纈絁間縫裳(にしきむらさきあやべにろうけちあしぎぬのまぬいのも)」。巻きスカートみたいな物が面白いです。
 今回は突出した大スター的出展物はなく全体的に落ち着いた印象の展示でした。

 正倉院の収蔵物の多くは収蔵時の姿をそのまま伝えているのですが、「そのまま」具合が半端でなく、布は劣化し、色は落ち、つまりは経年劣化していく状態のまま保存されています。もちろん補修されているものもあるのですが、ボロボロになったから捨てるということをしなかったのか、なんだかよく分からない姿になっているものも少なくありません。
 それを含めて今に伝えているのがすごいものだなと思います。
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2018年10月28日

印刷博物館「天文学と印刷」展

 タイトルからしてなんでやねんという組み合わせの特別展。「天文学」と「印刷」ですよ。どんな接点なんだ。
 印刷博物館の存在も今回はじめて知りました。

 と思いながら足を運んだのですが、なるほど納得。
 印刷技術の発展あってこそ、学者の考えが広く世に伝わり、またそれに触発されて学問が発展していく。
 グーテンベルクが西洋で活版印刷(活字を並べた印刷)を始めたのは1450年代で、それまで手書きで複写していた本が大量生産できるようになりました。今となってはあって当たり前の印刷物ですが、これがない時代の知識の伝播や共有がどれだけ手間隙かかるものだったのか、想像するのも困難です。

 コペルニクスが『天体の回転について』という著作で「天動説」を世に問うたのは1543年。それから一世紀に渡って続く天文学の大転回の基盤に、印刷技術があったわけです。
# 日本史だと応仁の乱が1467年、鉄砲伝来が1543年で桶狭間の戦いが1560年。

 そんなわけで天文学にまつわる古書というより稀覯本がずらりと並んだ展示。
 『天体の回転について』の初版本が並んでいる隣に、精巧なレプリカが「どうぞページをめくってください」とばかりにおいてあったり(実際に触れる)、ティコ・ブラーエやヨハネス・ケプラーやガリレオ・ガリレイの本の実物が並んでいて頭がクラクラします。

 同時に印刷側にもスポットを当てていて、ニュルンベルクが学術出版の街だったとか(『天体の回転について』もポーランドから遠く離れたニュルンベルクで印刷)、ティコは観測所に印刷室を備えていたとか、興味深い展示がいっぱい。

 質・量ともに圧倒されるような展示で、酔ったように展示室を後にしました。
 そのあとの印刷博物館の常設展示が、現世にもどるまでの酔い覚ましにちょうどいい感じ。

 なおミュージアムショップは欲しくなるものがたくさんある危険な領域でした。
 図録など私の場合あまり見返さないので買わないようにしているのですが(と思わないとうっかり買ってしまう)、ついつい連れ帰ってしまいました。あぁ。
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2018年08月04日

千葉県立関宿城博物館

 関宿城は下総国(千葉県・茨城県)と武蔵国(埼玉県)の国境にあり、利根川水系の要衝でした。戦国時代は後北条氏と古河公方・上杉氏が領有を巡って激しく争い、最終的には後北条氏の勢力圏下になります。

 現在は利根川と江戸川の分岐点となっていますが、戦国時代の利根川は江戸湾に流れていたため、北の茨城県側とは地続きでした。関東平野の真ん中にあり、関東を二分する勢力だった古河公方の前線基地でもあるため、北条氏康に「関宿城を抑えるのは一国を得るに等しい」とまで言わしめました。

 関宿城は明治以降の利根川水系の改修事業で、本丸跡の半分以上は江戸川の河川敷となり、二の丸以下の遺構のほとんどは消滅しています。
 現在の千葉県立関宿城博物館は本来の本丸跡から北側にある堤防上に天守(御三階櫓)を模して建てられたものです。1995年に建てられてから足を運ぶのは初めて。県立の博物館にしては小ぶりですが、利根川水運や河川改修の歴史などうまくまとめた展示と思いました。

 最上階からは関東平野を一望のもとに眺めることが出来ます。関西ではここまでの平原をみる機会がなく、ここで弓馬を鍛えた東国武者が一種の畏敬の念で見られた感覚が分かる気がします。
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2018年08月02日

東京国立博物館「縄文展」

 東京国立博物館の「縄文展」を見てきました。

 縄文式土器や弥生式土器はどこの地域の歴史系・郷土系の博物館に展示されているので、そんなに珍しいものでもないだろうと思いながら見たのですが、さすがに東博での展示とあって、素人目にもすごいと思うような名品がずらり。
 いや、美術的価値を私がわかっているかどうかは怪しいです。「日本史の教科書や資料集で見たことある」ものがたくさん並んでいるので「すごい」と思ったのが正確かもしれません。

 国宝指定されているものだけまとめて陳列した展示室があって、引き込まれるような気持ちで見ました。火焔式土器は直感的に「おおっ」と思う一方、土偶は「なんだろこれ」と思ってしまうのが正直なところ。

 どこの博物館にもある縄文式土器ですが、実は地域や時代を俯瞰的に見るのは初めてで、ついつい火焔式土器ばかり思い浮かべてしまうのがかなり狭い視野だったのに気づかされました。

 ついでに東博の常設展示も見てきましたが、もともと「ついで」に見て回れる質・量ではなく、ぜいたくにもサクサクと通り過ぎなら回りました。本気で回ったら丸一日吸い取られるところです。
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2018年06月03日

国友村と国友一貫斎の望遠鏡

 国友村は現在の滋賀県長浜市国友町。長浜の郊外の集落で、元は鉄砲鍛冶の町でした。
 火縄銃の産地として堺や根来と並び称されたといいますから恐るべしです。

 私が国友村を知ったのは「SKY WATCHER」という天文雑誌、現在の星ナビの前身です。
 江戸時代に天体望遠鏡を作って天体のスケッチを残した国友一貫斎という人物が紹介され、彼が鉄砲鍛冶であることと、その技量を生かして様々な発明品を作ったこと、そして望遠鏡は現在にも伝えられているということが記されていたのです。

 それはいつか見てみたいものだと思うこと幾年月。「そうだ、国友行こう」思い立ったが吉日です。

 「国友鉄砲の里資料館」があるのは知っていたので、公共交通機関のアクセスを調べて愕然。なんと休日はバスが一日3往復しかありません。しかもおすすめのバスを使った場合、現地滞在時間はわずか30分。いやいやいや、なんぼなんでも30分は短いでしょう。

 他の手段も検討したのですが、カーシェアだと最寄りのステーションがずっと手前の米原にしかなく、片道12km。微妙に中途半端な距離です。歩くには長浜駅から5km強と微妙に遠い。駅近くにレンタサイクルがあるようなので、それを借りるか。
 と思っていたのですが、佐和山城で時間を使ってしまい、結局バスのお世話になることに。

 さて国友鉄砲の里資料館。到着すると10分の解説ビデオを流してくれます。ただでさえ30分しかいられないのに、10分使うのは大変だと思ったのですが、これが国友の鍛冶の歴史をよくまとめたよい内容でした。
 しかし展示は超高速での見学。火縄銃はと光の速さですっとばし、目指すは一貫斎の望遠鏡です。

 って、あれ、キャプションの「複製」てなに、どういうこと!?
 ということは、本物はここにはないのか! 何しに来たんだ俺!

 それでも一緒に展示されている反射鏡は本物とのこと。
 当時の反射鏡は金属鏡なので、メッキではなく、直接金属を研磨して磨き上げたものです。

 一貫斎の望遠鏡は反射望遠鏡で、グレゴリー式と呼ばれるタイプ。正立像を結ぶので地上観察にも使えます。というより、それが前提だったのでしょう。

 どの程度の精度が出ていたかというと、国友一貫斎の天体観測スケッチも残しています。資料館に展示されているのは写真パネルですが、月面や太陽黒点はもちろん、金星の満ち欠けや木星の縞模様、土星の環まで克明に記録されています。

 国友一貫斎の屋敷も国友村に残っています。現在も現役の住居なので、内部の見学は不可ですが、市の設置した案内板と屋敷の外構えを見ることができます。
 また近くには一貫斎の天体観測を記念したモニュメントが建てられています。

 国友村は幾多の歴史小説やエッセイの舞台となり、司馬遼太郎や吉川英治の文学碑もあります。
 集落の端を流れるのは姉川。この上流3kmが織田・徳川連合軍と浅井・朝倉連合軍が激突した「姉川の戦い」の古戦場です。

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2018年05月03日

特別展「アニメーションにみる日本建築」(竹中大工道具館)

 竹中大工道具館の特別展「アニメーションにみる日本建築−ジブリの立体建造物展より−」を見てきました。
 もともと「ジブリの立体建造物展」として巡回展示していたもののダイジェスト版的な企画展。
 ジブリ作品の背景画やイメージボードを展示しながら、描かれた建物を解説する形で展開します。建築の専門家が解説を加えるに足るレベルで作中の建物が描かれているのですから恐れ入ります。

 展示の中ではトトロの草壁家と「千と千尋の神隠し」の油屋が大きく取り上げられていました。

 草壁家は昭和30年代設定ですが(建てたのは戦前)、私が子どもの頃だと少し古い家なら往時の雰囲気を残している建物もあって、ぎりぎり「分かる」範疇です。愛知万博時に実物大の家が建てられたりしましたが、作品の中でも主な舞台ですし、作中の世界と見る人の記憶が地続きな建物でもあり、人気があるのも分かる気がします。
 大物の展示では「となりのトトロ」の草壁家の縁側と階段の実物大模型があり、縁側は実際に腰掛けOKでした。
 縁側の屋外側に雨戸とガラス戸、内側に障子という構成は、「サザエさん」の磯野家も同じ。というか、実は私の帰省先も同じ作りです。昭和の一時期の関東ではよくある作りだったのかもしれません。
# 福田家は建築年代が新しいので雨戸とガラス戸はアルミサッシですけど。

 油屋は元の巡回展にあった大きな立体模型はなかったものの(さんけいのペーパークラフトで「トンネルの向こうの街」を再現したジオラマが展示されていました)、和洋中がごっちゃになったような不思議な建物の設定資料やイメージボードがずらりと並び、「擬洋風建築」の流れの中に位置づける解説がなされていました。

 ほかに面白かったのは「かぐや姫の物語」の寝殿造りの建物。そのままだと絵的に面白くないということで、見栄えのするようアレンジを加えてあるそうです。確かに池に突き出た釣殿がユニークなデザインだったな。

 帰りにうっかりペーパークラフトの「サツキとメイの家」を買いそうになりましたが、思いとどまりました。
# 定価だと\4,709でけっこうパワフルなお値段です。

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2018年04月08日

記念講演会「ジブリイベントプロデューサーと飛行機のプロが語る『ジブリ作品の飛行機達』」

 ジブリの大博覧会の記念講演会。
 トークショー的な雰囲気で、青木貴之氏(スタジオジブリ)を進行役に、渡辺律氏(新明和工業)、矢部俊男氏(森ビル←建築家で大の飛行機好き/大叔父は川西飛行機のエンジニア)の2人が飛行機の話をする展開ですが、矢部さんが半分以上しゃべっていたような。

 新明和工業は川西飛行機の後進で、パッカー車や立体駐車場、飛行場の搭乗橋を手がけていますが、救難飛行艇US-2の製造元でもあります。
 「紅の豚」では飛行艇や水上機が大活躍することから、「兵庫展ではぜひ新明和さんを招いてなんかやりたい」と今回の企画に至ったそう。もっとも話の中身が極端にマニアックにならないようにバランスをとるのに苦慮されたそう。

 面白かったポイントをいくつか。
 「紅の豚」のポルコとカーチスの飛行機、空中戦で有利なのはカーチス。エンジンが胴体の軸線にあるカーチスのほうが、旋回性能は優れているはず。互角の戦いになったのは、腕の差と、ポルコの飛行機は直前にエンジンを換装したのと、翼を新設計のものに変えたのが功を奏したのではないか。小型の飛行機は飛行艇から水上機に移行する時代でもあり、ちょうど両者拮抗した性能だったのだろう。

 新明和の渡辺さん、ジブリ作品の中で一番好きな飛行機は「紅の豚」のダボハゼとのこと(マンマユート団の飛行機)。あれが一番現実の飛行艇に近くて飛びそうなんだそうです。「何回かは飛べると思います」とおっしゃってましたが、何回か飛んだら壊れるんかい(苦笑)。
# 海面とはいえ時速100kmで「胴体着水」だから、毎回相当な衝撃がかかるそうです。新明和の飛行艇の特徴である波除け装置をちゃんとPRされてました。

 質疑応答から。
 ラピュタの「フラップター」は実現可能なのか。
 →ラジコンなら作って飛ばしている人がいる。でもフラップターは「昆虫」の飛び方で、あれが通用するのは15cmくらいまで。それを越えると空気の振る舞いが変わって、「鳥」の飛び方が必要になる。だから人が乗れる大きさとなると大変。フラップターは加速時にロケット(ジェット?)エンジンの噴射をしているが、あの描写は現実的。

 ハウルの動く城に出てくる羽ばたき飛行機は飛ぶのか。
 →細かいことを気にしなければ飛ぶのは飛ぶと思う。でも、この場の話を正しいとは思わないで(笑)。
# あれは魔法が使える世界の乗り物なので、科学で説明できない動力源を使ってるでいいんじゃない?

 ラピュタの「ゴリアテ」は実際に飛べるのか。
 →飛行船であれば飛ぶはず。でも宮崎監督は内部構造まで描いてないから飛行船とは断言できない。撃沈場面のセル画では飛行船っぽいけど、粗い絵なのでなんとも。

 いやみなさん、そこはアニメなんだし、いいじゃないの、嘘が混じっていても(苦笑)。
 個人的には「紅の豚」に絞って飛行艇と水上機のマニアックな話に絞ってもらっても良かったのですが、たぶん付いてこない人がほとんどになちゃうから、このくらいの加減でよかったのかもしれぬ。
posted by ふくだ at 23:46| Comment(3) | 博物館や美術館