2025年10月13日

ヤマザキマザック工作機械博物館(岐阜県美濃加茂市)

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 ヤマザキマザック工作機械博物館を見学。プラミッドのような建造物がありますが、その地下に博物館と工場があります。

 ヤマザキマザックは工作機械のメーカーで、元の名前は山崎製作所。海外進出の際に"Yamazaki"は発音しにくいということで"Mazak"のブランド名をつくり、現在はヤマザキマザックが会社名になっています。というのは見学して知りました。
 そもそもこの博物館を私が知ったのも最近で、トヨタ産業技術博物館にここのポスターが貼ってあったのを見たか、SNSでどなたかが紹介していたのを見たのだったか。

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 工作機械とはなんぞやという所からですが、金属や木材などの材料を切ったり削ったり穴を空けたり磨いたりする機械。旋盤やフライス盤などが代表的なところで、いわば機械や部品をつくるための機械。
 ボール盤くらいはもしかすると置いてあるご家庭もあるやもしれませんが、旋盤やフライス盤は一般家庭にあるものではなく(ないよね?)、多くは工場で稼働しています。
 一般消費者が目にする機会のない機械ですが、これがなくては世の中が回らない類いの製品群です。

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 旋盤そのものは人力で動かすものが古代からあるそうで、これは世界中で使われていたそうです。
 へえ、と思ったのは産業革命の話。ワットの蒸気機関の肝になるのがシリンダーとピストンですが、シリンダーの内側を削る中ぐり盤の精度が今ひとつでピストンとシリンダーの間に数cmも隙間が出来てしまう代物。ウィルキンソンが精度よく加工できる中ぐり盤をつくり、ピストンとシリンダーの隙間は数mmまでになります。
 蒸気機関が実用のものとして広まるには工作機械の精度の向上があり、蒸気機関が広まることで工業化が一挙に加速し、工作機械の精度も上がっていくのですから面白いものです。

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 平削り盤は平らな面を削り出す機械で、刃は固定したまま、材料を載せた台を前後左右に動かして削ります。
 1枚目の写真は1860年頃のアメリカの平削り盤。日本は江戸時代の末期という頃に、アメリカはこれでモノを作っていたのですから、恐るべし。
 写真2枚目は国産の平削り盤。国産の工作機械としては最古の部類で、1895年製。1枚目のアメリカの機械と35年の時間差があります。メーカーの東京国友鉄工所は、鉄砲鍛冶で知られる滋賀県の国友村から東京に出た会社。新しい分野に挑戦していくのは国友一貫斎を生んだ土地柄かもしれません。

 ここで展示されている機械の多くは、後継機が入るまで目一杯働き続け、引退して廃棄されるところを引き取って再整備したものが多いそうです。基本的には動態保存状態まで整備するそうで、機械によってはスタッフが動作を実演してくださいます。
 履歴がはっきりしているものも多く、その意味でも貴重な資料ばかりだとか。

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 人力式の工作機械の時代のものから、脚踏み式旋盤と手回し式のボール盤。ペダルを漕ぎながら手元で精密な作業をして大丈夫なのかと思うのですが、足踏み式ミシンもあったことを考えたら大丈夫なのでしょう。
 ボール盤は見ていてホッとするような機械ですが(我が家で長いこと使っていたハンドドリルと機構が似ている)、実はドリルが自動的に降りてくる機構が組み込まれています。
 いずれも1870年代のアメリカの機械。

 ちなみに私、中学校の技術科の授業でボール盤は使ったことありますが、旋盤は触ったこともない工作初心者です。日曜大工レベルのDIYだと旋盤やフライス盤が登場する機会はなかなか無いですよねえ。

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 工作機械はやがて水車や蒸気機関で動くようになります。
 工場の天井に回転する軸を通して、そこからベルトで動力を伝えて機械を動かす方式。一斉に多くの機械を動かすことができ、いかにも工場らしい雰囲気になってきます。
# 工作機械ではないのですが、豊田自動織機の自動織機G型もこれで動いていました。

 2枚目の写真はその時代の横フライス盤。メーカーがプラット&ホイットニーで、この会社は今ではジェットエンジンの製造で知られています。思わぬ会社の名前を思わぬ所で見てしまいました。

20251013mazak092.jpg 20世紀に入ると電力を使ってモーターで動く工作機械が登場。蒸気機関のような大がかりな仕掛けだと動力源を基本に機械を配置していくことになりますが、モーターは機械に直接付けられますから、工場のレイアウトが自由になります。この時期の国産品はまだまだ海外製品のコピー。

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 一方で同じ時期のアメリカ。笠型歯車をつくる機械で、博物館のスタッフも「現在ならコンピュータ制御の機械で同じ加工を出来るけど、メカだけでこれを実現しているのはすごい」「いま見てもどうやって作ったのかと思うパーツがある」と舌を巻くもの。中国やインドでは現役で使われているものもあり、製造元の「グリーソン」で技術者同士で話が通じるとか。

20251013mazak096.jpg 笠型歯車は例えばデファデンシャルギアに使います。デファレンシャルギアは身近なところでは自動車の車軸に使うもの。カーブを曲がるとき、内側のタイヤと外側のタイヤの回転数を変えないと車が曲がれないのですが(内側は少なく、外側は多く)、その調整を行うのがデファレンシャルギア。
# この写真だけ見ても仕組みは分からんな。

 戦前の日本は、飛行機にしても自動車にしても設計して部品を作って組み立てることは出来ても、その部品を作る高精度の工作機械は海外に頼っている。そういう段階で第二次世界大戦に入ってしまったんだなあ。足元を見てなかったというか何というか。

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 そういえばD51蒸気機関車にT型フォード。工作機械だけだと分かりにくいと思ったのか、工作機械があるからこそ作れた製品がシンボリックに展示してあります。

 展示を熱心に見ているとスタッフの方がそれとなく説明してくださり、時にはスイッチを入れて機械を動かしてくださったり、それがとっても面白く、最初の1時間くらいは写真も撮らずに見て歩いていました。

 というか、展示物に喰いつくようにマジマジと見入っていたせいか、スタッフさんに声を掛けられる率が他のお客さんより高かった気がします。そのうち他の機械の実演を始めるときにもわざわざお声がけ頂くようになったり……

20251013mazak135.jpg 戦争で荒廃した工場の工作機械を再整備するところから戦後が始まります。
 やがて日本国内でも工作機械の生産が始まるのですが、工作機械をつくるための大型の工作機械は輸入に頼っていました。ということも展示しています。

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 やがて時代はNC旋盤へ。NCは"Numerically Control"で数値制御のこと。プログラムで指定したとおりの加工を行わせます。日本の工作機械が世界の先端に躍り出るのはこの頃からで、1枚目の写真はアメリカへの進出を果たした製品。
 2枚目の写真はあえてカバーを外した状態で展示してありますが、この頃には安全に配慮して可動部にカバーが付いたり、切り屑が飛ばないように刃の部分もカバーで覆われるようになります。カバーを外すと基本的な構造は……自動で刃を交換したりいろいろ進化している……

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 最新の工作機械になると外から見たら巨大はハコになってる。中は材料も刃も縦になったり斜めになったり、ぐりぐり動いて複雑な形状を削り出しています。

 レーザー加工機の実演。厚さ1mmの鉄板を高速で切り抜いています。火花は見えていますが、レーザーそのものは赤外線で不可視。
 厚さが1mmもあったら切ってる間に周囲に熱が伝わったり、細かい部分だと溶けてフニャッとなりはしないかと思うのですが、何事も無かったかのように抜いてしまいます。
 レーザー加工機は刃物を使わないせいか、これまでの工作機械たちとは別の扱いになるそうです。

 工作機械は日常生活で直接目にすることのないものですが、工作機械なしでは現代の文明は維持できないくらいに世の中を支えてるもの。いやあ面白かった。
 館の方に帰りのバスの時間を心配されるまで見学してました(帰り大丈夫ですか? と聞きながら機械の実演を始めるんでどうぞ、と言われる……)。

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 帰りがけにお迎えしたヤマザキマザックのCNC旋盤のプラモデル。パーツは成形色で概ね色分けされている上に、操作盤やロゴなどはシールが入っているので無塗装でもそれなりに仕上がります。スナップフィットで接着剤なしでも組み立て可能。
 なのですけど、CNC旋盤を一般家庭に飾ってどうするのか、落ち着いて冷静に考えるべき買い物です。どうするんだ私。ちなみに買うと図録を頂けるので、むっちゃお買い得でした(2025年10月当時)。

20251013mazak192.jpg 工作機械のガチャもあったので回してきましたけど、一般家庭に置いても何の模型だか分かる人が少ないのでは。
 たまたま同じタイミングでお土産品の棚を覗いていた親子連れがいて、たぶん小学校中学年くらいかなあ。CNC旋盤のプラモデルを欲しがっているのを尻目に大人の財力でかってしまったのですが、そのお子さん工作機械ガチャは3回も回してました。将来有望だ。

 改めて写真を見ていると、とても面白い雰囲気を伝え切れていないのですが、私が見学した企業博物館では五指に入るおすすめ館です。お近くにお立ち寄りの際はぜひ。
posted by ふくだ at 23:47| Comment(0) | 博物館や美術館
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