当時の望遠鏡で観測できた天体なので、現在でもアマチュアの星雲・星団観察の入門編として用いられています。
ここでは口径6cmの天体望遠鏡、ミニボーグ60EDで撮影したメシエ天体をまとめました。機材の詳細はこちらの記事に記しています。>撮影用機材(ミニボーグ60ED+AP赤道儀)
写真の視野は全て3.6×2.4度で、これはオリオン座の三ツ星がちょうど収まる程度。短辺は満月が5個並ぶ長さで、低倍率の望遠鏡で見るよりも広い範囲が写っています。露出時間や画像処理は天体に合わせて、あるいは撮影時の天候で変えています。
写真は北を上にし、注記なし/ありの2枚組で掲載しています。注記の番号のみはNGCカタログの天体、Iがついている番号はICカタログの天体です。
ウェブ上では長辺640pxのサムネイル画像を表示し、写真をクリックすると1500×1000pxの拡大画像が表示されます。本来の画像サイズは6000×4000pxです。
説明中の天体データは理科年表(2015年版)より引用しています。
※記事の日付は固定の過去日付を設定しています。
M1 かに星雲(おうし座)
2019年11月24日02:37〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×14枚合成(露出時間84分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
藤原定家の『明月記』に記録が残されていることで知られる1054年の超新星残骸。
定家は鎌倉時代初期の人なので、直にこの超新星を見たわけではなく、陰陽寮に過去の客星の記録を問い合わせた返答が日記に残されています。
吹き飛ばされたガスが970年弱を経て広がった姿で、大きな天体ではないのですが、小望遠鏡ではひし形のような形に、少し大きな望遠鏡では佐渡ヶ島のような形がわかります。
左下の輝星はおうし座の角に当たるζ星で、かに星雲を探す良い目印になります。
M2 球状星団(みずがめ座)
2020年8月16日01:37〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×14枚合成(露出時間84分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
みずがめ座の肩の部分にある球状星団で、これまた双眼鏡でも簡単に存在が分かる天体です。撮影中にガスが濃い時間帯があったためか、背景の空が明るくなってしまいました。
M3 球状星団(りょうけん座)
2022年3月6日03:50〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×6枚合成(露出時間36分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
メシエ天体の中でも若い番号が振られているとおり、比較的明るく大きな球状星団。熟練の眼視観望者は球状星団の特徴をつかめるそうですが、わたしゃまだ無理。
星座の領域ではりょうけん座ですが、うしかい座からたどるほうが見つけやすい。と言いながらも、近くに明るい星がないので導入は苦労します。
明け方近くまで好転に恵まれた晩でしたが、4時以降は途中で薄雲が通過した上に、赤道儀のバッテリーが切れて停止するトラブルも起こり、露出時間を稼げませんでした。4ヶ月ぶりの撮影だといろいろ起こります。
M4 球状星団(さそり座)
2022年4月3日01:50〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×18枚合成(露出時間108分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
中央がM4で星の密集具合が比較的バラけた球状星団です。左の明るい星はアンタレス。
アンタレス周辺の星雲は天体写真の名所ですが、淡い上に南天低いので、透明度の良い夜に長時間露光する必要があります。この晩もあと40分ほどは撮れる予定だったのですが、天候が回復して急遽、星見に出発したためにバッテリの充電が十分でなく、18枚=108分撮影したところで終了となってしまいました。
M4の存在は双眼鏡でも分かりますが、この一帯に広がる色とりどりの星雲は非常に淡く、眼視では見えないものです。星雲部分は目に見えないだけに、どの程度まで強調してよいものかと思います。主役のはずの球状星団よりも脇役の星雲に気を使ってしまう写野です。
M5 球状星団(へび座)
2022年5月7日02:00〜(兵庫県多可郡多可町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
周囲に明るい星の少ないエリアにあるのですが、明るいので双眼鏡を向ければ比較的簡単に見つかります。神戸市内でも口径10cmの望遠鏡で周囲の星がザラザラした雰囲気に見えてくる、球状星団の中でもおすすめ天体の一つ。距離2.45万光年。
M6 散開星団(さそり座)
2021年4月11日03:46〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×8枚合成(露出時間48分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
M6はさそり座の尾のあたりにある散開星団で、トンボのような形に星が並んでいます。天の川のほとりにあるので、すぐ近くにあるM7散開星団ともども双眼鏡で見るのが楽しいところ。
薄明が始まる時間帯の撮影で、露出の後半は背景の空が青くなり始めていました。おかげでコントラストとカラーバランスの調整が難しくなりました。
M7 散開星団(さそり座)
2020年8月17日21:06〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×12枚(露出時間72分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
M7はメシエ天体の中でもっとも南にある天体。さそり座の尾のあたりにある散開星団で、双眼鏡ならM6と同じ視野に見えます。400mm級の焦点距離ではさすがに単体で狙うしかありません。
天の川の中にあるので背景の星がにぎやか。眼視で見ていても楽しい天体です。
M8 干潟星雲・M20 三裂星雲・M21 散開星団(いて座)
2020年5月28日23:45〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×16枚(露出時間96分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
M8は明るい散光星雲で、空の暗い場所なら肉眼でも存在がわかりますし、街中でも双眼鏡で確認できます。
愛称の干潟星雲は英名の「Lagoon Nebula」の訳で、遠浅の干潟よりもサンゴ礁の礁湖を思い浮かべたほうがよいのかもしれません。ぼんやりした星雲が散開星団と重なって見える姿を双眼鏡でも楽しめます。
眼視では星雲の赤色を見ることは出来ず、最も濃い部分だけ白いガスが広がった姿に見えます。
M20の三裂星雲は明るい星雲が暗黒星雲で3つに分断されているように見えることからの愛称。双眼鏡でも存在は分かりますが、赤青の色とりどりの姿は写真ならではのもので、眼視では白くぼんやり見えます。
M8・M20に双眼鏡を向けるとM21も同じ視野に入っているのですが、ついつい星雲に目を奪われて、M21の方は見過ごしがち。星がばらけ気味の散開星団です。
M9 球状星団(へびつかい座)
2022年6月29日21:22〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
小ぶりな球状星団で、小望遠鏡では恒星の周りをモヤが取り巻いているように見えます。天の川のほとりにあるので写真では一面の微恒星が賑やか。周囲に暗黒星雲が広がっている様子もわかります。
M10 球状星団(へびつかい座)
2022年5月27日22:53〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
夏の夜空はM13やM22といった大物の球状星団があるので見過ごしがちですが、M10もまずまず見ごたえのある球状星団です。中央集光が強くギュッと固まった印象。距離1.43万光年。
M11 散開星団(たて座)
2022年5月28日01:01〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×8枚合成(露出時間48分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
たて座の辺りはスモール・スター・クラウドと呼ばれる天の川の濃い領域があり、M11はその中にある散開星団です。背景が微恒星だらけで、そこに浮かぶように見える星団は見事な眺めです。双眼鏡でも存在は分かりますが、散開星団にしては星が密集しているので望遠鏡がおすすめ。
M12 球状星団(へびつかい座)
2022年7月1日22:23〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
望遠鏡で覗くと球状というよりあちこち出張ったいびつな形をしています。似たような見かけの多い球状星団の中でも個性派の部類。距離1.60万光年。
M13 球状星団(ヘルクレス座)
2019年4月7日01:34〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×11枚合成(露出時間66分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
M13は北天最大の球状星団。街中でも双眼鏡でボーッとした姿を確認できます。球状星団らしい姿を見るには望遠鏡が必要で、10cm級の望遠鏡で周辺の星がザラザラ見えてきます。40cm級の望遠鏡だと黒い紙の上に砂糖をぶちまけたみたいに壮観です。
M14 球状星団(へびつかい座)
2022年6月30日21:03〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×9枚合成(露出時間54分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
へびつかい座にあるメシエ天体の球状星団は控えめな見え方をするものが多く、M14もその一つ。比較的若い番号のメシエ天体ですが、街中から小望遠鏡ではボーっとした姿にしか見えません。距離3.03万光年。
M15 球状星団(ペガスス座)
2020年8月15日23:37〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×14枚合成(露出時間84分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
ペガスス座の馬の鼻先にある球状星団で、こちらも双眼鏡でも簡単に存在が分かります。
撮影時に靄が通り過ぎたためか、背景の空が明るくカブってしまいました。
M16 わし星雲(へび座)・M17 オメガ星雲(いて座)
2017年4月30日02:17〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO6400 露出2分×8枚合成(露出時間16分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
M16はハッブル宇宙望遠鏡の写真で知られる天体です。M17も天体写真ではおなじみの対象。両天体とも双眼鏡で確認できます。
小望遠鏡ではM17の星雲は見えますが、M16の星雲は淡く、星雲に重なる散開星団だけ観察できます。
M17 オメガ星雲・M18 散開星団(いて座)
2022年6月29日23:43〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×20枚合成(露出時間120分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
散光星雲は写真写りは派手でも眼視では全く見えないものが少なくありませんが、M17はメシエ天体の中でも明るめの散光星雲で双眼鏡でも存在が分かります。オメガ星雲の他に白鳥星雲という愛称がありますが、小望遠鏡でも水に浮かんだ白鳥のように広がる淡い星雲を見ることが出来ます。
一方のM18はまばらな散開星団で、低倍率ならM17とたいてい同じ視野にあるのですが、うっかり見過ごしてしまいがちです。
M19 球状星団(へびつかい座)
2022年6月29日22:30〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
比較的小ぶりな球状星団。球状星団はどれも似たような形に見えると思われがちですが、M19は南北に伸びた楕円状なのが特徴的です。
M20 三裂星雲・M21 散開星団(いて座)
→M8 干潟星雲・M20 三裂星雲・M21 散開星団(いて座)
M22 球状星団(いて座)
2020年8月15日21:34〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×14枚合成(露出時間84分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
この日は空の透明度こそよかったものの、地表付近はガスがかかっていて、撮影対象を星団にしました。
M22は天の川の中にある球状星団で、双眼鏡でも簡単に存在が分かります。背景が微光星でびっしりにぎやか。
日本から見える球状星団の中では、個人的にはM13(ヘルクレス座)に次いで見栄えがするものだと思います。
M23 散開星団(いて座)
2022年6月30日22:54〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
天の川の中に浮かぶような散開星団で、明るさのそろった星が密集して小望遠鏡の低倍率で見事な眺めです。
M24 天の川の一部(いて座)
2017年05月27日00:32〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO3200 露出2分×8枚合成(露出時間16分) ビクセンAP赤道儀にて追尾
いて座の天の川の濃くなった部分をメシエはM24と記録しました。「スタークラウド」とも呼ばれる一帯で、
肉眼でも存在が分かります。この付近はシカの頭部のようにも見えることから「バンビの横顔」の愛称があります。
中央やや左上に散開星団NGC6603が重なっていて、これをM24と紹介している本などもあります。
M25 散開星団(いて座)
2022年6月3日02:51〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×8枚合成(露出時間48分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
天の川の微光星の中にいろんな明るさの星がまばらに散らばっていて、双眼鏡から望遠鏡の低倍率で見て楽しい散開星団です。散開星団は写真写りは地味目ですが、眼視観望だと星が集まってキラキラきれいなのです。
M26 散開星団(たて座)
2022年7月1日23:33〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
夏の天の川に浮かぶ散開星団は賑やかな天体が多いのですが、M26は見かけの大きさも小さく控えめな部類です。星も暗めで、小望遠鏡の低倍率では星雲状に見えるくらい。天の川の濃い部分・スタークラウドの一角なので背景は微光星だらけです。
M27 あれい状星雲(こぎつね座)
2019年4月7日03:11〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×12枚合成(露出時間72分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
あれい状星雲は鉄アレイに似た姿から付いた名で、丸いお煎餅を両側からかじったような、地図の銀行マークにも似た形です。街中でも双眼鏡で存在が分かりますが、形を見るには望遠鏡が必要。
惑星状星雲は単位面積あたりの明るさがあるので、少し高めの倍率をかけて見るのもおすすめ。
その正体は惑星状星雲で、一生を終えつつある恒星から流れ出したガスが広がった姿。古の望遠鏡では惑星のように見えたので惑星状の名がありますが、天体の惑星とは関係ありません。
M28 球状星団(いて座)
2022年7月1日00:04〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
いて座の「ティーポット」の星の並びのふたの上にある球状星団。小ぶりですが意外に明るく、高倍率をかけると星の粒がザラザラしているように見えてきます。
M29 散開星団(はくちょう座)
2020年8月25日01:02〜(兵庫県淡路市)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×8枚(露出時間48分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
画面中央の10個弱の星の集まりがM29。メシエカタログの散開星団は双眼鏡でも見栄えのよい対象が多いのですが、M29は比較的、地味な星団です。天の川の中にある星団なので、メシエが使っていた望遠鏡では微恒星の中で一見、彗星と紛らわしいように見えたのかもしれません。ついつい忘れてしまいがちですが、メシエは彗星探索が本業で、彗星と紛らわしい天体のカタログとしてメシエカタログを作ったのです。
撮影時に薄雲が流れてきたため、背景の空の色の調整に苦労しました。雲がかかると全体的にコントラストが低くなるばかりか、街明かりを反射するため不自然な色かぶりが生じてしまいます。
M30 球状星団(やぎ座)
2022年9月30日22:35〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×9枚合成(露出時間54分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
比較的低い南天にあり、淡く、空の暗い場所で20cm反射でも周辺の星が分離できるかどうかという見え具合。市街地の明るい空ではボーっとした存在を確認するのがやっとです。春先にメシエ天体を一晩で全部見る「メシエマラソン」では、夜明け前のM30が最後の難関になります。
M31 アンドロメダ銀河・M32・M110 銀河(アンドロメダ座)
2019年10月31日(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×16枚合成(露出時間96分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
私たちの天の川銀河のお隣、アンドロメダ銀河。
数々のSF作品で取り上げられることから名前はよく知られた存在です。
距離は250万光年。空の暗い場所なら肉眼で見え、一般的には肉眼で見ることのできる最も遠い天体とされます。多少の市街地でも双眼鏡で存在を確認できる明るさがありますが、淡く広がった部分まで見ることは難しく、小型の望遠鏡だと中心部の特に明るい部分がぼんやり見えています。
直径は天の川銀河の倍以上あり、我々の天の川銀河を含む局部銀河群の盟主的存在です。
中心核のすぐ左にある小さな円形の銀河はM32、右上にある楕円形の銀河はM110で、いずれもM31の伴銀河。その他の星々は手前にある天の川銀河の星たちです。
この日はよく晴れていましたが、雲が流れてくることも多く、直焦点の写真はこれだけ。双眼鏡で空を見上げる分には十分楽しめました。
M33 銀河(さんかく座)
2020年9月21日02:55〜(兵庫県多可郡多可町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×16枚合成(露出時間96分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
M33はアンドロメダ銀河や天の川銀河と共に局部銀河群を構成する「ご近所さん」の銀河です。見かけの大きさはあるのですが、とても淡いので、空の明るい場所で見るのは難しい存在です。一方で空の暗い場所なら口径4cm程度の双眼鏡でも存在を確認できます。条件が良ければ肉眼でも見えるとされていますが、私はまだ機会に恵まれていません。
薄雲の通過する夜でしたが、なんとか腕にあるHII領域(巨大な散光星雲)も写っています。
M33の腕の中に赤いHII領域が点在する写真をよく見かけるようになりましたが、あれは水素ガスが出す赤いHα線をナローバンドで撮っているもので、IRフィルターを外した程度の改造デジカメではそこまでコントラストよく写すのは難しそうです。
M34 散開星団(ペルセウス座)
2020年8月18日03:32〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×4枚(露出時間24分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
ペルセウス座の散開星団は二重星団が有名ですが、M34も比較的明るい星団で、双眼鏡でも簡単に見つかります。
この夜は雲通過待ちの時間が出来てしまい、M34にかかったのは薄明直前でした。6分露出で6コマ撮影したのですが、薄明の影響を受けずに済んだのは4コマだけ。とはいえ淡い天体を描写するわけではないので、意外にノイズなど目立たずに済んでいます。
M35 散開星団(ふたご座)
2020年2月22日23:17〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO6400 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
M35はふたご座の兄の側の足元にある散開星団。
明るい星団で、双眼鏡でも簡単に見つけることができます。空の良い場所なら、場所が分かっていれば肉眼でも何かあるのが分かります。明石市立天文科学館のツァイスプラネタリウムでもこの星団を映しています。
一般的に天体写真では星雲のほうが華やかに写りますが、眼視では星団のほうが賑やかな姿を見やすいです。
M35の右下にある小さな散開星団はNGC2168でずっと遠くにある天体がたまたま同じ方向に見えているものです。
もう一つ右側にも小さな散開星団NGC2157があります。このあたりは天の川のほとりで散開星団がたくさんあります。
M36 散開星団(ぎょしゃ座)
2020年10月21日00:44〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×9枚合成(露出時間54分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
M36は明るい星が小さくまばらに集まった星団。右側の星雲はNGC1931、画面右端の星雲はIC417。天の川に沿って水素ガスの星雲が点々と散らばっています。意外に散開星団も個性があるのです。天体写真では星雲のほうが人気ですけど、双眼鏡での観望なら散開星団は見つけやすくて楽しい存在。
右上ギリギリに写り込んでいる散開星団はM38の南にあるNGC1907。うまく構図をとればM38とM36と同じ視野で撮れそうです。
M37 散開星団(ぎょしゃ座)
2020年11月21日22:05〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×11枚(露出時間66分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
ぎょしゃ座にはM38・M36・M37と3つの散開星団が並んでいますが、M37は粒の揃った星がギュッと密集して、いかにも散開星団らしい散開星団。これも街中で双眼鏡で存在が分かる天体です。
こちらは月が沈む少し前から撮影を開始。散開星団は写真では星雲のような派手さはありませんが、眼視で見ると星が集まった姿が見ごたえのある対象で、双眼鏡や小望遠鏡で楽しめるものも多い天体です。
M38 散開星団(ぎょしゃ座)
2020年10月20日23:37〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×9枚合成(露出時間54分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
ぎょしゃ座にはメシエ天体の散開星団が3つあり、北からM38・M36・M37の順に並んでいます。北端のM38はぎょしゃ座の五角形の星の並びの真ん中寄りにあり、双眼鏡でもぼんやりした姿が簡単に見つかります。南側にある小さな散開星団はNGC1907。また右側にも淡い赤い星雲(水素ガスの星雲・HII領域)があります。
散開星団の写真は星雲のように淡い部分を描写することがないので、6分露出を10枚(2枚までは予備として合成用に8枚確保を目標)撮ることにしているのですが、これだけ星雲があるともう少し露出をかけて狙ってみたくなります。
M39 散開星団(はくちょう座)
2020年11月14日20:53〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×8枚(露出時間48分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
はくちょう座の北十字から少し離れて、とかげ座との境目近くにある散開星団。晩秋の夕空でも比較的高い高度に見えています。天の川の中に明るめの星がまばらに散らばり、望遠鏡よりも双眼鏡向きの眺めです。
星の数が少なめの星団なので、写真写りは少々地味め。眼視では星雲より星団のほうが見栄えがよいのですけど、写真でその雰囲気を表現するのはなかなか難しいです。
M40 二重星(おおぐま座)
2023年4月22日21:22〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3) ISO1600 露出6分×8枚合成(露出時間48分) ビクセンAP赤道儀にて追尾。
M40はおおぐま座の二重星で、彗星と見間違いようのない天体です。メシエカタログを刊行する際、キリのよい40番にするために追加したとも言われています。右下の輝星は北斗七星の4番目の星・おおぐま座δ星。
M40を追加した後にメシエはM41(おおいぬ座の散開星団)を発見してしまったため、M42・43オリオン星雲、M44プレセペ星団、M45プレアデス星団と肉眼でも見える天体を追加して、45を区切りとしました。だったら二重星団も入れてあげたらよかったのにと思います。
M41 散開星団(おおいぬ座)
2021年11月6日04:06〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×9枚合成(露出時間54分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
M41は冬の天の川に浮かぶように見える散開星団で、双眼鏡ではシリウスと同じ視野に見えてとても華やかです。明るい天体なので双眼鏡があれば神戸市の郊外でも十分に見ることが出来ますし、空の暗い場所ならば背景に天の川の微光星が散りばめられて見事な眺めです。おすすめの散開星団の一つ。
今まで写真に撮っていなかったのが不思議なくらいですが、冬の空は写真映えする散光星雲がたくさんあるので、撮影だと散開星団は優先順位が後ろになりがちなのです。でも観望にはほんと楽しい天体。
M42・M43 オリオン大星雲(オリオン座)
2020年10月21日01:53〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×16枚+3分×12枚+1分×8枚合成(総露出時間140分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
オリオン座の三ツ星の下にある散光星雲。オリオン大星雲とも呼ばれていて、メシエ天体で「大」が名称に付くのは、他にM31がアンドロメダ大銀河やアンドロメダ大星雲と呼ばれるくらいです。
神戸の郊外の住宅地でも肉眼で存在が分かるくらいで、双眼鏡でもガスが広がっているのが小さいながらもわかります。空の暗い場所で大きなドブソニアン望遠鏡を覗かせてもらうと、幾重にもガスがたなびく様子がきれいです。
眼視では色はほとんど分からないのですが、大きな望遠鏡だと明るい部分がほんのり緑色に見えることがあります。写真では電離した水素が出すHα線の赤い光が写るのですが、赤外線に近い波長のために眼視では見えにくく、OV線やHβ線の緑色のほうが視細胞に感じやすいためです。
M42・M43は標準レンズの固定撮影でも簡単に写るのですが、明るい中心部から周辺に広がった淡い部分までを写し出すのは難しく、大ベテランも何度も挑む奥深い対象。きちんと撮ったのは実は初めてです。
M44 プレセペ星団(かに座)
2021年3月10日21:24〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×11枚合成(露出時間66分) ビクセンAP赤道儀にて追尾。
かに座の中央にあるプレセペ星団は、明るい星がまばらに集まる散開星団。メシエ天体の中でも明るく、神戸でも双眼鏡で、空の暗い場所なら肉眼でぼんやりした姿を確認できます。
一説にはメシエが最初に星雲星団のカタログを作ったとき、M39までの天体はまとめていたものの、数字のキリをよくするために二重星のM40を付け加え、その後でM41を発見してしまったために、次にキリのよい45に揃えるため、M42〜M45までは肉眼でも見えるような天体を登録したのだとか何とか。
M42・M43=オリオン大星雲、M44=プレセペ星団、M45=プレアデス星団ですから、星雲星団には違いないですけど、目立つので彗星と間違えようのない天体ばかりです。
このプレセペ星団、星座絵では蟹の身の辺りにあるので「カニ味噌」と呼ぶ星仲間も。大きく広がっているので望遠鏡では星がまばらになりすぎて星団の雰囲気がなく、双眼鏡向きの天体です。
M45 プレアデス星団(おうし座)
2019年11月30日22:11〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×19枚合成(露出時間114分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
清少納言の「枕草子」で「星はすばる」と謳われた「すばる」がM45プレアデス星団です。
星の和名としては最も知られたものの一つで、国立天文台ハワイ観測所の望遠鏡は「すばる望遠鏡」ですし、自動車メーカーの「SUBARU」もこれの星団が由来でエンブレムも星団をかたどっています。
神戸市の郊外あたりの空でも透明度が良いときは肉眼でぼんやり見え、よく見ると星がいくつか集まっているのが肉眼でもわかります。目の良い人が空の暗い場所で見れば6〜8個ほどの星が見えるそうですが、私は矯正視力でもそこまでは無理。
星団としては明るい星が集まっているので、双眼鏡から低倍率の望遠鏡で見るのが楽しいと思います。
冬の空で見るのも楽しいのですが、夏の明け方の東の空に昇ってくるすばるを見つけると、なんとなく嬉しくなってしまいます。
M46・M47 散開星団(とも座)
2018年11月4日22:35〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×4枚合成(露出時間24分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
明け方近くになって撮影したM46・M47。いずれもとも座の散開星団で、左側の細かい星が密集しているのがM46、右の明るい星がまばらに集まっているのがM47です。両星団とも双眼鏡の同じ視野に見えますが、こちらは対象的な星団が並んでいるのが面白いところ。
上の方にNGC2438という惑星状星雲があります。拡大した画像では緑色に光るリング状の星雲がわかります。フィルム時代の写真では赤く写ったものですが、Hα線が写らない非改造のデジタルカメラでは、HβやOIIIの緑の光の姿で写ります。
M48 散開星団(うみへび座)
2021年3月11日00:03〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×9枚合成(露出時間54分) ビクセンAP赤道儀にて追尾。
M48はうみへび座の頭部の南西にあります。近くに目印になる星のない天体ですが、大体の見当を付けて双眼鏡を向けると意外にあっさりぼやっとした光の塊が見つかります。
M49 銀河(おとめ座)
2022年5月27日21:41〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
おとめ座銀河団の中ではもっとも若い番号がついたメシエ天体で、神戸市の郊外でも10cm屈折でぎりぎり淡い光芒を見たことがあります。おとめ座銀河団の南の周縁部にある銀河で、このあたりも6cm屈折でたくさんの銀河が写っています。
M50 散開星団(いっかくじゅう座)
2022年10月30日02:58〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
シリウスとおおいぬ座の頭のてっぺんのθ星を結んで伸ばした場所にあります。双眼鏡なら簡単に見つかりますが、見かけの大きさは小さめで、星がばらけた様子を見るには望遠鏡推奨。
M51 子持ち銀河(りょうけん座)
2021年4月10日20:50〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×14枚合成(露出時間84分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
渦巻銀河に小さな銀河がつながっていることから「子持ち銀河」の愛称があります。口径20cmくらいの望遠鏡なら、空の暗い場所で淡いながらも渦巻の腕を見ることが出来ます。口径40cmなら渦の様子が分かり、淡いながらも天体写真でおなじみの姿を楽しめます。
最近では2011年に超新星が発見され、このときはさじアストロパークの103cm鏡で見る機会に恵まれました。
この晩の撮影開始時には晴れていたのですけど、始終薄雲が始終通過する厳しい条件。27コマ撮影しましたが半分は雲がかかって使い物になりませんでした。
それでもきれいな渦の様子がしっかりわかるのと、小さい方の銀河が意外に淡く広がっている様子も写っています。実際にすぐ近くにある2つの銀河の重力の相互作用の影響です。
M52 散開星団(カシオペヤ座)
2020年9月21日01:29〜(兵庫県多可郡多可町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×11枚合成(露出時間66分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
中央の星の集団がM52散開星団。双眼鏡でもよく見える天体です。
M52の右下にある赤い星雲はSh2-162バブル星雲。眼視では見えないのですが、天体写真の名所です。右端の赤い星雲はNGC7538。このあたりは天の川の中で星雲星団がにぎやかに散らばっています。
M53 球状星団(かみのけ座)
2022年6月2日22:19〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
銀河ばかりの春の空の中では希少な球状星団。メシエ天体の球状星団の中では比較的見やすい部類。距離は5.80万光年で、北天一と言われるヘルクレス座のM13の倍ほど遠い天体です。南東にあるNGC5053も球状星団で、淡いながらも大きさはM53とさほど変わらないのが面白い天体。距離は5.35万光年で、M53とは見かけだけでなく実際にも近い天体となります。
M54 球状星団(いて座)
2022年6月3日01:43〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
いて座の「ティーポット」の取っ手の下の付け根付近にある球状星団。眼視では中央部だけ明るくて、うっすらガスに包まれた恒星のような印象。夏空のメシエ天体は球状星団が多いのですが、M13やM22といった横綱・大関級がいるので、前頭級はなかなか望遠鏡を向ける機会がありません。
M55 球状星団(いて座)
2022年6月30日01:55〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
銀河中心を抱えてにぎやかな印象のあるいて座ですが、やぎ座の境界に近い東側は星の少ない領域が広がっています。M55はそんな中にあり、近くに明るい星がないので導入に苦労しますが、見かけの大きさが意外にあり、双眼鏡でもぼんやりした姿が分かります。6cmの望遠鏡でも球状星団らしい写りを楽しめます。
M56 球状星団(こと座)
2022年10月1日21:23〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×9枚合成(露出時間54分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
天の川の中に見える球状星団。近くに環状星雲M57があるので、ちょっと存在感が薄め。望遠鏡を向けてみると小さいながらも見つけやすい天体です。
M57 環状星雲(こと座)
2023年5月21日01:48〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×14枚合成(露出時間84分) ビクセンAP赤道儀にて追尾。
「環状星雲」「リング星雲」の愛称を持つ惑星状星雲。見かけの大きさは木星(衝の時期で40秒程度)より一回り大きい60秒ほど。このため眼視では高めの倍率をかけるとリングの穴が見えてきます。一方で単位面積あたりの輝度が高いため、望遠鏡を使えば街中で比較的見やすい天体です。
写真では短い露出でよく写ってくれます。惑星状星雲の中では大きく見える天体とはいえ、この焦点距離ではいかんせん小さく、また小望遠鏡では惑星のように見えるのも分かる気がします。
M58・M59・M60・M89・M90 銀河(おとめ座)
2021年4月11日01:51〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×16枚合成(露出時間96分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
おとめ座銀河団の東側、M58・M59・M60・M89・M90とメシエ番号のついた銀河が5つも写っています。いずれの銀河とも、街中では望遠鏡を使ってもかろうじてぼんやりした光斑が見える程度。
けれども空の暗い場所で露出をかけると小望遠鏡でもM58やM90は意外に渦の形まで写っています。M58は棒渦巻銀河で質量も銀河系とほぼ同じくらいと想定されているそうですから、あちらから私たちの銀河系を見ると案外似たような姿で見えているかもしれません。おとめ座銀河団は私たちの銀河の北極方向にあるので、あちらから見ると銀河系はフェイスオン……渦巻の正面から見る形に見えるはずです。
そして何より、視野いっぱいに多くの銀河が写って驚きます。視野の右端が別に撮影したマルカリアンの銀河鎖と重なるので、モザイク合成するとおとめ座銀河団の広がりが分かる写真になるはずです。
M61 銀河(おとめ座)
2022年6月2日21:04〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
おとめ座銀河団の中ではもっとも南にあるメシエ天体で、y字状に並んだおとめ座の上半身の星の並びの中ほどにあります。写真では渦状の腕が写りますが、淡い天体なので神戸市郊外で10cm屈折使用の眼視では見たことがありません。
M62 球状星団(へびつかい座)
2022年6月3日00:34〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×9枚合成(露出時間54分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
へびつかい座とさそり座の境界線付近にある球状星団。ボウっと広がった星雲状に見えます。天の川の中にあるので背景が微光星だらけできれいです。距離2.25万光年。
M63 ひまわり銀河(りょうけん座)
2022年5月7日00:49〜(兵庫県多可郡多可町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
銀河の形がひまわりの花に似ていることからの愛称。正面からではなく斜めから見たひまわりと思えばそう見える気も。口径6cmの望遠鏡でも腕の濃淡が写るので驚きましたが、眼視で腕を見るのは大きな望遠鏡でないと難しいと思います。距離2400万光年。
M64 黒眼銀河(かみのけ座)
2022年3月6日01:49〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×16枚合成(露出時間96分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
銀河中心近くに大きな暗黒帯があることから「黒眼銀河」の愛称があります。写真なら6cmの望遠鏡でも黒眼を含めた構造を捉えることができますが、眼視で黒眼を見るのは20cmドブソニアン望遠鏡でもなかなか難しく、この日の空では見ること能わずでした。むしろ6cmでも黒眼の周囲の腕など微細な構造が写ることにびっくりです。
M65・M66 銀河(しし座)
2021年3月13日23:54〜(兵庫県多可郡多可町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×20枚合成(露出時間120分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
しし座の後ろ足にある銀河で、右下がM65、左下がM66、上がNGC3628。3つとも同じ銀河群に属しています。望遠鏡の眼視でもそれぞれの銀河の形が違うことが分かり、見ていて楽しい領域です。
薄雲の影響かコントラストも解像度も苦慮したのですが、どうにか腕や暗黒帯の構造が写ってくれました。よく見ると小さい銀河もあちこちに写り込んでいます。
M65は明石市立天文科学館の元副館長・菅野松男さんが、2013年に超新星2013amを発見しています。当時15等台でしたが、今の機材ならぎりぎり写せそうな気がします。ただし写せるのと見つけるのは別の次元で、新天体をは発見するためにはたまに見るだけではなく、以前の観測と新しく撮影した写真を隅々まで確認することが必要です。映画などでは観望会で偶然、見慣れない天体を見つけてしまう展開がありますが、現実は大変なのです。
M67 散開星団(かに座)
2021年3月10日22:54〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀にて追尾。
M67はかに座の散開星団で、星座絵では蟹の南側の爪の辺りにあります。プレセペ星団が派手なので陰に隠れがちですが、こちらも双眼鏡から小望遠鏡で見応えのある散開星団です。
メシエ天体の散開星団としてはこれくらいの規模が標準的な雰囲気のような気がします。
M68 球状星団(うみへび座)
2023年2月26日02:07〜(岡山県備前市八塔寺)露出6分×5枚
2023年4月22日22:53〜(兵庫県神崎郡神河町) 露出6分×8枚(総露出時間78分)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
春の球状星団といえばりょうけん座のM3ですが、うみへび座のM68は少々地味目。うみへび座とはいいますが、からす座からたどった方がわかりやすい場所にあります。夜半前に見頃となる時期が春霞に重なるため、街明かりのある場所ではなかなか見にくい天体です。
M69・M70 球状星団(いて座)
2022年5月28日02:05〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×13枚合成(露出時間78分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
いて座の「ティーポット」の中にある球状星団。天の川の岸辺のような場所なので、背景は微恒星だらけ。小さな球状星団で、20cmドブソニアンでも星がバラけず、ボーッとした丸い星雲状に見えます。
M71 球状星団(や座)
2022年7月29日22:19〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
夏の大三角の中のアルタイル寄り、や座の矢の脇にある球状星団。場所は分かりやすいですが、小さめで控えめな見え方。低倍率だと天の川の中に小さな星雲があるように見えます。
M72 球状星団・M73 星群(みずがめ座)
2022年7月1日02:28〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×9枚合成(露出時間54分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
M72は小さく暗い球状星団で街中で見ようとするとなかなかの難物。中央集光が少なく淡い星雲状に見えます。
M73は散開星団とされることもありますが、わずか4つの星の集まりで、なぜこれをカタログに加えたのか首を傾げてしまう天体です。
M74 銀河(うお座)
2022年10月01日00:10〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×16枚合成(露出時間96分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
メシエカタログの銀河の中でも特に淡く、眼視で見にくい天体の一つ。写真でこそ見事な渦が写りますが、空の暗い場所で20cm反射で見ても、淡い光が広がっているのが分かる程度で腕の判別は困難。神戸の郊外で10cm屈折だと相当の透明度に恵まれないと見ることも難しい天体です。
M75 球状星団(いて座)
2022年7月1日01:12〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
いて座とやぎ座の境界付近、明るい星の少ないエリアにある球状星団。見かけの大きさも小さく、小望遠鏡の低倍率では恒星のように見え、倍率を上げてもボーっとした星雲状にしか見えません。
M76 惑星状星雲(ペルセウス座)
2020年10月20日21:33〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×18枚合成(露出時間108分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
M76はペルセウス座にある惑星状星雲。実際の場所はアンドロメダの足元あたりです。
メシエ天体には惑星状星雲が4つ(M27,M57,M76,M97)ありますが、その中で一番見るのが難しいのがM76で、とにかく小さくて暗い。惑星状星雲は小さくても単位面積当たりの光度が明るいので街中でも比較的見つけやすいのですが、M76は神戸では見ていないままです。
M77 銀河(くじら座)
2022年10月1日02:01〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×11枚合成(露出時間66分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
明るく輝く中心核を持つセイファート銀河で、距離4700万光年。写真では淡い腕が写りますが、眼視では中心核だけが目立ち、低倍率では恒星と区別しにくい見え方です。
M78 反射星雲(オリオン座)
2022年10月29日02:15〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×25枚(露出時間150分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
M78はウルトラマンの故郷として知られる星雲。小さいながら街中でも小望遠鏡でぼんやりした姿を確認できます。
この一帯には大きな分子雲が広がっていて、M78はその一部です。左上から右下にかけて星の少ない領域が広がっているのが分子雲。分子雲は暗黒星雲として背後の星の光を隠しているのですが、たまたま明るい星が近くにあって照らされている部分がM78というわけです。
なおウルトラマンの故郷は、巨大ブラックホールで知られるおとめ座のM87銀河にする予定が、誤植でこちらになったという説もあります。
画面左上に広がる赤い星雲はバーナードループと呼ばれるもので、オリオン座の下半身をぐるりと取り巻く超新星残骸の一部です。写真うつりはよいのですが肉眼では見えない天体です。
M79 球状星団(うさぎ座)
M79 球状星団(うさぎ座)
2022年10月1日03:28〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
少々地味ながら冬の星座の中にあるメシエ天体の球状星団はこの一つだけ。視直径は小さいながらも、空の暗い場所では周辺の星がザラついて見え、球状星団らしい球状星団で、たまに望遠鏡を向けたくなります。
M80 球状星団(さそり座)
2022年6月2日23:27〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
さそり座の頭部にある球状星団。小さいながらも意外に明るく丸い星雲状に見えます。写真の南東(左下)は巨大な星間ガス雲が広がって、背景の星の光を隠しています。その一部が照らされているのがIC4604ですが、こちらは眼視ではわかりません。
M81・M82 銀河(おおぐま座)
2019年1月13日01:31〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×16枚合成(露出時間96分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
春の空は系外銀河だらけで、私のような400mm程度の焦点距離で狙うには相手が小さすぎます(系外銀河は巨大ですが、なにせ距離が遠すぎる)。クローズアップした画像は長焦点の大望遠鏡に敵いませんが、宇宙空間にポカンと浮かんだ姿も眼視で見た雰囲気に近くて好きです。これでもM81の腕にあるHII領域が点々と写っているから機材の進歩はすごいものです。
M83銀河(うみへび座)
2021年3月11日03:15〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×12枚合成(露出時間72分) ビクセンAP赤道儀にて追尾。
M83はうみへび座の棒渦巻銀河。うみへび座とケンタウルス座の間にあります。ガイドブックなどでは「南の回転花火銀河」と紹介され、6cmの望遠鏡でも小さいながら見事な渦が写ります。一方で眼視では高度が低いこともあり、20cmドブソニアンでも中心核を見るのがやっとでした。
M84・M86・M87 銀河(おとめ座)
2021年3月14日02:54〜(兵庫県多可郡多可町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×13枚合成(露出時間78分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
おとめ座銀河団の中心部で、左下に超巨大ブラックホールで有名なM87、右から中央上にかけて弧を描いて連なるのがマルカリアンの銀河鎖です。
M87は強い電波を出していることで知られている天体で、本来こちらが「ウルトラの星」になるはずだったという逸話があります。オリオン座のM78はガスの塊ですが、巨大銀河のM87なら銀河内のどこかの星に知的生命体がいてもどことなく説得力があります。
おとめ座銀河団の中でも最大の質量を誇るM87も小望遠鏡の眼視では割と地味で、中心核だけ明るいので恒星と間違いそうな見え方です。M84やM86も何だか光のシミがやっとこ見えるという感じ。
ところがこのエリアを写真で撮ると、わずか6cmの望遠鏡でもあふれんばかりの銀河が写ります。ステラナビゲーターの星図と見比べて、可能な限り同定しました。
「銀河団」というのがひと目で納得できる眺めです。
M85 銀河(かみのけ座)
2023年2月26日00:13〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×10枚(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
おとめ座銀河団に属するメシエ天体の中では最北に位置しています。神戸の郊外で10cm屈折で全メシエ天体を見ようとしたことがあるのですが、その時に未挑戦のまま終わった天体の一つです。
M86・M87 銀河(おとめ座)
→M84・M86・M87 銀河(おとめ座)
M88・M91 銀河(おとめ座)
2023年4月21日23:40〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3) ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀にて追尾。
おとめ座銀河団の中では淡めの天体。神戸の郊外で10cm屈折では見えていません。M91は位置が不明とされてきましたが、近年はNGC4548を充てています。写真では淡い銀河がたくさん映り込んで、同定が大変ですが楽しい領域です。
M89・M90 銀河(おとめ座)
→M58・M59・M60・M89・M90 銀河(おとめ座)
M91 銀河(おとめ座)
→M88・M91 銀河(おとめ座)
M92 球状星団(ヘルクレス座)
2022年9月30日21:07〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×12枚合成(露出時間72分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
ヘルクレス座の球状星団といえば北天最大のM13ですが、M92も後からメシエカタログに追加された天体ながら、見栄えのよい球状星団です。空の暗い場所なら20cm反射で簡単に周辺の星が分離して見えますし、神戸市の郊外で10cm屈折でも綿毛のような姿に見えます。
M93 散開星団(とも座)
2022年3月5日22:27〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×8枚合成(露出時間48分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
「とも」は「船尾」で、ギリシア神話に登場するアルゴ船を象った「アルゴ座」を分割してできたもの。画面左下の輝星はとも座ξ星です。
M93は冬の散開星団の中では比較的小ぶりなもの。とも座にある散開星団ではM46・M47が人気ですが、M93は南天低い場所にあるので見過ごされがちな存在です。星がギュッと密集しているので、双眼鏡よりも低倍率の望遠鏡のほうが星団らしさを楽しめます。
M94 銀河(りょうけん座)
2022年4月2日21:56〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×16枚合成(露出時間96分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
りょうけん座の星座線の「棒」のすぐ脇にある銀河。二重にリングがあるような面白い形をしています。地球からの距離は1600万光年。
M95・M96・M105 銀河(しし座)
2020年2月23日01:27〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×12枚合成(露出時間72分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
M95・M96・M105は同じ銀河団に所属しています。写真ではM95は棒渦巻銀河、M96は渦巻銀河、M105は楕円銀河と三者三様の特徴が分かります。眼視では形まではなかなか難しいのですが、M96とM105は神戸市垂水区から10cm屈折で見たことがあります(このとき視野に入っているのにM95は淡くて無理でした)。
メシエカタログは最初に世に出た後、2回増補改定されています。初版ではM1〜M45、第2版ではM46〜M70を追加、第3版ではM71〜103を追加。M104〜110はメシエが観測した天体を彼の死後に加えたものです。
大雑把にいえば後になるほど見るのが難しい天体が多く、特に大量に加えられた春の銀河たちは小望遠鏡で観望してもなかなか見栄えがしません。それでも写真に撮ると銀河の形を捉えることができます。
M97 ふくろう星雲・M108 銀河(おおぐま座)
2019年4月6日23:10〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×16枚合成(露出時間96分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
この2つの天体はおおぐま座のβ星、北斗七星のマスの先から2番めの星のそばにあります。写真写りはよいのですが、比較的淡いので街中で見るのは難易度高め。
M97は惑星状星雲。星雲に2つの丸い暗い部分があり、フクロウの顔のように見えることから「ふくろう星雲」の名があります。
M108は系外銀河。距離は2350万光年。M97は銀河系内でも太陽系から比較的近い1800光年の場所にありますから、奥行きが全く違う天体です。
M98・M99・M100 銀河(かみのけ座)
2022年3月5日23:57〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×16枚合成(露出時間96分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
おとめ座銀河団はおとめ座とかみのけ座にまたがる領域にあり、この写真はかみのけ座側の周縁部。銀河団の中心部に比べれば密度もバラけてきますが、それでもメシエ番号付きの銀河が3つ(M98・M99・M100)と多くのNGC天体、更にカタログ番号のないような銀河まで写っています。
写真では銀河の渦まで写っていますが、20cmドブソニアン望遠鏡でも眼視で渦は判別困難です。
M101 回転花火銀河(おおぐま座)
2020年2月2日04:23〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×7枚合成(露出時間42分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
M101は距離1900万光年にある比較的近所の銀河。円盤を真上からみている状態で、ぐるぐる渦巻く腕を小さな望遠鏡でも撮影できます。 今回は撮影中に雲がかかり、露出枚数が少なく、少しノイズが残っていますが、6cm級の望遠鏡でも銀河の構造が判別できます。
このあたりの空は銀河面から離れているので、星間物質の影響が少なく、宇宙ののぞき窓のようになって、画面いっぱいに銀河が散らばっています。
NGC5866 銀河(M102候補天体)(りゅう座)
2023年5月20日21:55〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×14枚合成(露出時間84分) ビクセンAP赤道儀にて追尾。
メシエカタログには記載された位置に該当する天体がないものがいくつかあります。
このうちM47(とも座の散開星団=NGC2422)、M48(うみへび座の散開星団=NGC2548)はカタログに記した座標の計算違いで、それぞれ該当する天体が確定されています。M91はNGC4548(かみのけ座の銀河)が有力候補ですが、存在不明とする本もあります。
M102は現在も定説のないメシエ天体で、ここでは候補天体の一つNGC5866を撮影しました。M101の見誤りとされたり、他にNGC5907(写真左上)、NGC5879、NGC5908(写真左)などが候補とされていますが、候補の中ではNGC5866がもっとも明るい天体です。
# 参考:The Missing Messier Objects
M103 散開星団(カシオペヤ座)
2022年10月28日22:42〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×12枚(露出時間72分) ビクセンAP赤道儀+M-GEN追尾
M103はカシオペア座のW字のすぐ脇にあります。写真の明るい星がW字の左端から2番目のδ星で、探す際のよい目印になります……というより、通常のファインダーなら同じ視野に入ります。星の数は少なめですが、尖った三角形のような星の並びからクリスマスツリー星団(Christmas Tree Cluster)の愛称があります。
この付近は秋の天の川の中で近くにも散開星団がたくさんあります。
M104 ソンブレロ銀河(おとめ座)
2022年4月3日00:14〜(岡山県備前市八塔寺)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×14枚合成(露出時間84分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾
愛称はメキシコのソンブレロというつばの広い帽子に似た姿から。眼視では暗黒帯上部の明るい側が目立ち(というより暗黒帯より下側が淡くて見えにくい)、よりソンブレロ感があります。
おとめ座とからす座の境界付近にあり、所属はおとめ座ですが、からす座の四角形の北東隅から辿ったほうが見つけやすい。知られている割には視直径は小さめでです。地球からの距離は4600万光年。
M105 銀河(しし座)
→M95・M96・M105 銀河(しし座)
M106 銀河(りょうけん座)
2023年4月23日00:59〜(兵庫県神崎郡神河町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3) ISO1600 露出6分×10枚合成(露出時間60分) ビクセンAP赤道儀にて追尾。
M106はメシエの同僚のメシャンが発見していたことから、1947年になってメシエカタログに追加された天体。本来のメシエカタログはM103までで、M104以降はメシエが記録していたものを後世にリストに加えたものです。この夜は強風でガイドに苦戦し、撮影中に飛来した薄雲で後処理に苦労しました。
M107 球状星団(へびつかい座)
2022年5月7日03:07〜(兵庫県多可郡多可町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×9枚合成(露出時間54分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
へびつかい座の左膝のあたりにある小ぶりな球状星団。写真ではややバラけた感じに写りますが、元が明るくないので望遠鏡でもモヤッとした星雲状に見えます。距離2.09万光年。
M5と続けて撮影したのですが、同じ球状星団でも、メシエカタログの1桁台と3桁台の貫禄の差よ。
M108 銀河(おおぐま座)
→M97 ふくろう星雲・M108 銀河(おおぐま座)
M109 銀河(おおぐま座)
2022年5月6日23:38〜(兵庫県多可郡多可町)
NikonD5500(HKIR改造)+ミニボーグ60ED+1.08倍フラットナー(f=378mm,F6.3)
ISO1600 露出6分×9枚合成(露出時間54分) ビクセンAP赤道儀+M-GENにて追尾。
そばにある輝星は北斗七星の頭から3番目の星。低倍率なら同じ視野に入るので分かりやすい場所にありますが、淡いので神戸市街では見たことがありません。小さいながらも渦の腕まで写るのは長時間露光の天体写真ならではの姿です。
M110 銀河(アンドロメダ座)
→M31 アンドロメダ銀河・M32・M110 銀河(アンドロメダ座)