2020年07月19日

NHK大河ドラマ『風と雲と虹と』総集編

 コズミックフロント見たさにNHKオンデマンドの見放題パックに加入したので、合わせて視聴できる番組を片っ端から見ています。
 ということで1976年の大河ドラマ『風と雲と虹と』総集編を見ました。平将門を主人公にした作品で、私の郷里が舞台になっています。といっても物心付く前の放映で、知っていたのはタイトルだけ。
 将門の出身の豊田郷は現在は常総市となった石下町。そして将門が後半生に拠点を置いた石井(いわい)の館というのが私の郷里の岩井市(現:坂東市)です。源護は真壁町(桜川市)、平国香・貞盛父子が明野町(筑西市)で、劇中に描かれる坂東は高校通学圏に収まる範囲。これほど知っている場所しか出てこない物語を一年通して大河ドラマでやっていたなんて、リアルタイムで見ていたら狂喜乱舞していたことでしょう。

 そんなところなので、小学校の遠足は将門関連の史跡が定番なのですけれども、どこへいっても石碑があるばかりで、遺構らしい遺構は全く残っていません。今となっては分かるのですが、大河ドラマの放映に合わせて、あるいは放映後に伝承地をまとめて整備したのだと思います。
 とはいえ現地の説明板にも引率の先生のお話にも大河ドラマの話は出てこなかったので、だいぶ後になるまで『風と雲と虹と』の存在は知らないままでした。

 平将門の乱、いわゆる天慶の乱の前半は、言ってしまえば一族間の土地争い。納得いかねば実力行使という、まことに野蛮な出来事です。
 ただ200年後に成立した鎌倉幕府の役割が土地争いの調停だったことを考えると、この問題に関して公家政権は全く無能で、武士が自ら裁判権を持って初めて一定の解決をみたわけです。将門はそこに至る過程の最初の痛みを味わったのかもしれません。

 天慶の乱は高校日本史で武士の成立過程の一コマとして扱われるのですが、実は藤原道長が生まれる前のこと。つまり『源氏物語』や『枕草子』が書かれる以前です。
 この当時の庶民の暮らしは文献からは全く分かりません。なにせ紫式部も清少納言も庶民のことは書き残していません。なので『風と雲と虹と』の時代考証はとても苦労したそうです。

 武士の装束は鎌倉風になっていますが、華やかな鎧は成立しているかどうか微妙な時期。もしかすると古墳時代の鎧と大差ないものを使っていたかもしれず、それはそれで見てみたかったかも。でもドラマとしては一般的な鎧武者のイメージに寄せて正解だったでしょう。

 総集編はいわばダイジェスト版なので、筋を追うのは苦労しました。
 私はもともと人の顔を覚えるのが苦手なところに、一族間の争いですから登場人物をあまり省略していません。40年以上前のドラマですから知らない役者が多く、知っていても若すぎて判別困難(苦笑)。
 もちろん天慶の乱の大筋は分かっていますが、ドラマだからこそ描かれる行間を楽しみたいわけで。

 加藤剛の演じる一本気で情に厚く快活な将門もいいのですけど、緒形拳の藤原純友がすこく格好いい。ダークヒーロー的に描かれるのですけど、むしろ今となっては一癖ある純友に魅力を感じてしまいます。総集編だと出番が少なくて本当にもったいない。本編だともっと活躍していますよね、ねっ。

 でも現在の将門のイメージは、この加藤剛の将門に引っ張られたところが大きいんだろうなと思います。
 民のために起った、なんてことは『将門記』に書いてあるわけではないのですけど、そういう思いを託せる存在であったのを見事に映像にしてしまった。
 「のうみんな、わしら平小次郎将門どのを頼もう!」かっこいいもんなぁ。
 千葉氏や相馬氏など将門の後裔を名乗る武士もいて、将門を祀った神田明神は江戸の守り神として崇敬を集めてきた。そんな素地がある英雄的な将門のイメージを定着させるのに、この大河が一役買ったことは想像に難くありません。

 それと草刈正雄のあまりのイケメンっぷりに驚きました。あのまま平成の仮面ライダーに出てきても全く違和感がない。それから吉永小百合をなんという浮かばれない役にあてたんだ(涙)。

 協力で「茨城県石下町」「茨城県豊里町」が出てくるのですが、合戦シーンのロケをしたのですね。
 ちらっと筑波山が見えたりするのですが、地元民は筑波山の稜線のシルエットで方角が分かるので、だいたいあのあたりかと。今でも田畑と雑木林が多いところですが、40年前なら合戦のロケ地には苦労しなかったでしょう。

 とにかく筑波山が映ると茨城で撮ってるのが分かるので、それだけで盛り上がります。
 地元の大河ドラマ、将門以外に主役を張れる人は他にいないので、二度とないでしょう。DVDだと全話見ることが出来るようなので(なんでNHKオンデマンドに載ってないんだ!)いずれ見たいと思います。
posted by ふくだ at 23:45| Comment(4) | 読書録・映画録
この記事へのコメント
自分が大学へ入った年の放送だったみたいで、TVがなかったため全く見ていませ年でした。最近、将門の乱のことを知りたくなって、いくつか読んでみましたが、なんだか分かりにくいです。舞台となった地域の当時の地勢、大きく変化しつつある土地制度や戦のやり方や様々な社会システムなどが絡んでいて、単に事件の経過を追っていくだけではわからないことが多いからだと感じました。戦国時代の常識がそのままでは通じませんね。
Posted by かすてん at 2020年07月19日 23:18
常総地域一帯が湿地帯まみれで、低い土地ばかりで、開発が遅れた地域なのですね。だからこそ高望王が屯田兵みたいに入り込む余地があり、新参者故に先に土着していた嵯峨源氏系(といわれる)源護にもずいぶん気を使っていた。

平安時代は人口も戦国期の半分くらいですし、常総地域一帯がそんなんですから、開拓農民同士の小競り合いみたいなもので、大人数が移動して合戦するイメージは描けない気がします。

私が子どもの頃に読んだ将門の本は――学習まんがとか、子ども向けの物語ですが――大河ドラマの影響か民衆のヒーロー的な将門像なのですけど、最近の将門の本は地道に研究が進んで、当時の社会情勢も掘り起こして書いているので、そのぶん取っつきにくいところはあるかもしれません。『将門記』に頼るだけでなく、同時代か近い時代の文献で裏付けや反証を取りながら将門の時代に迫ろうとしているのは、最近の戦国時代の見直しにも通じるところがあって面白いです。
Posted by ふくだ at 2020年07月20日 01:04
「藪ログ」(http://yablog.blog6.fc2.com/blog-entry-1010.html)にお勉強始めの参考書をあげておきました。『常陸平氏』所収の高橋修先生の「総論 常陸平氏成立史研究の現在」「「常陸平氏」再考」はよくまとまっていてよかったです。最初に読むなら川尻秋生さんの本が良いと感じました。

これ以外に面白いものをご存知でしたらご紹介ください。
Posted by かすてん at 2020年07月20日 08:54
いや、さすがというかなんというか、私も川尻秋生さんの本がよかったです。

かすてんさんのリストに載っていないものだと
動乱の東国史1『平将門と東国武士団』鈴木哲雄著 吉川弘文館
を読みましたが、将門の部分だけなら川尻さんの本でひとまずは、という印象でした(扱っている範囲も広いですし)。

『常陸平氏』は未読なのでこれはぜひ読んでみようと思います。

将門の本は手にとっても怨霊の話なことが多々あり(これはこれで大切だとは思いますが)、なかなか良質な書籍を探すのが大変です。
Posted by ふくだ at 2020年07月20日 11:50
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