2020年02月18日

ポータブル赤道儀検討 その2

 ポータブル赤道儀(ポタ赤)が一定の支持を集めているのは、天体撮影のデジタル化と無縁ではありません。
 フィルム時代の天体写真では数分から数十分間の露出が必要で、高い精度で長時間追尾が可能な赤道儀が必要でした。
 これがデジタル時代になると、数十秒の露出時間で多くの星が写せるようになります。赤道儀もより小型のもので対応できるというわけです。

 現在入手できるポータブル赤道儀は、「広角〜標準レンズでの撮影を想定したもの」と「望遠レンズの撮影にも対応する高精度なもの」に分けられます。本体の価格帯も前者は概ね5万円台までに収まるのに対し、後者は10万円に迫ってきます。

(1)主に広角〜標準レンズでの撮影を想定したもの
→ビクセンのポラリエやケンコーのスカイメモ、サイトロンのナノ・トラッカーなど。
 電源は単三電池のほか、USBポート経由でモバイルバッテリーを使えるようになり、追尾は恒星時のほか0.5倍速で地上と星空をなるべく止めながら写す星景モードが標準装備になりつつあります。
 極軸合わせは本体ののぞき穴で行うものが多く、オプションで極軸望遠鏡を用意している機種もあります。
 天文誌の実写テストでは極軸が5度ずれていても15mm30秒の露出までなら耐えられるので、広角レンズの撮影であればのぞき穴や方位磁針での極軸合わせでも十分実用的です。

(2)200〜300mmクラスの望遠レンズの撮影にも対応する高精度なもの
→TOASTのTP-2やユニテックのSWATシリーズなど
 ひたすら追尾精度を追求してきたもので、大型のウォームホイルを備え、追尾誤差のピリオディックモーションを一桁台秒角に抑えています。ビクセンの小型機・AP赤道儀のピリオディックモーションが実測15秒角前後ですから、気合の入れ方が分かろうというものです。
 赤緯体がないとはいえ、重量も2kg台に乗ってくる製品が多く、また追尾精度を活かすには三脚や極軸合わせの微動雲台など足回りの強度も確保する必要があります。基本的にハイアマチュア向けの製品です。



@サイトロン「ナノ・トラッカー」シリーズ
 ポタ赤最軽量級の製品で、本体だけなら手のひらに収まるサイズ。
 赤道儀は一般的に大きいほど精度が高く、重い機材を乗せることが出来ます。ナノ・トラッカーはその逆ですから、追尾精度はそれなりで乗せる機材も限られます。とはいえ旅行時の携行など、荷物を減らしたいときには小さく軽いことがメリットになりますし、値段も安い。
 私は初代のナノ・トラッカーを以前所有していました。追尾精度を示すピリオディックモーションは実測±2分角と他のポタ赤に比べると一桁甘い。とはいえ広角レンズで30秒から1分ほどの露出なら問題なく、標準レンズでも多少のガイドミスが出るのを見越して撮影枚数を多めにしておけば大丈夫でしょう。焦点距離250mmのミニボーグ50を載せて10秒露出でも追尾しましたが、さすがに想定外の使い方。
 極軸はのぞき穴で合わせるのですが、これが小さくて覗きにくいのが難点。ショップオリジナルの外付け極軸望遠鏡も出ていますが、厳密な極軸合わせをする精度の架台でもありません。ビクセンの方位磁針ポーラメーターを改造して取り付ける人もいるようです。

Aケンコー「スカイメモS」
 スカイメモといえばフィルム時代からのポタ赤の名機ですが、「スカイメモS」が受け継いでいるのは名前のみで、海外メーカーSky-WatcherのOEM製品。製造元では「Star Adventurer」の名前で販売しています。
 日本国内では2015年発売と後発組。ドイツ式赤道儀の極軸体だけ抜き出した形状で、本体質量1kgとポタ赤の中ではやや大きめ。店頭で手に取ると見た目より重量感があります。搭載可能重量5kgはカウンターウェイトを使用してのもので、通常使用時は2.5kgとなります。
 多彩な追尾モードに極軸望遠鏡内蔵、オートガイド対応、タイムラプス撮影用のインターバルタイマー付き(別途レリーズケーブル要)と、機能はてんこ盛り。コストパフォーマンスも良いので使用者の多い機材です。
 カメラ側の台座が3/8インチネジで、国内で一般的な1/4インチネジではありません。別売りの微動台座か変換アダプタを用意する必要があります。

Bケンコー「スカイメモT」
 2017年発売。前述の「スカイメモS」より一回り小さいのですが、下位機種ではなく、タイムラプス撮影機能を強化した別バリエーションという位置付け。タイムラプスとインターバルタイマー(要レリーズケーブル)はスマホのアプリから細かい設定が可能ですが、逆に本体電源投入だけでは追尾が始まらず、スマホがなければ恒星時駆動さえ出来ないという振り切った設計です。今どきスマホを忘れることはないでしょうが、バッテリー切れはあり得る事態なのでちょっと怖い。
 コストパフォーマンスはよいので、慣れた人が分かって使う機材という印象です。

Cケンコー「スカイメモRS 60th-Ltd.」
 往年のスカイメモの最終形態。望遠レンズの撮影も対応する精度を備えていて、SやTとは全くの別物。2012年にモデルチェンジされ、基本的な構造は前製品と同じですが、星景や太陽・月の追尾モードが追加されています。ウォームホイルはさほど大きくなく、極軸の軸受けを長くとる伝統的な設計。電源は外部ボックスで単二電池4本というのが昔ながら(変換プラグを使えば他電源も使えそう=未検証)。
 価格が高めですが、三脚や微動雲台もセットにした限定品の設定。

Dスリック「ASTRA ECH-630」
 2017年発売。後発組のポタ赤で、タイムラプス撮影機能を強化して、「電動雲台」を称しています。
 極軸のぞき穴を大小2つ備えた上に本体に方向合わせの溝まで刻んであり、極軸合わせの手間を軽減しようという意思を読み取れます。店頭で触った印象では、スペックが拮抗するスカイメモTよりも小さく(質量はほぼ同じ)、収納性もよさそう。ただ発売日から日が浅めなことと、タイムラプス撮影をしない人があえて選ぶ理由が薄いためか、実使用例をあまり見かけません。

Eアイベル「CD-1」シリーズ
 アイベルは老舗の天体望遠鏡店で、オリジナルの製品や改造品も多数扱ってきた実績があります。
 CD-1はビクセンのモータードライブを流用したショップオリジナルのポタ赤。赤道儀の極軸体を輪切りにして板に乗せたような見た目で、いかにも質実剛健。'00年代半ばからある製品で、検索するとレビューもそれなりの数がヒットします。
 重量1.35kgと大ぶりですが、搭載可能重量は5kg。元がGP/GPD赤道儀対応のモータードライブですから、パワーは余裕があるはずです。K型経緯台にペンタックス75EDHF+カメラを載せて何とかなっているという話も聞きました(何とかなるんだ……)。改造素体として使っている例もあります。
 もともと工作を得意とするショップなので、極軸合わせ用の微動雲台や外付け極軸望遠鏡など、ポイントを押さえたオプション品も充実しています。

Fビクセン「ポラリエ」
 業界国内最大手のビクセンが2011年に満を持して投入したポタ赤。
 「星空雲台」と銘打ち、曲線も多用したカメラのようなデザインで、天文ファン以外にも訴求してヒットしました。
 入門者向けに振った設計で、本体には小型コンパスと傾斜計を内蔵し、大まかな北の見当がつけられます。別売りのポーラメーター(方位磁針兼傾斜計兼水準器)を使えば、北極星が見えなくてもおよその極軸設定が可能。
 単三電池2本で駆動するのも手軽ですが、駆動時間が短いので、実際はUSB給電のモバイルバッテリーで運用することになるでしょう。
 天文機材の総合メーカーだけあってオプション品も多数用意されていますが、手軽さに振った設計の分だけ強化には手数がかかります。特に別売りの極軸望遠鏡を使う際は、設定後に取り外さないと撮影に移れません。広角〜標準レンズの撮影ならのぞき穴でも十分な精度ですが、しっかり極軸を合わせて安心して使いたい(そしてもっと焦点距離の長いレンズも使いたくなる)のが天文ファンの性というもの。
 とはいえ使い勝手がよく、安心して使える作りで、お勧めしやすい製品です。

Gビクセン「ポラリエU」
 ポラリエから9年の時を経て、2020年にビクセンが投入した改良機。
 本体質量約575gはナノ・トラッカーに次ぐ軽さながら、搭載可能重量は2.5kgに増加。
 追尾モードもタイムラプス撮影に対応し、他にもオートガイド対応、タイムラプス撮影用のインターバルタイマー付き(別途レリーズケーブル要)、さらにタイムラプス駆動とインターバルタイマーはスマホアプリからの設定も可能と、この間のポタ赤に盛り込まれた機能は全部盛りに仕上がっています。一方で追尾のON/OFFや追尾モードなどの切替は本体だけで可能。
 雲台台座のねじも大型化して止めやすくなり、オプションの極軸望遠鏡も取り付けたまま撮影に移れるなど、ポラリエで改善が求められた点は修正されています。
 小型軽量と使い勝手を両立した上に多彩な機能を搭載したポタ赤の最先端を行く機材ですが、お値段もクラス最強になりました。

HTOAST「TP-2」ユニテック「SWAT」シリーズ、SB工房「JILVA-170」
 ここから先は望遠レンズの撮影にも対応する高精度なもので、基本的にはハイアマチュアに向けた製品。
 比較的コンパクトなTP-2でも約1.3kgあり、JILVA-170の約3.9kgに至ってはAP赤道儀(3.6kg)並みの質量です。私の場合はメインの機材がAPですから、このクラスは今回の検討の対象外。
posted by ふくだ at 23:45| Comment(0) | 機材
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