2019年10月26日

三鷹・星と宇宙の日2019

 国立天文台三鷹キャンパスの特別公開「三鷹・星と宇宙の日2019」に参加してきました。
 2年連続2回目。今回は昨年回れなかった施設を中心に訪問しました。

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 開場前に着いてしまったので、正門前には長い列が出来ています。調布駅発のバスから混んでいたので予想はしていましたが、天文台の特別公開に足を運ぶ人がこんなに多いとは。
 正門内では渡部潤一副台長と山岡均広報室長、そしてのべやま先生がお出迎え。

 最初に向かったのは天文シミュレーションプロジェクトのコーナー。実際に動いているシミュレーション用のコンピュータを見学できるのですが、整理券が必要なので、まずは確保です。

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 集合時間まで少し間があったので、野辺山宇宙電波観測所のブースをまず訪問。のべやま先生と目があってしまったのが運の尽き。野辺山は夏の特別公開に参加したばかり。梅本先生は熱心にFUJINプロジェクトの説明をなさっていて、この日は遠目で会釈。お客さんを話に引き込むのが得意なので、公開日のときはたいていお話が盛り上がってらっしゃる姿ばかり拝見します。
 今回の新登場は、赤外撮像と電波撮像の銀河の写真のカルタ。波長が違うと見えるものが違うことを逆手に取ったゲームです。こういう挑戦は受けて立たねばなりません。わけのわからない難易度ですが、(たぶん)この日最初のクリア。なかなか楽しい企画でした。

 さて天文シミュレーションプロジェクト。天文学は観測と理論を両輪として発展してきましたが、理論をコンピュータを用いてガンガンに攻めていくのがシミュレーション天文学。銀河の衝突や惑星の形成など、何千何百万の星や粒子が互いに及ぼす影響を計算しないといけないので、強力なコンピュータなしには研究が進みません。

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 ラックの上にむき出しの基盤がひたすら並んでいるのが計算サーバ。CPUはインテルのCorei3とかi5とかi7とか、それこそ個人向けのパソコンと一緒。むき出しのファン、むき出しのLANケーブル……手作り感満載の、コストパフォーマンスに優れたシステム。これは小規模ながら長時間かかる計算が得意なのだとか。
 上に鎮座するだるまはプロジェクトリーダの小久保先生がポケットマネーで調達したもの。安定稼働祈願ということで、三鷹と水沢のスパコン「アテルイ2」に置かれているそうです。

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 奥にあるのは「GRAPE」。同じような計算をひたすら繰り返す重力多体問題に特化したコンピュータで、1990年代から世界の先端を走るプロジェクトです。私も名前は知っている程度でしたが、こうして目の当たりにすると改めてすごいものを見た感。

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 歴代のボードが並んでいますが、端にあるHARP-1が小久保先生が大学院生時代に手作業で組んだもの。裏は配線がびっしりです。当時(1995年頃)は世界最速の計算速度でしたが、今となってはスマホに入っているチップ以下とかなんとか。
 手作業の配線は後にLSIを焼くようになり、より高性能化していきますが、価格もそれなりとなり、現在はより安価に構成できるグラフィックボードのGPUを用いた開発に移行しているそうです。
 天文学は自分たちで望遠鏡を開発して新たな地平を切り開いてきた学問ですが、コンピュータの分野でも同じことをしている姿に感動します。

20191026mitaka063.jpg 同じ建物で行われている「HSC銀河さがしゲーム」。すばる望遠鏡の主焦点に取り付けられる「Hyper Suprime-Cam」で撮影した広視野画像から、問題用紙の銀河を探し出します。三段階のレベルが用意されていますが、正直、上級編はなかなかの難易度です。そんな挑戦は受けて立たねばならないので、気合でしらみつぶしに探し当てて全部クリアしてきました。

 銀河探しゲームの出口で切り絵の小栗さんに捕捉されます。小栗さんは天文台図書室の司書が本職で、この日は図書館も公開中。作品はもちろん、すばる望遠鏡に関する図書や今春逝去された海部宣男先生にまつわる図書を案内いただきました。

20191026mitaka064.jpg お昼は天文台の食堂にて。国立天文台は前身が東京大学の東京天文台だった経緯からか、東大生協が食堂や売店を運営しています。ここは天文台プレートを一つ。

20191026mitaka065.jpg 午後はまず水沢VLBI研究所のコーナー。
 ブラックホールの撮像で2019年の天文界隈の話題をかっさらったEHTプロジェクトの本間希樹先生が所属しているところで、ブースを見学していたらテレビでよく見るご本人が隣りに立っていらしてびっくり。さすがに先生のお顔を知っている方が多いようで、常に誰かの質問にお答えしてらっしゃいました。
 私はといえばVERAのコーナーで、観測局同士の距離をどうやってmm単位で測定するのかという話で盛り上がってました。地球の潮汐を考慮するのは想定していましたが、雲の厚さまで測って補正するとか(水蒸気の量も光の速度に影響する)、熱によるアンテナ架台の収縮は地上とアンテナ受信部にGPS受信機をつけて補正するとか、そこまでやるのかというお話を伺ってました。

 次に東京大学天文学教育研究センターへ移動して、大学院生ミニ講演を一つ拝聴。電波天文学の入門編的なお話を30分の枠で分かりやすくお話しされてました。

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 同じ建物内の木曽シュミットのブースでは2019年に本格稼働が始まった観測装置トモエゴゼンのお話を伺います。CMOSセンサーを84枚並べて、シュミットカメラの9度径の広視野を活かして、全天スキャンを2時間で済ませ、一晩に3回スキャンするという恐るべき掃天計画。お話してくださった方も「こういうものを作ろうとして作ってきたが、実際に動かしてみるとすごいものができてしまった」とのこと。木曽の新兵器は化け物か!
 一つの視野を0.5秒×12コマ撮影するので、いわば動画のスキャン状態。一晩で30TBという恐ろしい量のデータが貯まるのですが、木曽観測所のネット環境が整っていない現在は解析が終わったら破棄しているそうです。将来はこれもデータセンターに貯めて活かしていきたいそうです。

 そのあと休憩室で小栗順子さんの切り絵作品を観覧。毎年、特別公開のテーマに合わせた作品をピックアップして展示されているのですが、今回はすばる望遠鏡の建設場面をモチーフにした作品と、プレアデス姉妹の神話を描いた作品が新作。
 A0版の大きなパネルに引き伸ばされていますが、元はA3サイズとのこと。逆算すると作業の細かさに軽くめまいがします。ただ切り絵は作業の細かさもすごいのですが、本当にすごいのは画面の構成。スケールモデル屋の私にはないところで、毎度のことながら感嘆します。ちなみに華やかな色使いでこれでもかというほど要素を散りばめたすばるの作品が好きです。

20191026mitaka075.jpg ALMA棟とすばる棟。すばる棟ではサイエンスカフェに参加。テーブル1つに研究者1人に客2人。コーヒーを飲みながらのトークでなるほどカフェテラスな雰囲気。
 お題はいくつか用意されていて、天の川銀河の行く末のお話を伺いました。いずれアンドロメダ銀河と衝突するのは知っていたのですが、シミュレーションでは思いの外に激しい衝突になるようでびっくりです。もっとも50億年以上先の話なので、おそらく太陽の寿命も尽きている頃のこと。心配する話ではありませんが、科学的興味はそそられちゃいます。

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 最後の訪問地となったのは開発棟。
 今年は3Dプリンタが公開されていました。樹脂と金属と2種類の実演が行われていましたが、いずれも見るのは初めて。金属の3Dプリンタは30ミクロンの厚さにアルミ粉末を敷き詰めてレーザーで一層ずつ溶かし固めていくのですが、ダイキャストと同じくらいの強度が出るそうです。アルマ望遠鏡の受信機の部品づくりに実際に使われているとのこと。削り出しではとても作れないような複雑な形状のものを作り出すことも可能で、こうした工作技術があってこその最先端の天文学なのだと。
 そのアルマ望遠鏡の受信機の開発も行われています。すでに現在のアルマ望遠鏡のグレードアップ計画「アルマ2」の検討も始まっていて、「アンテナ増やすんですか?」と尋ねたら「それがお金がかかるので」と受信機のバージョンアップなどで性能を上げていくそうです。アマチュアの天体写真で望遠鏡は同じでもカメラを変えて画質を上げるようなものですね。
 こうした開発自体が研究として論文になるそうで、天文学は理学と工学の総合力の世界です。

 夕方の飛行機で帰神するので、天文台の見学は17時で切り上げ、帰途に付きました。
 途中から写真が極端に少なくなっているのは、資料を頂きすぎて手が塞がってカメラを構えられなかったためです。とにかく今年も一日中楽しい特別公開でした。

 togetterまとめ:https://togetter.com/li/1422099
posted by ふくだ at 23:45| Comment(0) | 一般公開
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