2019年03月10日

プラネタリウム「星よりも、遠くへ」(伊丹市立こども文化科学館

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 仙台市天文台制作のプラネタリウム『星よりも、遠くへ』を伊丹市立こども文化科学館で見てきました。3月11日からの「それから」を生きる人々と星空の物語。丁寧な取材を幾度も重ねたであろう被災者の証言。満天の星に重ねられる人々の思い。よい作品でした。

 前作の『星空とともに』が最初に公開されたのは2012年3月のこと。今から考えると震災発生から一年というタイミングで、よく番組を作ったなと思います。
 2011年3月11日の夜、東北全域の停電は復旧しないまま、被災地には光害の全くない夜空が広がりました。寒さに震えつつ救助を待ちながら、避難先で先の不安に襲われながら、連絡の取れないままの家族を心配しながら……様々な人々が、ふと見上げた星空の美しさに、それぞれの思いを重ねます。

 仙台市天文台の方々は、被災した状況下で、自分たちの仕事の意味を考えたのだと思います。そして人が星空を見上げるという行為の意味に、本気で取り組んだ。

 第一作「星空とともに」は、新聞の投稿欄やラジオに寄せられた被災者のメッセージから、星空にまつわるエピソードを集めたもの。 当初は仙台市天文台だけでの上映だったのですが、2013年に日本プラネタリウム協議会の全国大会で試写が行われました。これを見た関係者から「うちの館でも上映したい」という声が上がり、2014年からは3月に合わせて全国各地のプラネタリウムで上映されています。これまで累計で40館くらい。

 プラネタリウムでよその館の番組を上映するのは以外に大変で、投影機のメーカーも違えば補助投影機の機材も様々。ほとんどの館ではプログラムで制御できる投影機を使っていますが、ものによっては20年以上前の投影機もありますし、明石のようにフルマニュアルの館もあったりします。
 ただ最近はドーム全体に映像を映すデジタルプロジェクターを併設するのが一般的になり、そちらを利用してよその館の番組を上映出来るようになっています。

 私が初めて「星空とともに」を見たのは2016年。兵庫県内では伊丹市立こども文化科学館と姫路科学館で上映が行われていて、家から行きやすい伊丹で見ました。

 「星空とともに」は3月11日の星空に重ねされた人々の想いを朗読する、シンプルながら芯の通った番組。震災から1年という時期の制作・公開なので、証言も3月11日当日やそこから間もない時期のものが多く、生々しいというか、涙なしには見ていられません。それでも前向きに終わるような構成になっていて、見てよかったと思いました。

 2018年に「星空とともに」の続編作成の発表と、制作資金を求めるクラウドファンディングの呼びかけが行われました。一も二もなく参加しました。

 今回も被災者の手記をベースに展開するのですが、震災から7年目に制作されたものですから、出てくる人々はみな、震災後の時間を生きてきた人たちです。

 震災は「3月11日にあった」のではなく、「3月11日からずっと続いている」。
 完成した第二作「星よりも、遠くへ」に流れているのはこの感覚。

 失ったもの、二度と戻らないものがあっても、生きるしかない。7年経ったら普段の暮らしの中で震災を意識することは少なくても、ふとした時に震災の傷跡がむき出しになる。
 神戸に住んでいるのでこの感覚が分かるけど、そうでなければどうだっただろう。やっぱり「3月11日にあったこと」と思っていただろうか。

 第一作は震災から一年という時間の中で、あえて前を向く必要があった。第二作は前を向くのではなく、あえて今に向き合った。そんな印象を受けました。

 クラウドファンディングの出資者として、意義ある企画に関われてよかったと思います。

 2019年も全国30数箇所のプラネタリウムで上映されるのだけど、なにせプラネタリウムは数が少ないし足を運ぶ人も限られています。今回はDVDも作成したので、プラネタリウム以外の平面スクリーンでも上映できるとのこと。
 前作と合わせて、多くの人の目に触れる機会が増えるといいなと思います。
posted by ふくだ at 23:45| Comment(2) | プラネ/天文台/科学館
この記事へのコメント
私も『星よりも、遠くへ』のクラウドファンディングに参加しました。

いただいたDVDを観て号泣しました。被災されているにもかかわらず、
満天の星に思いを馳せる。切ないなかにも前向きに物事を捉えるなんて、
自分にはできるのだろうかと考えてしまいました。
DVDはドーム映像をそのまま収録している部分が多かったので、
歪んだ映像になりちょっと残念に感じました。

まだ、プラネタリウムでは観ていないので、来年こそはドームで
体感したいと思っています。
Posted by ガター at 2019年05月15日 23:59
ガターさん、いらっしゃいませ。

東日本大震災、「まだ8年」なのですよね。

ドーム映像のDVD化は難しいです。手間と時間をかけることができれば、画面の一部を切り抜きながら平面スクリーン用に再描画するのがよいのでしょうけれども。

プラネタリウムのドームスクリーンで見ると、星空に包まれたような感覚があります。
こういう趣味なので、星空を見ているだけで色んな思いが頭をよぎって、胸が一杯になることもあります。

ぜひぜひドームスクリーンでご覧になられてください。
Posted by ふくだ at 2019年05月16日 23:44
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