2005年10月25日

「神戸絵図」石原正

 鳥瞰図絵師・石原正さんの1981年の作品。石原さんは日本でも数少ない鳥瞰図絵師で、特に都市の鳥瞰図では第一人者というより唯一、孤高の存在でした。
 「神戸絵図」は1981年のポートピア博にあわせて描かれたもので、同時に同博覧会の公式マップも手がけられています(市立中央図書館に入っています)。

 私は神戸に住んで間もない頃に本屋で見つけて手に入れたのですが、「なんだ? 知らないものがいっぱい載ってるぞ」と仰天。そりゃそうです。製作年代を確認してから買えってなものです。今では三宮の界隈もずいぶん詳しくなったので、たまに広げてみては、「ここは震災前、こんなのが建っていたのか」と想像を膨らませて楽しんでいます。

 「神戸絵図」、何年か前にセンター街のジュンク堂で、「在庫見つけました」といった貼り紙と一緒に店頭に並んでいたのですが、その時にもう一部、保存用に買っておくべきでした。 
 実は作者の石原正さん、2005年3月に亡くなられていたのです。
 今日そのことを知り、驚き、呆然としました。

 (以下は、DAIさんの掲示板に書いた文章に加筆したものです)。
 私が石原さんを知ったのは、高校生の時でした。修学旅行用に学校から配られた京都のガイドブックの表紙に「京都絵図」が使われていたのです。すごい地図を描く人がいるものだ、と驚きました。

 学生の時に飛鳥を旅行したときに、石舞台古墳のそばの売店で「飛鳥絵図」を発見、即、購入。仕事で神戸に移ってからは、ジュンク堂などの大きな本屋で石原さんの絵図を見つけては買いあさっていました(なにせ田舎育ちなので、ロードマップと住宅地図以外の地図を売っている本屋が身近になかったのです)。

 そのうち石原さんのアトリエ・バーズアイのウェブサイトがあることを知り、インターネットで地図を注文していたら、やがて石原さんより展覧会や新作発表の案内ハガキを頂くようになりました。直筆で書かれた宛名を見て、ちょっとうれしかったりしたものです。

 四つ橋のINAXで開かれた鳥瞰図師の展覧会には、さほど遠くない地ということもあって、足を運びました。初めて見る原図の緻密さと迫力に、うならされました。

 石原さんの著書「鵜の目、俺(タカ)の目」も手元にあります。注文したときにはすでに手に入りにくい状態になっていて、阪急の「おとりおき」で届いた本は、どこかの流通在庫から掘り出したのか、表紙のカバーがひん曲がっていました。真っ先に読んだのは巻末の「誰でも出来るカンタンなアイソメ式鳥瞰図の描き方」でした。読んでみてびっくり。方法そのものは確かに難しくないのかもしれませんが、恐るべきはその手間暇のかけようです。「全然カンタンじゃないよ〜」と一人つっこみを入れてました。

 学生時代に地理を専攻していたこともあり、地図の類は大好きです。研究室も地図描きのバイトが舞い込んでくるようなところで、ロットリングの類は一通り揃えていました。学園祭の大学案内図とか、大学生協が出してる新入生向けパンフの案内地図とか、下手くそながらに描いていたこともあります(今ではとても他人様に見せられない出来です)。

 何年か前、仕事に行き詰まったとき、いっそ鳥瞰図絵師になろうかと、石原さんに弟子入りしにいこうかと思ったことがあります。ただ、あの石原さんでも「食えない」とさんざん著書の中で漏らされていたこともあり、当時の仕事も辞めずに続けることになり、その時は思いとどまってしまいました。
 何事を為すのも、根本は気合いと一途な想いです。当時の私にはその部分が欠けていたのでしょう。今ならどうだろうかとふと考えたりもしますが、ついに叶わぬことになってしまいました。

 石原さんに、メールだったか、ハガキだったか、震災から復興しつつある神戸を、ぜひ再び絵図にしてくださいとリクエストしたことがありました。こちらも同じく、叶わぬ願いになりました。

 今さらながらではありますが、石原正さんのご冥福を心よりお祈りいたします。
posted by ふくだ at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 神戸のできごと
この記事へのコメント

この記事へのトラックバック